在宅介護

親のお風呂介助が大変になったら。ヘルパー・デイサービス・訪問入浴の選び方

親のお風呂介助が大変になったら。ヘルパー・デイサービス・訪問入浴の選び方

「浴槽をまたぐのが危なそうになってきた」
「シャワーだけで済ませているけれど、本当はお湯に浸かりたいのかもしれない」

親の体力が落ちてくると、毎日のお風呂が少しずつ難しくなっていきます。 立つ、またぐ、座る、洗う。元気なときには当たり前だった動きが、介護が必要になると大きな負担になります。

でも、家族だけで抱えなくて大丈夫です。 家のお風呂を使いやすく整える方法もありますし、介護保険のサービスで入浴を支える方法もあります。

今日は、親のお風呂介助が大変になってきたときに考えたい、家の環境づくりと、ヘルパー・デイサービス・訪問入浴の選び方をお話しします。

こまり
こまり
お風呂って、家族が手伝うしかないと思ってたけど、介護サービスでも助けてもらえるの?
とも
とも
はい。家のお風呂を使える段階ならヘルパーさんの入浴介助、外に出られるならデイサービスの入浴、自宅のお風呂が難しければ訪問入浴という方法があります。
こまり
こまり
そんなに分かれるんだ。どれを選べばいいか迷いそう。
とも
とも
迷って当然です。今日は「どれが正解か」ではなく、ご本人の体の動き、家のお風呂の環境、気持ちに合わせて考えていきましょう。

お風呂が難しくなるとき

お風呂の介助が大変になるきっかけは、転倒などの大きな出来事だけではありません。

たとえば、浴槽から一人で出られないことがあった。 家族が支えて出すのが大変だった。 足元が滑って、転びそうになった。 それ以来、怖くなってお風呂に入る回数が減った。

こうしたことは、在宅介護ではよくあります。

お風呂は、裸になる場所です。 床は濡れていますし、浴槽をまたぐ動きもあります。 立つ、座る、方向を変える、片足を上げる。ひとつひとつの動きに、転倒の危険が重なります。

家族が「危ないから今日はシャワーだけにしよう」と思うのも、自然なことです。 ただ、それが続くと、ご本人が本当はお湯に浸かりたいと思っていても、言い出しにくくなることがあります。

入浴サービスは、清潔を保つためだけのものではありません。 「安全に入れる」「家族が怖い思いをしなくていい」という、心の安心のために使ってもよいものです。

お風呂は清潔だけのためではない

お風呂には、体をきれいにする以上の意味があります。

お湯に浸かると、体が温まります。 温まることで血行がよくなり、こりや疲れがやわらぐことがあります。

お湯の中では浮力が働きます。 筋肉や関節にかかる負担が軽くなり、体の緊張がほぐれやすくなります。

水圧によって、足のむくみが楽に感じられることもあります。

そして何より、「気持ちよかった」と感じる時間になります。

できることが減っていく時期でも、食事とお風呂を楽しみにされる方は少なくありません。 がんの末期や、寝たきりに近い状態になっても、お風呂に入ると表情がやわらぐ方もいます。

お風呂は、生活の楽しみのひとつです。

だからこそ、「もう大変だからやめる」だけで終わらせず、別の方法で支えられないかを考えてみてほしいのです。

まず家のお風呂を整える

浴室でシャワーチェアに座る高齢女性に、家族が笑顔で寄り添っている

いきなり訪問や通いのサービスを使う前に、家のお風呂を安全に使えるよう整えることで、続けられる場合もあります。

たとえば、浴室や脱衣所に手すりをつける。 洗い場にシャワーチェアを置く。 浴槽台を使って、浴槽の深さを浅くする。 バスボードを使って、座って浴槽をまたげるようにする。

こうした道具を入れるだけで、動きがずいぶん変わることがあります。

ただし、道具を置けば必ず安全になるわけではありません。 浴室の広さ、浴槽の高さ、床のすべりやすさ、ご本人の足の上がり方によって、合うものは変わります。

「とりあえず買ってみる」より、担当のケアマネジャーや福祉用具専門相談員に、実際の浴室を見てもらうほうが安心です。

家のお風呂を整えても、家族だけで支えるのが怖い。 ご本人の体の動きが追いつかない。 そうなってきたら、訪問や通いのサービスを使う段階です。

福祉用具を借りるもの・買うものの考え方は、こちらの記事でも整理しています。 福祉用具レンタル、何が借りられて月いくら?介護ベッドから車椅子まで

訪問や通いのサービスで支える

介護保険で入浴を支える方法は、主に3つあります。

ヘルパーさんに家へ来てもらい、自宅のお風呂で入浴介助をしてもらう方法。 デイサービスへ行き、施設のお風呂に入る方法。 訪問入浴で、専用の浴槽を自宅に持ってきてもらう方法です。

