一人ケアマネの独立、収入はどう決まる? 件数の決め方と、1人の限界
ケアマネの仕事を長年やっていると、独立ってどうなんだろうと考えることがあります。
「自分にもできるのかな?」「なんだかハードル高そう」 ——実は意外とそうでもないんです。
この記事では、わたしの実例を紹介しながら、ケアマネの独立についてのお話をしたいと思います。
この話が、皆さんが夢への一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。
独立すると、どうなるのか
わたしが独立を意識したのは、ケアマネとして5年経験し、主任ケアマネの資格を取得したときでした。
そのとき、まずわたしがしたのは、すでに介護業界で独立している方たちに話を聞きに行くことでした。
そこで皆さんが共通して言っていたのが、
「すぐに始めなよ」
という言葉でした。
正直、そのときのわたしには、あまりピンときませんでした。
でも、実際に独立した今なら、その意味がよくわかります。
もし今、わたしが「独立しようか迷っている」という相談を受けたら、きっと同じことを言うと思います。
「今すぐやったほうがいいよ」と。
それくらい、わたしはケアマネとして独立することには、たくさんのメリットがあると感じています。
では、具体的に何がいいのか。
まずひとつは、運営の仕方を自分で決められることです。 どのソフトを使うのか、記録をどう残すのか、何時から何時まで働くのか。雇われていたときは、こうしたことはすでに決められていて、自分で変えられるものではありませんでした。
今、うちでは在宅勤務も取り入れていますが、それも自分たちで考えて、自分たちで決めたことです。
そしてもうひとつが、公正中立を守りやすいことです。 併設のサービスを持っている法人の居宅で働いていると、どうしてもその法人のサービスを使うように求められる場面があります。もちろん、はっきり「ここを使って」と言われるわけではありません。でも、なんとなくそういう空気になることはあります。
独立すると、そこがありません。
「この人には何が必要なんだろう」
それだけを考えて、必要なサービスを組むことができます。
これは単に働きやすいという話ではなくて、ケアマネジメントの中身そのものに関わる話だと、わたしは思っています。
そして、もうひとつ。 収入も、自分で決めるものになります。ここについては、あとで詳しくお話しします。
思っているより、身軽に始められる
独立というと、何年もかけて準備するもののように聞こえます。
でも、居宅介護支援はかなり身軽です。 ほかのサービスのように、人や設備をたくさんそろえる必要はありません。事務所とパソコンと、ケアマネが1人。それだけでも始められます。
ただ、「始めやすい」ことと、「すぐに生活できるだけの収入になる」ことは別の話です。 依頼がどれくらい来るのか、いつ生活費をまかなえるようになるのかは、地域やそれまでのつながりによって変わります。
なので、独立そのものを必要以上に怖がる必要はない。でも、独立後の収入については、きちんと考えておく必要があります。
独立するのに必要なもの
ここからは、実際に独立するために何が必要なのか、具体的な話をしていきます。
まずは法人を作る
居宅介護支援事業所を始めるうえで、大きな前提があります。
居宅介護支援事業所の指定を受けられるのは法人だけです。個人事業主として始めることはできないので、まず法人を作る必要があります。
その際、忘れてはいけないのが定款です。定款には「介護保険事業を行う」ことを入れておきます。ここが抜けていると指定申請のときに止まってしまうので、法人を作る段階で確認しておいてください。
管理者には主任ケアマネが必要
もうひとつ必要なのが、主任介護支援専門員です。
居宅介護支援事業所の管理者は、原則として主任介護支援専門員である必要があります。主任を確保することが著しく困難な場合などの例外はありますが、基本はこれです。
まだ主任ケアマネを持っていない方は、まずは取得を目指すところからになります。
指定申請は市町村へ
法人と主任ケアマネの準備ができたら、次は指定申請です。
居宅介護支援の指定権限は市町村にあります。都道府県ではありません。
申請書類はかなり多いです。ただ、実際にやってみると、書類の量に圧倒されるだけで、一つひとつが難しいわけではありません。運営規程などには雛形もありますし、いまならAIに手伝ってもらうこともできます。
わたしの場合、独立を決めてから指定が下りるまで1か月半でした。
ここは市町村によって違うので、独立を考えたら早めに窓口へ相談しておくといいと思います。
お金は、いくらかかるのか
では、実際に独立するのにいくらかかったのか。 わたしが実際にかかったものを並べてみます。
- 会社の登記……司法書士に依頼して、10万円かかりませんでした。電子申請で合同会社を設立しました
- パソコン……中古で1万円程度
