在宅介護

杖だけじゃない。親に合う「歩く道具」の選び方

杖だけじゃない。親に合う「歩く道具」の選び方

「最近、よくつまずくみたい」 「外に出るのが怖いって言うようになった」

そう感じているのに、「とりあえず杖でいいか」と買ってしまう前に、少しだけ立ち止まってみてください。 歩く道具は種類が多く、合わないものを使うと、かえって転びやすくなることがあるからです。

今日は、杖・歩行器・シルバーカーの違いと、親に合う一本を選ぶ考え方を整理していきます。


とも
とも
こんにちは。今日は「歩く道具」の話をしようと思います。杖・歩行器・シルバーカーって、見た目は分かるけど、どれを選べばいいか迷う方が多くて。
こまり
こまり
たしかに。杖と歩行器って、そもそも何が違うの? 足が弱くなったら杖、もっと弱くなったら歩行器…みたいな順番?
とも
とも
順番というより、「どのくらい支えが必要か」と「どこで使うか」で変わってくる、というのが正確な感じです。歩く力と使う場所、この2軸で整理すると分かりやすいですよ。

なぜ「歩く道具」を真剣に考えるの?

母と娘が廊下で杖を確認しているシーン

高齢になると、転倒がとにかく怖いです。 一度転んで骨折すると、入院や安静にしている間に足腰の力が落ちて、そのまま要介護につながってしまうことも珍しくありません。

「ちょっと足が弱くなったくらい」と思っていても、転倒はそこから一気に状況を変えることがある。 だから、「まだ大丈夫」のうちに道具を用意することが大切なんです。

もうひとつ、外出をあきらめないためにも必要です。 外に出なくなると体を動かす機会が減り、気持ちも閉じこもりがちになる。「怖いから外に出ない」がどんどん加速してしまいます。 本人に合った道具があると、その「怖い」そのものがやわらいで、「また外に出てみようかな」と思えることがあります。


歩く道具、どんな種類があるの?

ざっくり5種類に分けて整理します。

普通の杖・多点杖・歩行器・歩行車・シルバーカーの比較図

① 一本杖(T字杖)

いちばんなじみのある形。 軽いバランスの補助に向いていて、階段も使えます。 片側のひざや股関節が痛くて、反対の手でかばいたいときや、軽くふらつく程度のときに向いています。

自費で購入するケースが多く、数百円〜数千円とリーズナブルなものもあります。 ただし、高さが合っていないと逆に危ないので、実際に立って長さを確認してから選んでください。

② 多点杖(4点杖など)

先が3点や4点に分かれていて、床への設置面積が広い。 一本杖より安定感がある分、やや重くなります。 一本杖では少し心もとない、もう少し安定がほしいというときに選ばれます。片麻痺(脳卒中の後遺症など)のある方が使うこともあります。

③ 歩行器(室内向き)

4本脚の枠を手でつかんで、少しずつ前に進む道具。 両手でしっかり支えられるので、両足の支えが弱くなってきた方の歩行を支えます。 ただし、車輪がない固定式は段差に弱く、主に室内向き。 持ち上げて前に進むので、腕の力もある程度必要です。

④ 歩行車(室内〜屋外向き)

歩行器に車輪がついたもの。押して進めるので腕への負担が少なく、屋外でも使えるタイプがあります。 ただし、車輪が小さいものは小石や段差にひっかかりやすいので、外で使うなら屋外用(車輪が大きめ・ブレーキ付き)のモデルを選ぶと安心です。

⑤ シルバーカー(腰かけ付き・買い物向き)

折りたためるバッグ付きの4輪カート。 荷物が入れられる・疲れたら腰かけられるのが便利で、スーパーやお出かけ向き。 ただし、歩行をしっかり支える道具ではありません。シルバーカーは、自分で歩ける方の外出を楽にする道具で、体重を預けてもたれるような使い方には向いていません。「歩行の支え」ではなく「荷物入れ+ひと休み」として使うイメージです。

こまり
こまり
えっ、シルバーカーってそんなに支えにならないの? お年寄りが使ってるのをよく見るから、しっかりしてるのかと思ってた。
とも
とも
そこ、大事なところです。見た目は頑丈そうでも、車輪がついているぶん、体重をかけすぎると前に転がっていってしまう。シルバーカーは「荷物運び+休憩」のための道具で、歩行の支えが主目的ではないんです。

