入れ歯が合わない。訪問歯科なら、家で調整も作り直しもできます
「入れ歯が痛いみたいで、外したままご飯を食べています。このままでいいのか、分かりません」
「歯医者に連れて行きたいけれど、車に乗せるまでが一苦労。それを思うと、つい先延ばしにしています」
口の中のことは、後回しになりやすいところです。急に困るわけではないので、気になったまま日が過ぎていきます。
でも、入れ歯は調整も作り直しもできます。しかも、家に来てもらってできます。今日は、そこまでの道すじを整理していきます。
口の中が整っていないと、体に響きます
口の中のことは、命に関わるようには見えません。だから、つい後回しになります。
けれど、噛めなくなると、食べられるものが減ります。やわらかいものばかりになって、栄養がかたよります。食べる量そのものが減って、体重が落ちていきます。
飲み込む力も、噛むことと一緒に落ちていきます。口の中に汚れがたまったままだと、それが肺に入って肺炎を起こすこともあります。
つまり、口の中は「食べる」の入口であり、体力の土台でもあります。入れ歯が合っていないことは、歯だけの話ではありません。
口の中のお手入れそのものについては、こちらにまとめてあります。あわせて読んでみてください。
口腔ケアって何をすればいい?義歯が合わない・嚥下の不安を整理
入れ歯が合わなくなるのは、めずらしいことではありません
作ったときはぴったりだったのに、しばらくすると合わなくなる。これは、よくあることです。
いちばん多いのは、痩せたときです。体重が落ちると、歯ぐきもやせます。入れ歯は歯ぐきの形に合わせて作られているので、その土台が変われば、当然ゆるくなったり、当たって痛くなったりします。
病気や入院のあと、食べる量が減ったあと。そういう時期のあとに「合わない」と言い出す方は、本当に多いです。
ほかにも、残っている歯が抜けた、歯ぐきの形が変わった、といったことでも合わなくなります。
本人が悪いわけでも、家族の手入れが足りなかったわけでもありません。体が変われば、入れ歯も合わなくなる。それだけのことです。
合わないまま使っていると
合わない入れ歯を、そのまま使い続けると、いくつか困ったことが起きます。
当たって痛いので、外してしまう。外したまま食事をすると、噛めるものが限られます。ごはんが進まなくなり、体重が落ちます。
痛みをかばって、片側だけで噛む。あごや肩に負担がかかります。
歯ぐきに傷ができる。ずっと当たっていると、そこが赤くなったり、傷になったりします。
それから、噛み合わせは体のバランスにも関わります。65歳以上の方を3年間追った調査では、歯が19本以下で入れ歯を使っていない方は、歯が20本以上ある方にくらべて、転ぶ危険が2.5倍高いという結果が出ています。入れ歯を外したままにしておくことは、転倒にもつながります。
そして、外している時間が長くなるほど、口の形そのものが変わっていきます。そうなると、あとから調整するのがむずかしくなります。
「痛いと言わなくなったから、慣れたのだろう」と思っていたら、実は外したままだった。そういうこともあります。食卓で、入れ歯が入っているかどうかを一度見てみてください。
調整も、作り直しもできます
合わなくなった入れ歯は、直せます。方法は2つあります。
ひとつは調整です。当たっているところを削ったり、ゆるいところを足したりして、いまの歯ぐきに合わせます。多くの場合、これで痛みは取れます。
もうひとつが作り直しです。歯ぐきの形が大きく変わってしまった場合は、調整では追いつきません。
作り直しは、保険でできます。ただし決まりがあって、前回作ってから6か月あいていることが原則です(厚生労働省の通知で決められています)。
例外があって、残っていた歯が急に抜けて入れ歯が合わなくなったときなどは、6か月経っていなくても作り直せることがあります。
6か月と聞くと長く感じるかもしれませんが、入れ歯を作ってから何年も経っているという方がほとんどです。「保険では作り直せない」と思い込んで、痛いまま使い続けている必要はありません。
歯医者に行けなくても、家に来てもらえます
ここまで読んで、「直せるのは分かったけれど、連れて行けない」と思われたかもしれません。
訪問歯科という仕組みがあります。歯科医師や歯科衛生士が家に来て、診てくれます。
道具は持ってきてくれます。持ち運びのできる機械があるので、削る、型を取る、といったことも家でできます。だから、入れ歯の調整も、作り直しも、家でできます。
