福祉用具レンタル、何が借りられて月いくら?介護ベッドから車椅子まで
「夜中にトイレへ行こうとして、ベッドから起き上がれずにいる」
「玄関の段差でつまずくようになった。手すりがあれば違うのかな」
起き上がる、立つ、歩く、またぐ。うまくいかなくなったところは、道具を1つ足すだけで変わることがあります。
今日は、介護保険で何が借りられて、月いくらなのかを整理します。どう頼めばいいのか、借りられないと言われたときのこと、いらなくなったらどうするのかまで、一つひとつお話ししていきますね。
介護保険でレンタルできる13種類
介護保険で借りられる福祉用具は、13種類です。正式には福祉用具貸与といいます。
名前だけ並べても何のことか分からないので、寝る・動く・移ると、そのほかに分けます。困っているところから探してみてください。
寝る
- 特殊寝台(いわゆる介護ベッド)
- 特殊寝台付属品(サイドレール、マットレス、ベッド用の手すりなど)
- 床ずれ防止用具(エアマット、体圧分散マットレス)
- 体位変換器(横向きの姿勢を保つクッションなど)
介護ベッドで大きいのは、高さが変わることと背中が起きることの2つです。
高さが変われば、立ち上がるときに足の裏が床に着きます。介助する家族も、腰をかがめずに済みます。背中が起きれば、食事や薬をベッドの上で済ませられて、むせにくい姿勢もつくれます。
マットレスやサイドレールは付属品という別の扱いで、ベッドとは別に料金がかかります。ベッドだけ借りて布団を敷く、という使い方はしません。
床ずれ防止用具は、床ずれができないように、できてしまっても軽くなるように、体にかかる圧を分散させる道具です。その中に、エアマットやマットレスがあります。何が合うかは体の状態によって変わるので、福祉用具専門相談員に見てもらってください。同じ姿勢で寝ている時間が長い方に使います。
動く
- 車椅子(手動・電動)
- 車椅子付属品(クッション、テーブルなど)
- 歩行器
- 歩行補助つえ(多脚杖など)
歩行器は、前に押して進むタイプ、車輪が付いていて体を預けられるタイプなど、いくつも種類があります。その人の歩き方に合っていないと、かえって危ないことがあります。どれが合うかを見るのは福祉用具専門相談員の仕事なので、遠慮なく相談してください。
杖は、どれでも借りられるわけではありません。借りられるのは、先が3〜4本に分かれた多点杖、松葉づえ、腕を通して支えるタイプの杖などです。よく見かけるT字型の杖は対象外で、こちらは自分で買うことになります。
移る
- 手すり(工事のいらない突っ張りタイプ・置き型)
- スロープ(工事のいらない置き型)
- 移動用リフト(つり具の部分は除く)
工事のいらない手すりには、床と天井で突っ張るタイプと、重い台に立てる置き型があります。工事をしないので、賃貸でも置けます。ベッドから立つとき、トイレで立つとき、玄関で靴を履くとき。つかまる場所が1つあるだけで、動きが変わります。
スロープは、玄関の上がりかまちや、部屋と部屋のあいだの数センチの段差に置きます。車椅子で出入りするなら、ここが通れるかどうかで、外に出られる回数が変わります。
移動用リフトは、自分では立てない方が、つり上げてもらって車椅子やお風呂へ移動するための道具です。介助する家族の腰を守るための道具でもあります。
その他
- 自動排泄処理装置(要介護4・5の方が対象)
- 認知症老人徘徊感知機器
認知症老人徘徊感知機器は、玄関を出たときやベッドから離れたときに知らせてくれるものです。夜のあいだ、家族が少し眠れるようになることがあります。
介護ベッドについては、機種の選び方をまとめた記事があります。介護ベッドは何が違う?レンタルで借りる前に知っておきたいこと
月いくらかかるの?
