ケアマネの在宅勤務、実際にやってみた。資格があるのに働けない人が戻るために
「在宅勤務? うちみたいな居宅じゃ無理でしょう」
そう思っている管理者の方、多いと思います。 あるいは、ケアマネの資格は持っているけれど、通勤や時間の都合でなかなか働けていない方も。
今日は、居宅介護支援事業所を開業当初から在宅勤務で運営してきた経験を、 できるだけ具体的に書いていきます。「うちにもできるかも」のヒントになれば嬉しいです。
まず最初に言っておくこと
訪問介護もデイサービスも施設も、「その場に人がいること」が仕事の前提です。 だから在宅勤務には、そもそも馴染まない。
居宅介護支援は少し違います。仕事の中身が「利用者さんのお宅への訪問」と「書類」。 訪問はもともと事業所の外でしていますし、書類はクラウドで管理できる。 つまり、事業所にいなくても回せる構造になっているんです。
これを最初に言っておかないと「ケアマネはいいよね」という話になってしまうので、 ここは先に整理しておきたかった部分です。
うちのルール:来ても来なくてもいい
全員が、全日、家で働けます。事業所に来る義務はありません。 かといって「来るな」でもなくて、来たい日は来ればいい、という形です。
では実際どのくらい来ているかというと、月に1〜2回くらいでしょうか。 コピー用紙やトナーを取りに来るとき。認定調査の依頼を取りに来るとき。 あとは、パソコンの使い方が分からなくて来ることも、たまにあります。
用がなければ来ない。それだけのことです。
選べる状態を作っておくことが大事で、押しつけは逆方向でも良くないと思っています。
なぜ在宅にしたのか
動機はシンプルで、「人生のなかのどのくらいを通勤時間に使うのかって考えたら、もったいなさすぎるよね」という感覚でした。 仕事のために人生があるのではなく、人生のために仕事がある。そう思っています。
いくつかの事業所を経験する中で、「自分がやるならこうしたい」が少しずつ固まってきました。 そのころ、リモートワークを後押しする本(ジェイソン・フリード、デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン著『強いチームはオフィスを捨てる』)を読んで、背中を押された部分もあります。コロナ禍でリモートが広がった時期でもありました。
端末は最初Windowsでした。スタッフの意見を聞きながら改変を重ねてきた結果が、今の形になっています。「最初から完成していた」なんてことはなくて、ずっと試行錯誤の連続です。
電話・記録・紙・端末、どうしたか
電話
事業所の固定電話はなくしました。IP電話は管理者の携帯にだけ入っています。 スタッフには社用携帯を持たせていて、管理者がいったん受けて、担当者の番号を伝えるか、LINE WORKSで伝言する形にしています。伝言は即時で届きます。
営業時間外は、通知が届かない設定にしています。 利用者さんには「営業時間に改めてご連絡します」という自動メッセージが返るようにしていて、お急ぎのご用件はIP電話の代表番号におかけいただく形です。
スタッフの休みや訪問の予定は、Googleカレンダーで共有しています。 今この人は電話に出られない、というのが分かるので、かけ直しを待たせたり、二度手間になったりすることが減りました。
記録と書類管理
クラウド型の介護ソフト(カイポケなど)に、Googleドライブを組み合わせて、利用者さんごとにフォルダで管理しています。ここが紙のままだと在宅にはできません。この前提が整っているかどうかが、在宅移行の最初のチェックポイントだと思っています。
端末
各自にMacBook Air M1を支給しています。整備済品で6万円程度(2026年時点)。 コストとしては意識しましたが、スペック的には業務上の問題はありません。
紙をどう減らしたか
- FAX:eFAX(インターネットFAX)に切り替え。
- 郵便:事業所に届いたものを管理者がスキャン(ScanSnapを使用。複合機があれば代用できます)。
- 利用票の確認印・ケアプランの署名:利用者さんに渡す分だけ印刷して、印鑑か署名をもらい、その場で携帯からGoogleドライブへスキャンする形にしています。押印の扱いは自治体や様式によって異なることがあるため、各事業所で確認してみてください。
「在宅にしたら人が育たない」への答え
日常的には、毎週金曜の朝9時にGoogle Meetで会議を行っています(特定事業所加算の要件になっている会議)。 月に1回は交流会として一緒に食事をする機会も作っています。
書類を取りに来たタイミングで質問を受けることもありますし、あえて時間を取って教えることもあります。 「顔を合わせる機会ゼロ」ではないんです。
それに、やりとりは会議のときだけではありません。 業務連絡はLINE WORKSのグループで共有していますし、個人とのトークでも、報告や質問が日常的に飛び交っています。
「聞きたいことがあるけれど、次の会議まで待つ」ということには、なっていません。
個人情報とパスワードの管理
