杖だけじゃない。親に合う「歩く道具」の選び方
「最近、よくつまずくみたい」 「外に出るのが怖いって言うようになった」
そう感じているのに、「とりあえず杖でいいか」と買ってしまう前に、少しだけ立ち止まってみてください。 歩く道具は種類が多く、合わないものを使うと、かえって転びやすくなることがあるからです。
今日は、杖・歩行器・シルバーカーの違いと、親に合う一本を選ぶ考え方を整理していきます。
なぜ「歩く道具」を真剣に考えるの?
高齢になると、転倒がとにかく怖いです。 一度転んで骨折すると、入院や安静にしている間に足腰の力が落ちて、そのまま要介護につながってしまうことも珍しくありません。
「ちょっと足が弱くなったくらい」と思っていても、転倒はそこから一気に状況を変えることがある。 だから、「まだ大丈夫」のうちに道具を用意することが大切なんです。
もうひとつ、外出をあきらめないためにも必要です。 外に出なくなると体を動かす機会が減り、気持ちも閉じこもりがちになる。「怖いから外に出ない」がどんどん加速してしまいます。 本人に合った道具があると、その「怖い」そのものがやわらいで、「また外に出てみようかな」と思えることがあります。
歩く道具、どんな種類があるの?
ざっくり5種類に分けて整理します。
① 一本杖(T字杖)
いちばんなじみのある形。 軽いバランスの補助に向いていて、階段も使えます。 片側のひざや股関節が痛くて、反対の手でかばいたいときや、軽くふらつく程度のときに向いています。
自費で購入するケースが多く、数百円〜数千円とリーズナブルなものもあります。 ただし、高さが合っていないと逆に危ないので、実際に立って長さを確認してから選んでください。
② 多点杖(4点杖など)
先が3点や4点に分かれていて、床への設置面積が広い。 一本杖より安定感がある分、やや重くなります。 一本杖では少し心もとない、もう少し安定がほしいというときに選ばれます。片麻痺(脳卒中の後遺症など)のある方が使うこともあります。
③ 歩行器(室内向き)
4本脚の枠を手でつかんで、少しずつ前に進む道具。 両手でしっかり支えられるので、両足の支えが弱くなってきた方の歩行を支えます。 ただし、車輪がない固定式は段差に弱く、主に室内向き。 持ち上げて前に進むので、腕の力もある程度必要です。
④ 歩行車(室内〜屋外向き)
歩行器に車輪がついたもの。押して進めるので腕への負担が少なく、屋外でも使えるタイプがあります。 ただし、車輪が小さいものは小石や段差にひっかかりやすいので、外で使うなら屋外用(車輪が大きめ・ブレーキ付き)のモデルを選ぶと安心です。
⑤ シルバーカー(腰かけ付き・買い物向き)
折りたためるバッグ付きの4輪カート。 荷物が入れられる・疲れたら腰かけられるのが便利で、スーパーやお出かけ向き。 ただし、歩行をしっかり支える道具ではありません。シルバーカーは、自分で歩ける方の外出を楽にする道具で、体重を預けてもたれるような使い方には向いていません。「歩行の支え」ではなく「荷物入れ+ひと休み」として使うイメージです。
どれを選ぶか、3つの軸で考える
軸1:本人の「歩く力」はどのくらいか
- 軽くふらつく・ちょっと支えがほしい → 一本杖
- 片側の足が弱い → 杖は弱いほうと反対の手で持つ/もっと安定がほしいときは多点杖
- 両足に力が入りにくい → 歩行器・歩行車
- 自分で歩けるが疲れやすい・荷物が持てない → シルバーカー(外出の補助として)
軸2:どこで使うか
| 使う場所 | 向いている道具 |
|---|---|
| 家の中(廊下・トイレへの移動など) | 固定式歩行器、室内用の歩行車 |
| 外(散歩・買い物) | 一本杖、シルバーカー、屋外用の歩行車 |
| 段差・階段がある場所 | 一本杖・多点杖(歩行器より小回りがきく) |
家の中と外で道具を使い分けるケースも多いです。
軸3:体格・身長に合っているか
高さが合っていない道具は、正しい姿勢で使えず、かえって疲れたり転びやすくなります。 杖なら、軽く握ったときにひじが少しだけ曲がる高さが一つの目安です。ただし体の状態で変わるので、必ず実際に立って確かめてから決めることを強くおすすめします。
介護保険でレンタルできるものがある
歩行器・歩行車・多点杖などは、介護保険の対象になることがあります。要介護(要支援)認定を受けていれば、レンタルなら自己負担1〜3割で使え、2024年からは品目によって「借りる」か「保険で買う」かを選べるものも出てきました。
一方、シルバーカーや一本杖(T字の杖)は、レンタルの対象ではなく、自費で用意するのが一般的です。
ただ、何が対象になるか・借りるか買うかは、要介護度やケアプラン、品目によって細かく変わります。 福祉用具のレンタルについてもう少し詳しく知りたい方は、福祉用具レンタル、何が借りられて月いくら?介護ベッドから車椅子までもあわせて読んでみてください。
「とりあえず杖」で済ませる前に
ホームセンターやドラッグストアで、安い杖が売られているのをよく見かけます。 「まずはこれで」と買うこと自体は悪くありませんが、高さが合っていなかったり、本人の足の状態に合っていないと、逆に転びやすくなることがあります。
杖の先(石突き)が滑っていないか、グリップが握りやすいかも地味に大事。 ちょっとした適合のズレが、日々の安全に影響します。
専門的に「体に合わせて選ぶ」のが福祉用具専門相談員の仕事です。 ショップで実際に歩いてみながら選んでもらえるので、「何を選べばいいか分からない」というときは、ぜひ相談してみてください。
歩行を支える道具は、その人の体の状態に合わせて選ぶのが基本です。デイケアや訪問リハビリなどでリハビリの先生(理学療法士・作業療法士)が関わっている方は、その先生にも相談すると、歩き方や麻痺・痛みの状態に合ったアドバイスがもらえます。
まとめ:外出をあきらめないために
歩く道具は、本人の意欲や生活の範囲に直接つながります。 「外が怖い」を「外に出られる」に変えるきっかけになることも、少なくありません。
適合・選定の最終判断は、担当のケアマネジャーや福祉用具専門相談員にご相談ください。 体の状態は人によって違うので、記事の情報はあくまで参考として使ってもらえると幸いです。
現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。
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