- 事務所の家賃……月4万円程度
- 介護ソフト……月5,500円
- 税理士・社会保険労務士……頼んでいません。決算も申告も、社会保険の手続きも自分でやっています
会社は合同会社にしました。理由は単純で、株式会社より設立費用が安かったからです。ここは迷いませんでした。
事務所は最初、月4万円程度のところを借りていましたが、その後、自宅に移しました。家賃をかける必要がなくなるからです。ただし、事務所の場所を変える場合は変更届が必要です。勝手に移していいわけではないので、そこは注意してください。
また、在宅勤務を組み合わせれば、事務所にかかるお金はさらに抑えられます。このあたりはケアマネの在宅勤務、実際にやってみた。資格があるのに働けない人が戻るためにで詳しく書いています。
そして、これとは別に、当面の運転資金として資本金を100万円入れました。
役員報酬は、1年変えられない
ここは、独立する前に知っておいてほしいところです。
法人を作ると、自分の給料は役員報酬になります。 この役員報酬は、会社員の給料のように「今月は少なくしよう」「売上が増えたから来月から増やそう」と自由に変えることができません。原則として事業年度の開始から3か月以内に金額を決め、その後は毎月同じ額を支払っていくことになります。
そして、もうひとつ知っておいてほしいのが、介護報酬が入ってくるのは約2か月後だということです。
利用者さんを担当して仕事を始めても、その売上がすぐ会社に入ってくるわけではありません。最初の入金までには時間がかかります。その間も、役員報酬や家賃、介護ソフトなどの支払いは続きます。
つまり、まだ介護報酬が入ってこない時期から、最初に決めた役員報酬を払い続けることになります。
わたしは最初、それなりの金額に設定してしまったので、正直かなりきつかったです。会社に入れた資本金も、ほぼそのまま自分への役員報酬として消えていきました。
もし会社のお金が足りなくなったら、役員借入金という形で、自分のお金を会社に貸すことはできます。
それでも、最初の役員報酬をいくらにするのかは慎重に決めたほうがいいと思います。 特に、介護報酬が入ってくるまでの期間も含めて、手元にいくら残しておく必要があるのか。ここまで考えて決めることが大切です。
役員報酬については、独立するときに一度税理士に相談してもいいところだと思います。
何件持つかは、自分で決められる
ここは、いちばん知りたいところだと思います。
居宅介護支援費は、1件につき1か月あたり要介護1・2で1,086単位、要介護3・4・5で1,411単位です(令和8年6月時点)。1単位は10円台ですので、1件でおよそ1万円から1万4千円ほどが入ります。
ざっくり言えば、10件持てば月10万円ほど、20件なら20万円ほど、40件なら40万円ほど。担当している方の要介護度によって上下しますが、おおよその目安はこれでつきます。
ここが、雇われて働くのと大きく違うところだと思っています。
いくら欲しいのかを決めて、そこから何件持つのかを自分で決められます。 たくさん稼ぎたいなら件数を増やせばいいですし、家のことや自分の時間を大切にしたいなら10件でも構いません。何件が正解というものはありません。
雇われていたときは、担当する件数は事業所が決めるものでした。そこを自分で決められるのが独立です。
ただし、件数を増やしていくと、ひとつ線があります。
ケアマネ1人あたりの担当が45件以上になると、45件目から単価が下がります。60件目からは、さらに下がります。ケアプランデータ連携システムと事務職員を入れている事業所では、この線が50件になります。
それでも45件以上持っている方はいます。1人でやっている限り、収入を増やそうと思えば、基本的には担当件数を増やすことになります。
わたしも、多いときは60件持っていました。 そのときは、1日の着信が50件を超える日もありました。事業所から、ご家族から、市役所から、電話が途切れずにかかってきます。
正直なところ、あの件数できちんとしたケアマネジメントができていたとは言えません。
もうひとつ、収入を考えるうえで知っておいてほしいのが、1人のうちは特定事業所加算が取れないということです。 もっとも要件の緩い区分でも、自分のほかに2人は必要です。
うちはケアマネ1人あたり30件で採算ラインを超えていますが、それは特定事業所加算があるから言える数字です。
定年のない働き方にもなる
雇われて働いていると、いつかは定年が来ます。
でも、独立していれば定年はありません。何歳まで続けるのか、何件担当するのかも、自分で決められます。
たとえば、年金を受け取りながら、担当を10件だけ持つ。大きな収入にはなりませんが、生活の柱がほかにあるなら、そういう働き方もできます。 10件でも、社会とのつながりは続きますし、目の前の人の役に立つ仕事を続けることもできます。