どれを選ぶか、3つの軸で考える

屋外で歩行車を使って散歩する高齢男性

軸1:本人の「歩く力」はどのくらいか

  • 軽くふらつく・ちょっと支えがほしい → 一本杖
  • 片側の足が弱い → 杖は弱いほうと反対の手で持つ/もっと安定がほしいときは多点杖
  • 両足に力が入りにくい → 歩行器・歩行車
  • 自分で歩けるが疲れやすい・荷物が持てない → シルバーカー(外出の補助として)
こまり
こまり
じゃあ、いちばんしっかり支えてくれる歩行器を選んでおけば、安心なんじゃないの?
とも
とも
それが、そうとも限らないんです。今の力より強く支えすぎる道具を使うと、自分の足を使う機会が減って、かえって歩く力が落ちてしまうことがあります。だから「強いほど安心」ではなく、今の力にちょうど合うものを選ぶのが大事なんですよ。

軸2:どこで使うか

使う場所向いている道具
家の中(廊下・トイレへの移動など)固定式歩行器、室内用の歩行車
外(散歩・買い物)一本杖、シルバーカー、屋外用の歩行車
段差・階段がある場所一本杖・多点杖(歩行器より小回りがきく)

家の中と外で道具を使い分けるケースも多いです。

軸3:体格・身長に合っているか

高さが合っていない道具は、正しい姿勢で使えず、かえって疲れたり転びやすくなります。 杖なら、軽く握ったときにひじが少しだけ曲がる高さが一つの目安です。ただし体の状態で変わるので、必ず実際に立って確かめてから決めることを強くおすすめします。


介護保険でレンタルできるものがある

歩行器・歩行車・多点杖などは、介護保険の対象になることがあります。要介護(要支援)認定を受けていれば、レンタルなら自己負担1〜3割で使え、2024年からは品目によって「借りる」か「保険で買う」かを選べるものも出てきました。

一方、シルバーカー一本杖(T字の杖)は、レンタルの対象ではなく、自費で用意するのが一般的です。

ただ、何が対象になるか・借りるか買うかは、要介護度やケアプラン、品目によって細かく変わります。 福祉用具のレンタルについてもう少し詳しく知りたい方は、福祉用具レンタル、何が借りられて月いくら?介護ベッドから車椅子までもあわせて読んでみてください。

こまり
こまり
じゃあ、買う前にケアマネさんに聞いた方がいい、ってこと?
とも
とも
そうなんです。歩行器や歩行車は、借りるか買うかで自己負担が変わりますし、種目によっては「借りる・買う」を選べるものもあります。ただ、自分でお店で先に買ってしまうと保険の対象から外れることもあるので、まずケアマネさんに確認してから動くのが、お財布にも安心です。

「とりあえず杖」で済ませる前に

ホームセンターやドラッグストアで、安い杖が売られているのをよく見かけます。 「まずはこれで」と買うこと自体は悪くありませんが、高さが合っていなかったり、本人の足の状態に合っていないと、逆に転びやすくなることがあります。

杖の先(石突き)が滑っていないか、グリップが握りやすいかも地味に大事。 ちょっとした適合のズレが、日々の安全に影響します。

専門的に「体に合わせて選ぶ」のが福祉用具専門相談員の仕事です。 ショップで実際に歩いてみながら選んでもらえるので、「何を選べばいいか分からない」というときは、ぜひ相談してみてください。

歩行を支える道具は、その人の体の状態に合わせて選ぶのが基本です。デイケアや訪問リハビリなどでリハビリの先生(理学療法士・作業療法士)が関わっている方は、その先生にも相談すると、歩き方や麻痺・痛みの状態に合ったアドバイスがもらえます。

とも
とも
担当のケアマネジャーがいれば、相談すると福祉用具の会社を紹介してもらえます。まずはそこからがスムーズですよ。まだ介護保険を使っていない・ケアマネがいないという方は、地域包括支援センター(高齢者の暮らしを無料で相談できる地域の窓口)に相談すれば大丈夫です。

まとめ:外出をあきらめないために

こまり
こまり
整理すると、こういうことかな。杖・歩行器・シルバーカーはそれぞれ役割が違って、「足の力」と「どこで使うか」で選ぶ。合わないものはかえって危ない。保険で借りられるものもあるから、買う前にまずケアマネさんか福祉用具の人に聞く。
とも
とも
完璧な要約です。「とりあえず安い杖を買う」より、「本人に合う一本を選ぶ」ほうが、長い目で見てずっと安心です。外出をあきらめなくてすむように、ちゃんと選んであげてほしいと思います。

歩く道具は、本人の意欲や生活の範囲に直接つながります。 「外が怖い」を「外に出られる」に変えるきっかけになることも、少なくありません。

適合・選定の最終判断は、担当のケアマネジャーや福祉用具専門相談員にご相談ください。 体の状態は人によって違うので、記事の情報はあくまで参考として使ってもらえると幸いです。

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とも 現役・主任介護支援専門員

現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。

この人について →

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