こまりの歯のはなし。マンチカンと、治療しないという選択
マンチカンを家に迎えてから、わたしは初めて知ったことがあります。
それは、マンチカンという猫種は、近親交配で生まれてくる ということでした。
足が短くてよちよち歩くあの愛らしい姿は、もともと自然発生した突然変異の遺伝子を、人間が掛け合わせて固定化したもの。つまり、ヒトの「足の短いかわいい猫がほしい」という願望のために、生まれ続けてきた猫種なんです。
その結果として、マンチカンには 骨格や歯並びに「ちょっと変なところ」が出やすい とも言われています。
こまりの口の中
うちのこまりは、生後数か月のとき、獣医さんに歯を診てもらいました。
そこで分かったのは、顎が変形していて、左下の歯が口の中にうまく収まっていない、ということ。
食事に支障はありません。 ドライフードも、ちゅーるも、いつも全力で食べに来ます。
ただ、口を閉じた状態でも、左下の歯がちょっとだけ見えていることがある。それは正直、人間目線で「不便そう」に見えたんです。
「矯正」の選択肢
獣医さんに、選択肢を聞きました。
猫の歯の矯正は、人間ほどシンプルじゃありません。
- ワイヤーをつける矯正は、口に違和感が出るし、ストレスがすごい
- 食事は経管栄養(鼻や食道にチューブを通して栄養を入れる方法)に切り替える必要がある場合がある
- 矯正のあいだは、当然「噛む楽しみ」は奪われる
- それでも、想定通りに歯が動くとは限らない
聞いて、わたしは黙ってしまいました。
ただでさえ食いしん坊なこの子から、食べる楽しみを取り上げる選択。 想定通りにいかなかったら、それは何のためだったのか分からなくなる選択。
「治療しない」という選択
家族で話し合って、決めました。
矯正はしない。このままで。
理由はシンプルです。
- 食事に問題が出ていない
- 痛みも感じていない
- 命にも関わらない
- それでも矯正で「食べる楽しみ」を奪うのは、こまりにとっての幸せから遠ざかる
「治療しない」って、なんだか後ろ向きに聞こえるかもしれません。 でも、わたしはこれを 積極的な選択 だと思っています。
困っていないのだから、人間の見た目の都合で治そうとしない。 できることがあっても、しないという選択をする。
これは、介護の現場でも何度か出会ってきた考え方と、ちょっと似ているなと思いました。
介護の話と、ちょっと重なる
たとえば、認知症のあるご利用者さんで、ご家族が「もっと活動的にさせたい」と望むことがあります。
でも、本人は静かに過ごしたい。お茶を飲んで、テレビを見て、うとうとしたい。
「治す」ことや「改善する」ことを目指しすぎると、その人らしい時間を奪ってしまうことがあります。
困っていないことを、無理に変えない。 できることがあっても、その人が望まないならしない。
これも、立派な選択です。
マンチカンを迎える前に、知ってほしいこと
最後に、ひとつだけ書かせてください。
マンチカンは、本当にかわいい猫種です。足が短くて、よちよち走って、踏み台がないとテーブルに登れない。動きが不器用で、それがたまらなく愛しい。
でも、その「かわいさ」は、人間が遺伝子を掛け合わせて作ってきた結果 でもあります。
これからマンチカンを迎えようと思う方には、ぜひ知っておいてほしいです。
- 骨格や歯並びに、人より「変なところ」が出やすい個体がいる
- 生涯にわたって獣医さんとの付き合いが必要になることもある
- 「治療する/しない」の選択を、家族で迫られる場面が来るかもしれない
そのうえで、その子と一緒に暮らすことを選ぶなら、最後まで一緒に。
これは、犬でも猫でも、人間の家族でも、同じだと思います。
おわりに
うちのこまりは、今日も口の左下から少しだけ歯をのぞかせながら、ごはんを食べて、爆走して、お腹を上にして寝ています。
それでいい。 家族が選んだ「このまま」を、こまりは満喫してくれている気がします。
ペットの治療の選択は、家族の状況やその子の体調、専門家のアドバイスによって変わります。
最終的なご判断は、信頼できる獣医師にご相談のうえ、その子にとって何がいちばんいいかを家族で話し合ってください。
現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。
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