どれが一番よい、という話ではありません。 それぞれ、向いている身体の状態が違います。

自宅のお風呂が使えるのか。 車椅子を使ってでも、外に出かけられる状態なのか。 裸を人に見られることへの抵抗がどれくらいあるのか。 家族がどこまで支えられるのか。

こうしたことを合わせて考えていきます。

介護保険サービス全体の種類を先に整理したい方は、こちらの記事も参考にしてください。 介護保険サービスにはどんな種類があるの?在宅・通い・泊まりのちがい

ヘルパーの入浴介助

ヘルパーさんの入浴介助は、基本的には自宅のお風呂を使える方に向いています。

浴室まで移動できる。 浴室内で座ることができる。 必要なところを支えてもらえば、洗身や着替えができる。 そういう段階で、ヘルパーさんに手伝ってもらう方法です。

家のお風呂を使えるので、ご本人にとっては慣れた環境で入れる安心感があります。 外に出る準備をしなくてもよいので、体力的な負担が少ないこともあります。

一方で、心理的なハードルもあります。

よくあるのは、「家に人を入れたくない」という抵抗感です。 浴室や脱衣所を見られること、家の中を見られることに抵抗がある方は少なくありません。

もうひとつは、自尊心です。 「まだ人に頼る年齢じゃない」 「お風呂くらい自分でできる」 そう感じる方もいます。

この気持ちは、否定しなくていいと思います。 誰かに体を洗ってもらうことは、とても個人的なことです。 恥ずかしさや抵抗感があって当然です。

介護サービスは、何でも代わりにやってもらうためのものではありません。 介護保険には、本人の自立を支援するという考え方があります。 基本は、その方ができることを続けられるように支えるものです。

だから、ヘルパーさんも最初から全部を手伝うとは限りません。 できるところはご本人にしてもらい、危ないところだけ支えてもらうところから始めることもあります。

たとえば、体を洗うことは自分でできるけれど、浴槽に入るときと出るときだけが怖い。 そんな場合は、「出入りのときだけ見守ってほしい」「そこだけ手伝ってほしい」という相談でも大丈夫です。

訪問介護で頼めること・頼めないことは、こちらの記事で詳しく整理しています。 訪問介護ってなに?ヘルパーさんに頼めること・頼めないこと

デイサービスの入浴

デイサービスの入浴は、外に出かけられる方に向いています。

デイサービスには、一般家庭より広い浴室や、特別浴槽、機械浴などの設備があることがあります。 職員も入浴介助に慣れています。 家族が家で支えるより、安全に入りやすい場合があります。

デイサービスのよさは、入浴だけではありません。

外に出ること自体が、よい効果になります。 朝起きて準備をする。 車に乗って出かける。 人と話す。 昼食を食べる。 新しく友達ができる。

こうしたことは、生活リズムや社会性を保つうえで、とても大切です。

家でお風呂に入るだけなら、用事はそこで終わります。 でもデイサービスでは、お風呂の前後にも人との関わりがあります。 それが、ご本人の楽しみになることもあります。

ただし、デイサービスを利用していても、入浴はしていない方もいます。

理由のひとつは、羞恥心です。 裸を見られたくない。 ほかの人がいる場所でお風呂に入るのが恥ずかしい。 そう感じる方は、当然います。

また、体力的に通うこと自体が負担になる場合もあります。 家から出る準備、車への乗り降り、デイで過ごす時間。 それらが大きな負担になる方には、デイサービスの入浴が合わないこともあります。

「デイに行っているから、そこで入れるはず」と決めつけず、ご本人の気持ちと体力を見ながら考えることが大切です。

デイサービスの一日の流れや費用、行きたがらないときの考え方は、こちらの記事で説明しています。 デイサービスってどんなところ?費用、回数、行きたがらない親のこと

訪問入浴

自宅の部屋で、訪問入浴のスタッフが専用浴槽のそばで高齢男性と話している

訪問入浴は、自宅のお風呂を使うことがむずかしい方や外に出かけるのがむずかしい方に向いています。

専用の浴槽を自宅に持ち込み、スタッフが複数人で入浴を支えます。 看護職員が同行し、入浴前に体温や血圧などを確認してから行います。

寝たきりに近い方、座った姿勢を保つことが難しい方、がんの末期の方などで使われることがあります。

訪問入浴というと、寝たきりに近い方のサービスという印象があるかもしれません。 たしかに、寝たきりに近い方が利用することは多いです。

ただ、外に出かけることや自宅のお風呂に入ることがむずかしい方にとっても、自宅でお湯に浸かれる大切な方法です。

他のサービスと同様、入浴には、体を清潔にするだけでなく、体を温めたり気分転換になったりする面もあります。 だから、自宅の浴槽やデイサービスで入ることがむずかしくても、訪問入浴という方法を考えることができます。