ものによって違いますが、1割負担の場合の目安はこのくらいです。
| 用具 | 月のレンタル料(目安) | 1割負担 |
|---|---|---|
| 介護ベッド(電動) | 7,000〜15,000円 | 700〜1,500円 |
| 車椅子(手動) | 4,000〜8,000円 | 400〜800円 |
| 床ずれ防止エアマット | 8,000〜15,000円 | 800〜1,500円 |
| 歩行器 | 2,000〜5,000円 | 200〜500円 |
| 手すり(置き型) | 2,000〜4,000円 | 200〜400円 |
実際の値段で見てみます。よく使われている電動ベッドの1つは、レンタル料が月11,060円、1割負担なら月1,106円です(ダスキンヘルスレント)。
たとえば、介護ベッド+マットレス+手すり+歩行器のフルセットでも、月1,500〜2,000円ほどの自己負担で揃います。
目安として、要介護2の方だと、このくらいの組み合わせになることがあります。
なお、この金額は1割負担の方の場合です。2割・3割の方は、そのぶん上がります。値段そのものも事業所によって違うので、契約の前に月いくらになるかを聞いてみてください。
要介護度で借りられないものもある
ここがちょっと注意。要支援1・2、要介護1の方 は、原則としてレンタルできない用具があります。
- 介護ベッド(特殊寝台)
- 車椅子
- 床ずれ防止用具
- 体位変換器
- 移動用リフト
- 認知症徘徊感知機器
- 自動排泄処理装置
理由:「軽度の方には必要性が低い」と判断されるため。
ただし、例外的に必要と認められれば借りられます。がんの末期の方、パーキンソン病の方など、実際に借りてる方もいらっしゃいます。医師の意見書などをもとに、市区町村が判断します。まずは担当のケアマネジャーに相談してください。
「借りられません」と言われたときは
とはいえ、要介護1の方でも、ベッドが必要な方はたくさんいます。例外にも当てはまらない。それでも夜、起き上がれずに困っている。
そういうとき、わたしははじめから自費で借りることをお勧めします。
全額が自己負担になりますが、事業所が保険を使えない方のために安く設定していることがあります。ベッド一式(本体・マットレス・柵)で、月1,500円ほど。ここは事業所によって違うので、金額は必ず確かめてください。
介護保険で借りるときは、いくつもの商品の中から、その人に合ったものを選べます。自費の場合は、型落ち品などになり、選ぶことができません。
要介護2以上の方は介護保険で借りることになりますが、要介護1以下の方は自費でレンタルすることができますので、ケアマネジャーに聞いてみてください。
借りるか買うかを選べるものがあります
令和6年4月から、介護保険のルールが1つ変わりました。スロープ・歩行器・杖は、レンタルするか購入するかを選べるようになりました。具体的にどのようなものが対象になるかは以下のリンクからご確認ください。(選択制の対象とする種目に関する解釈|厚生労働省)。
なぜこのような仕組みが導入されたかというと、長く使うものは、購入したほうが安く済むことがあるからです。買う場合は、あとで出てくる特定福祉用具販売と同じ扱いになります。
種類によって対象にならないものもあるので、そこは福祉用具専門相談員が説明してくれます。
実際に購入を選ぶ方は、そう多くない印象です。体の状態が変われば、合う道具も変わるからです。例えば、使っていた杖が合わなくなった時に、購入だと買い直すことになりますが、レンタルならそのまま新しいものと取り替えてもらえます。
レンタルか購入かは、ケアマネジャーと福祉用具専門相談員から、どちらの話も聞いたうえで決めてください。
借りるための流れ
では、レンタルが開始されるまでの流れを見ていきましょう。
- ケアマネに相談:「介護ベッド、必要そうなんですけど」
- 福祉用具専門相談員 が家に来て、家の広さや本人の状態を見る
- 複数の機種を提案 してくれる(カタログ・実物)
- 試しに使ってみる(1〜2週間のお試しも可能なケースあり)
- 契約してレンタル開始
福祉用具専門相談員が家に来て、置く場所があるか、移動ができるスペースがあるかを確認します。介護ベッドは思ったよりスペースを取るので、置いてみたら扉が開かなくなった、ということがあります。
搬入や選定については、ケアマネジャーと福祉用具専門相談員が確認してくれますので、家族が「どれにすればいいか」を一人で決める必要はありません。迷ったら、「どちらがいいと思いますか」と遠慮せずに聞いて大丈夫です。
購入しか選べないもの
福祉用具の中にもレンタルとしてそぐわないものがいくつかあります。
肌に直接ふれるもの、衛生上レンタルに向かないものは、購入することになります。
- ポータブルトイレ
- 入浴用椅子、シャワーチェア
- 浴槽用手すり
- 入浴用介助ベルト
- 簡易浴槽
- 自動排泄処理装置の交換可能部品
これらは特定福祉用具販売といって、同じ年度に10万円までが対象になります。
購入する前に、気をつけることが3つあります。1つ目は、いったん全額を支払うことです。ポータブルトイレが3万円なら、まず3万円を支払って、あとから申請すると2万7,000円(1割負担の方)が戻ってきます。これは福祉用具専門相談員がお手伝いしてくれます。購入代金は先に用意しておいてください。
2つ目は、購入するお店です。都道府県の指定を受けたお店(福祉用具事業所)で購入しないと、お金は戻りません。同じ商品をネット通販で先に買ってしまうと支給されません。購入する前に、ケアマネジャーに一言かけてください。