連絡に使っているのは、個人のLINEではなくLINE WORKS(仕事用のもの)です。 パスワードは1Passwordで管理し、MacBook Air の指紋認証、端末紛失時はiPhoneから位置特定できるようにしています。 「これで完璧に安全」とは言いません。各事業所の規程に照らして、適切な管理方法を確認してください。
在宅にして、よかったこと
ひとつは、時間の使い方です。同じ場所に集まっていると、どうしても無駄話をしてしまう。 在宅には、それがありません。
もうひとつは、自分のライフスタイルに合わせられることです。 家庭の事情も、体調も、生活の時間帯も、人によって違います。 そこに働き方を合わせられるのは、思っていた以上に大きいと感じています。
そして、失われるものもある
在宅にしたことで、こういった小さなサインに気づきにくくなっています。 個人情報の取扱い、スタッフのケアなど、気を使わないといけないことも増えました。
メリットがデメリットを上回ると感じているから続けていますが、「何も失わない」わけではない。 そこを抜きにして「在宅最高」とは言いたくありません。
人生の主役は、それぞれ自分自身です。働き方を強いるよりも、選択肢がある状態のほうが、みんなにとって良い。 今の形は、最初から完成していたわけではなくて、ずっと試行錯誤してきた結果です。
余談ですが、通勤がなくなれば紙もガソリンも減ります。地球にもちょっと優しい。ちょっとだけ、の話ですが。
この記事で一番伝えたかったこと
これは、担当していると本当に実感します。子育て中だから、家族の都合があるから、体力的に通勤がきついから。そういう理由でケアマネとして働けていない方が、少なくないと思っています。
在宅で働ける事業所が増えれば、そういう方たちが戻ってこられる。ケアマネ不足が少しでも和らぐかもしれない。そういう可能性を、この働き方には感じています。
「うちはこうした」という一事例にすぎませんし、「在宅にするべき」と言いたいわけでもありません。 ただ、選択肢の一つとして参考にしてもらえれば、と思います。
まとめ
在宅勤務に向けてやったことをざっくりまとめます。
- 電話:固定電話をなくし、IP電話+社用携帯に切り替え
- 記録:クラウド型介護ソフト+Googleドライブで管理
- 端末:MacBook Air M1(整備済品)を各自に支給
- 紙:eFAX・スキャナで大幅に減らし、署名は現場でスキャンして即アップロード
- 育成:入職後1〜数か月は事務所に来てもらい、週次のWeb会議と月1の食事会で関係を保つ
- セキュリティ:パスワード管理ツール・指紋認証・端末の位置特定を組み合わせる
失われるものもあります。スタッフの微妙な変化に気づきにくくなることは、正直なデメリットです。 それでも、「人生のための仕事」という考えを大切にしながら、今もこの形を続けています。
最終的な判断は、ご自身の事業所の状況や規程、スタッフの意向を踏まえて、管理者や関係者と一緒に考えてみてください。
よくある質問
居宅介護支援以外の介護の仕事でも在宅勤務はできますか?
難しいケースがほとんどだと思います。訪問介護・デイサービス・施設などは「その場に人がいること」が仕事の前提なので、書類業務の一部をリモートにすることはできても、全面的な在宅勤務は現実的ではありません。居宅介護支援は、訪問と書類が仕事の中心なので、在宅と相性がよいという背景があります。
介護ソフトを変えないといけませんか?
現在使っている介護ソフトがクラウド対応であれば、そのまま使える可能性があります。まずは使っているソフトの会社に「クラウドでどこからでもアクセスできるか」を確認してみてください。紙ベースの管理が残っているうちは、在宅勤務の導入は難しいと思っておくと、準備の優先順位がつけやすいです。
スタッフが在宅勤務に対応できるか不安です
最初から完全に在宅にする必要はありません。入職後1〜数か月は事務所に来てもらい、操作や業務の進め方をしっかり教える期間を設けることが、うちでは機能しています。週1回のオンライン会議、月1回の対面の機会があることで、孤立感も出にくくなります。
在宅勤務にすると、ケアマネの質が下がりませんか?
「在宅だから質が下がる」ということはないと思っています。一方で、スタッフの状態変化に気づきにくくなるのは事実で、フォローの仕組みを意識的に作っておく必要があります。定期的な会議・対面の機会・相談しやすい環境をどう整えるかが、管理者として考えるべきポイントだと思っています。
もう少し具体的に聞きたい方へ
ここに書いたのは、うちの形です。 事業所ごとに、人数も、記録の形も、事務所の状況も違います。 「うちの場合はどうなるのか」というところは、記事では書ききれません。
そこを一緒に考える場を用意しました。
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現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。
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