働く量を自分で決められるということは、何歳まで、どんな形で働くのかも自分で決められるということです。
独立は、いま収入を増やすためだけのものではありません。 その先の人生で、自分がどう働いていくのか。その選択肢を増やすことにもなると思っています。
どの地域で始めるか
集客のやり方そのものは、特別なことではありません。地域包括支援センターや病院に挨拶に行く。それが基本です。
それよりも大きいのが、どの地域で始めるかだと思っています。
わたしは以前、それまでまったく縁のなかった場所で管理者をしていたことがあります。 その自治体ではケアマネが足りなくて、知り合いが1人もいない土地なのに、紹介が次々に来ました。 逆に、居宅介護支援事業所が足りている地域では、つながりがあったとしても、簡単に依頼が来るとは限りません。
いまわたしが独立しているのは地元です。同じ市でずっと働いてきて、地域包括支援センターにも在籍していました。その時のつながりは、やはり大きかったです。
では、みなさんが独立しようとしている地域はどうなのか。 これは、ある程度数字から見ることができます。
- 介護サービス情報公表システムで、市区町村を指定して居宅介護支援事業所を調べると、事業所やケアマネの人数、ケアマネ1人あたりの利用者数などを確認できます。
- 市区町村のホームページや介護保険事業計画などを見れば、その地域にどのくらい要介護・要支援の認定者がいるのかも調べられます。厚生労働省の介護保険事業状況報告にも保険者別の認定者数があります。
こうした数字を見ていくと、その地域にどのくらいケアマネがいて、どのくらい介護を必要としている人がいるのかが見えてきます。
独立する場所を決めるときは、自分のつながりだけでなく、その地域にどのくらい居宅介護支援の需要があるのかを調べておく。 これはかなり大事だと思います。
独立してから、収入が安定するまで
わたしの場合を、時間の順に並べてみます。
- 12月……定款を作り、年内に指定申請を出しました。このときは、まだ前の職場で働いています
- 1月……前の職場を退職
- 2月半ば……指定が下りました
- 3月……事業所を開始
- 5月……初めての入金。ただし3月分の請求なので、件数も少なく、入ってくる金額もわずかです
- 8月ごろ……自分の役員報酬を賄えるようになりました
ここでまず知っておいてほしいのは、独立の準備は、勤めながらでもできるということです。
わたしは定款を作るのも、指定申請を出すのも、前の職場で働いているうちに済ませました。仕事を辞めてから、すべての準備を始める必要はありません。
ただし、事業所を始めてから収入が安定するまでには時間がかかります。
介護報酬が実際に入ってくるのは、事業所を始めた月の約2か月後です。しかも最初に入ってくるのは、まだ利用者さんが少なかった最初の月の分です。当然、金額もそれほど多くありません。
ここで間違えないでほしいのは、「じゃあ2か月分の貯金があればいい」という話ではないということです。
貯金を取り崩すことになるのは、介護報酬が入ってくるまでではなく、担当件数が増えて、事業所の収入だけで自分の役員報酬や経費を賄えるようになるまでです。
わたしの場合は、それが8月ごろでした。
ただ、これが3か月なのか、半年なのか、それ以上なのかは誰にも分かりません。件数の増え方は地域によっても違いますし、どのくらい紹介が来るかによっても変わります。わたしの「8月」という数字を、そのまま目安にはできません。
だから、ここは逆から考えたほうがいいと思います。
もし思ったように利用者さんが増えなかったとして、自分は何か月持ちこたえられるのか。
独立する前に、そこを計算しておく。
ただ、必ずしもその期間の生活費をすべて貯金で用意しなければいけないわけではありません。
わたしの知り合いには、事業所の収入が安定するまでアルバイトをしながら続けていた人もいます。
最初から独立一本にする必要はありません。収入が安定するまで別の仕事を組み合わせる。そういう始め方もできます。
大切なのは、軌道に乗るまでの期間をどう乗り切るかを、独立する前に考えておくことだと思います。
一人でやるということ
独立について調べていると、一人でやるのは、人を増やすまでの通り道のように書かれていることがあります。
でも、わたしはそうとは限らないと思っています。
一人は、気楽です。
人を採用する必要もなければ、給料を払う心配もありません。勤務を組む必要も、誰かを育てる責任もない。人が増えれば、それだけ管理する仕事も増えていきます。
一人なら、何件担当するのか、何時から何時まで働くのかも、全部自分で決められます。
一人のまま続けるというのも、ひとつの働き方です。
ただ、その自由と引き換えに、自分で背負わなければならないものもあります。
何かあったときは、自分で対処しなければなりません。