3つ目は、同じものを気軽に何度も買い直せないことです。同じ種目のものは、原則として1年度に1回までというルールがありますが、壊れて修理ができない、体の状態が大きく変わったなどの事情がある場合に限ります。このへんは市町村によって対応の仕方が変わってくるので、担当のケアマネジャーや福祉用具専門相談員に確認してみてください。
住宅改修も使える
レンタルや購入だけでなく、家を改修するのにも介護保険が使えます。住宅改修の対象となる工事は、以下の種目となります。
- 手すりの取り付け
- 段差解消
- 滑り防止の床材
- 引き戸への変更
- 洋式トイレへの変更
費用は20万円までが介護保険の対象で、そのうち1〜3割が自己負担です。20万円は一度に使い切らなくてもよく、何回かに分けて使えます。
支払い方は、購入するときと同じです。いったん工事費の全額を業者に支払って、工事が終わったあとに領収書などを提出すると、9割(1割負担の方)が戻ってきます。これを償還払いといいます。市町村によっては、はじめから自己負担分だけを支払えばよい受領委任払いが使えるところもあるので、担当のケアマネジャーに聞いてみてください。
それから、申し込む順番です。工事の前に申請していないと、介護保険の対象になりません。手すりを1本付けるだけでも、必ず先に担当のケアマネジャーへ声をかけてください。
工事をする業者も、担当のケアマネジャーが紹介します。福祉用具の事業所を通してつないでもらうことが多いです。お知り合いの工務店でもできなくはありませんが、介護保険の住宅改修に慣れていないと、時間がかかることもあります。
なお、賃貸などで工事ができないときは、置き型の手すりをレンタルで使うという方法もあります。
不要になったら返せる
購入とレンタルの選択の章でもお話しましたが、次のようなときにもレンタルのほうが良かったという場面があります。
- 親が施設に入った
- 入院が長引いた
- 状態が変わって別の機種に変えたい
- 亡くなった
どんな理由でも、返却すればその月でレンタル終了となります。買い取りだと処分に困りますが、レンタルだと身軽です。また、レンタルのメリットとしては、商品が劣化した時にすぐに交換してもらえることも挙げられます。
身体に合わなかったときに取り替えられるのも、レンタルの強いところです。歩行器が重すぎた、手すりの高さが合わない。使ってみて分かることは必ずあります。そのときは我慢せずに、福祉用具専門相談員に「これ、合いません」と伝えてください。
入院した場合は、すぐに返さなくても大丈夫です。家に置いたままにして、入院しているあいだの請求は止まるのが基本です。そのまま置いておくか、いったん返すかは、入院がどのくらいになりそうかで変わるので、担当のケアマネジャーに伝えてください。
借り始めた月や返した月など、月の中の数日しか使わなかったときは、半月分の請求になるのが基本です。
まとめ
道具は、入れてみて初めて分かることばかりです。合わなければ替えられますし、いらなくなれば返せます。まず一度、借りてみてください。
ここまでの話を、1枚にまとめました。
何を借りるか、どの機種が合うかは、福祉用具専門相談員や担当ケアマネジャーにご相談ください。家の広さや本人の体格に合わせて、最適なものを選んでくれます。
よくある質問
入院中でも借りられますか?
入院しているあいだは、介護保険の福祉用具は借りられません。病院の中は医療保険の世界だからです。
ただ、退院の日に合わせて、家に用具を入れておくことはできます。退院が決まったら、その時点でケアマネジャーに伝えてください。ベッドが間に合わないと、帰ってきた日に寝る場所がない、ということが起きます。
レンタルをしていて、入院になった場合は、それまで借りていた福祉用具はそのまま家においておいても、介護保険の請求はストップします。
認定の結果を待っているあいだは、借りられませんか?
申請中でも借りられます。結果が出る前に、暫定のケアプランという形で先に使い始めるやり方があります。
ひとつだけ注意してほしいことがあります。認定の結果が思ったより軽く出た場合、その用具が対象外になって、さかのぼって全額の負担になることがあります。始める前に、ケアマネジャーに「もし軽く出たらどうなりますか」と確認しておくと安心です。
レンタルの品は中古ですか?
前の方が使ったものを、洗浄・消毒して貸し出しています。これは決まりで定められた手順で、事業所が必ず行っています。
気になるようでしたら、「新しいものはありますか」と聞いてかまいません。在庫があれば用意してくれることもあります。
自費で借りていて、あとから介護保険が使えるようになったら、切り替えられますか?
切り替えられます。要介護度が変わって対象になれば、その時点から介護保険での貸与に移せます。
ただ、同じ品がそのまま続くとは限りません。介護保険では選べる商品が増えるので、そこであらためて合うものを選び直すことになります。切り替えの時期も含めて、担当のケアマネジャーに相談してください。
最終的なご判断は、担当のケアマネジャーや専門家にご相談ください。
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ありがとうございます!
現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。
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