入れ歯だけではありません。虫歯の治療、歯を抜くこと、歯石を取ること、口の中のお手入れの指導。歯科医院でやることの多くは、家でも受けられます。
訪問歯科の頼み方
頼み方は、3つあります。
1つめは、担当のケアマネジャーに言うことです。「入れ歯が合っていないみたいなんです」と伝えてください。わたしの場合は、その相談を受けたら、頼んだことのある歯科医院に連絡しています。
2つめは、いま通っている歯科医院に聞くこと。「訪問はやっていますか」と聞いてみてください。長く診てもらっている先生なら、これまでの経過も分かっています。
3つめは、お住まいの地域の歯科医師会に問い合わせること。訪問をしている歯科医院を紹介してもらえます。
どれでもかまいません。動きやすいところから、声をかけてみてください。
費用の目安
訪問歯科は、医療保険と介護保険の両方を使います。
歯の治療や、入れ歯の調整・作り直しは、医療保険です。窓口で払うのは1割から3割で、ふだん歯科医院にかかるときと同じ考え方です。
口の中のお手入れの仕方を教えてもらう部分は、介護保険から出ます。こちらも1割から3割です。
家に来てもらう費用も保険の対象になります。ただし、交通費などを別に請求する歯科医院もあります。
いくらかかるかは、受ける中身によって変わります。心配なときは、最初の連絡のときに「だいたいどのくらいかかりますか」と聞いておくと安心です。
夜のあいだ、入れ歯をどうするか
最後に、毎日のことを少しだけ。
夜は外して休みます。外したら、入れ歯用のブラシで洗って、洗浄剤につけておきます。
困るのが、なくなることです。ティッシュにくるんだまま捨ててしまった。ベッドの脇に落ちていた。わたしも、そういう場面を何度も見てきました。
外す場所と、置く場所を決めておくと、なくなりにくくなります。
それから、入れ歯を外したあとの口の中も、そのままにしないほうがいいです。うがいがうまくできない方もいます。その場合は、スポンジブラシやガーゼで拭うやり方もあります。
まとめ
入れ歯が合わないことは、放っておかれやすい困りごとです。命に関わるようには見えないからです。
でも、噛めるかどうかは、食べる量にも、体力にも、そのまま返ってきます。「そういえば最近、外したままだな」と思い当たったら、それが動くときです。
ここまでの話を、1枚にまとめました。印刷して手元に置いたり、ご家族で見ながら話すときに使ってください。
最終的なご判断は、担当のケアマネジャーや専門家にご相談ください。
よくある質問
本人が「痛くない」と言います。それでも診てもらったほうがいいですか?
食卓を見てみてください。入れ歯を外したまま食べているなら、痛みを言葉にしていないだけ、ということがあります。
やわらかいものばかり選ぶようになった、食べる時間が長くなった、残すようになった。こうした変化も、口の中のサインです。本人が言わないことのほうが多いので、まわりが気づくしかありません。
何回くらい来てもらうことになりますか?
中身によります。調整だけなら1回で終わることもありますし、作り直しなら、型を取って、合わせて、と何回かに分かれます。
ただ、治ったら終わり、と考えないほうがいいです。口の中の状態は、食べる力にも体力にもつながります。できれば、そのあとも定期的に診てもらって、口の中のお手入れを続けてください。合わなくなる前に、気づいてもらえます。
施設に入っていても、来てもらえますか?
来てもらえる場合が多いです。ただし、施設によっては決まった歯科医院が入っていることもあります。
まずは施設の相談員か、担当のケアマネジャーに聞いてみてください。
骨粗しょう症の薬を飲んでいます。何か伝えることはありますか?
お薬手帳を見せて、飲んでいるものを全部伝えてください。
骨粗しょう症のお薬は、顎の骨に影響することがあります。歯を抜くようなときに、歯科の先生が知っておく必要があります。
なお、いまは「抜歯の前に薬を止める」ことはしない方向になっています。止めても効果がはっきりせず、待っているあいだに骨折の危険が上がるためです。やめるかどうかは、歯科の先生と、お薬を出している先生が相談して決めます。自分の判断でやめないでください。
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ありがとうございます!
現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。
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