訪問入浴については、詳しくはこちらの記事でも説明しています。 寝たきりでもお風呂に入れる。「訪問入浴」という選択肢

どう選べばいいか

迷ったときは、まず「どこで入るか」よりも、本人の動きで考えると分かりやすくなります。

自宅の浴室まで歩ける。 浴室内で座れる。 浴槽をまたぐときだけ支えが必要。 この段階なら、家のお風呂を整えたうえで、ヘルパーさんの入浴介助を考えやすいです。

車椅子を使ってでも、外に出かけられる。 入浴だけでなく、人との関わりや生活リズムも作りたい。 この場合は、デイサービスの入浴が合うことがあります。

自宅の浴槽を使うことが難しい。 座位を保つことが難しい。 寝たきりに近い。 体調確認をしながら入浴したい。 この場合は、訪問入浴が候補になります。

もちろん、実際にはきれいに分かれないこともあります。 本人はデイに行けるけれど、裸を見られたくなくて入浴はしない。 家のお風呂は使えるけれど、ヘルパーさんには家に来てほしくない。 体の状態だけを見れば使えそうでも、ご本人の気持ちや家の事情で選びにくいこともあります。

だから、家族だけで判断しなくて大丈夫です。

ケアマネに相談する

自宅の居間で、福祉用具の相談員が高齢者と家族にカタログを見せながら説明している

お風呂のことは、家族だけで抱えやすい悩みです。

「お風呂に入れてあげられないなんて」 「シャワーだけで済ませていていいのかな」 「でも転ばせたらどうしよう」

そんなふうに、家族が申し訳なさと怖さのあいだで悩むことがあります。

でも、入浴は訪問や通いのサービスで支えられることです。 担当のケアマネジャーに、「お風呂が大変になってきました」と伝えてください。

そのときは、できれば具体的に話すと伝わりやすいです。

浴槽をまたぐのが難しくなってきた。 一人で浴槽から出られないことがあった。 滑って転びそうになった。 シャワーだけで済ませる日が増えた。 本人はお湯に浸かりたそうにしている。 家族が支えるのが怖い。

こうしたことを伝えると、ケアマネジャーは福祉用具、住宅改修、ヘルパー、デイサービス、訪問入浴など、適切なサービスの組み合わせを提案してくれます。

お風呂は、毎日の暮らしの中にある大切な時間です。 家族だけで無理をせず、早めに相談してみてください。

まとめ

こまり
こまり
つまり、お風呂介助が大変になってきたら、まず家のお風呂を安全に使えるように整える。それでも難しいときは、自宅のお風呂を使えるならヘルパーさん、外に出られて交流も大事にしたいならデイサービス、自宅のお風呂が難しかったり寝たきりに近かったりするなら訪問入浴を考える。お風呂は清潔だけじゃなくて、気持ちよさや楽しみの時間でもある。こんな感じ?
とも
とも
そのとおりです。お風呂に入ることは、体をきれいにするだけではありません。ご本人にとっても、家族にとっても、安心して気持ちよく過ごすための大切な時間です。

「家族だけで入れなければいけない」と思わなくて大丈夫です。 怖くなってきた、回数が減ってきた、本人がお湯に浸かりたそうにしている。 その時点で、相談してよいタイミングです。

親のお風呂介助が大変になったとき、家のお風呂、デイサービス、訪問入浴のどこで支えるかを選ぶ図

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具体的なサービスの選び方は、ご本人の体の状態、家の浴室、利用できる事業所によって変わります。 最終的なご判断は、担当のケアマネジャーや関係する専門職と相談しながら進めてください。


よくある質問

とも
とも
最後に、よくいただく質問にいくつかお答えいたします。

家族が先に道具を買ってもいいですか?

急いで買う前に、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談するのがおすすめです。 浴室の広さや浴槽の高さ、ご本人の動きによって、合う道具は変わります。

家族が先に一般のお店やネットで買ってしまうと、あとから介護保険の対象にはなりません。 「買ってから申請すればいい」と思わず、購入前にケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談してください。

本人が入浴サービスを嫌がるときは、どうすればいいですか?

まずは、何を嫌がっているのかを分けて考えます。 人に体を見られるのが嫌なのか、家に人が来るのが嫌なのか、外に出かけるのが負担なのかで、選び方が変わります。

いきなりサービスを決めず、本人が嫌がっている理由をケアマネジャーに伝えてください。 ヘルパー、デイサービス、訪問入浴のどれが合うかを考える材料になります。

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とも 現役・主任介護支援専門員

現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。

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