雇われているあいだは、会社が守ってくれています。苦情が来ても、事故が起きても、間に入ってくれる人がいて、組織として対応してくれます。大きな法人ほど、その力は強いと思います。
独立すると、それがなくなります。
安定や安心は、雇われて働くことの大きなメリットです。一方で、独立すれば自分で決められる自由があります。
どちらがいいということではなく、自分はどちらを取りたいのかという話だと思っています。
そしてもうひとつ、一人で始めるなら考えておいてほしいことがあります。
自分が動けなくなったとき、担当している利用者さんを誰が見るのか。
入院することもありますし、最悪の場合、亡くなることもあります。そのときに、自分が担当している方たちをどうするのかは、あらかじめ考えておかなければなりません。
わたしが一人でやっていたころは、ほかの独立系の事業所と、委員会を合同で開くなどのつながりを持っていました。
いざというときに頼れる相手を、元気なうちに作っておく。
一人でやるのであれば、ここは考えておいたほうがいいと思います。
人を雇うとどう変わるのかについては、ケアマネの独立、一人でやるか人を雇うか。特定事業所加算を取って変わったことに書いていますので、あわせて読んでみてください。
まとめ
そのとおりです。大きな設備も、何年もの準備もいりません。
ただ、独立してすぐに収入が安定するわけではありません。最初の役員報酬をいくらにするのか、軌道に乗るまでの期間をどう乗り越えるのか。そこは、始める前に考えておいたほうがいいと思います。
独立は、思っているより身軽に始められます。
何件持つのか。いつ働くのか。一人で続けるのか、人を増やしていくのか。その働き方を自分で決められるのが、独立のいちばん大きな魅力だと思っています。
このページを開いた時点で、独立について少しは考えている方だと思います。
いきなり会社を辞める必要はありません。まずは、自分の地域にどのくらい居宅介護支援事業所があるのか調べてみる。それだけでも、十分な一歩です。
最後にもう一度ー「今すぐやったほうがいいよ」(笑)
ここまでの話を、1枚にまとめました。印刷して手元に置いてください。
よくある質問
主任介護支援専門員を持っていません。独立できますか?
管理者は原則として主任介護支援専門員である必要があるので、まずは主任を取ってください。
研修の要件などは都道府県によって細かい違いがありますので、お住まいの都道府県の案内を確認してください。ここは避けて通れないところです。
開業資金は、いくら用意すればいいですか?
設備にかかるお金は、それほど多くありません。
それよりも考えておきたいのが、売上が安定するまでの生活費です。
介護報酬が入ってくるのは、事業所を始めてから約2か月後です。しかも、最初は担当件数が少ないので、入ってくる金額も多くありません。
何か月分あれば大丈夫とは言えないので、思ったように件数が増えなくても、自分は何か月持ちこたえられるのか。そこを先に計算しておいてください。
前の職場の利用者さんを、連れて行ってもいいのでしょうか?
わたしは連れて行っていません。
事業所はご本人が選ぶものであって、こちらから働きかけるものではないと思っています。
また、利用者さんは担当ケアマネ個人ではなく、居宅介護支援事業所と契約しています。もし利用者さん本人から「独立したあとも担当してほしい」と希望された場合には、現在の事業所との契約もありますので、まずは事業所と話し合うことになると思います。
わたし自身は、それよりも前の職場を円満に辞めることのほうが、そのあとの地域で仕事をしていくうえでは大切だと思っています。
1人だけの事業所でも、特定事業所加算は取れますか?
取れません。
もっとも要件の緩い区分でも、自分のほかに2人は必要です。1人でやっているあいだは、加算のない基本の単位数になります。
知り合いと一緒に独立するのは、ありですか?
心強さはあると思います。
ただ、方針はどこかでぶつかる可能性があります。
何件まで持つのか、人を雇うのか、お金をどう分けるのか。始めるときは同じ方向を向いていても、続けていくうちに考えが分かれることはあります。
一緒にやるのであれば、最後は誰が決めるのか。そこは先に決めておいたほうがいいと思います。
独立して、いちばん変わったことは何ですか?
自由になったことです。
運営の仕方も、働く時間も、自分たちで決められます。
ただ、その分、何かあったときに守ってくれる人はいません。
自由と責任は、いつもトレードオフです。
※ここに書いた金額や件数は、わたしの事業所での実際の数字です。地域や事業所の状況によって変わりますので、参考程度にお読みください。制度の要件は改定で変わりますので、申請の前に必ず市区町村の窓口でご確認ください。
現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。
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