慣れた人に、続けて関わってほしい。「小規模多機能」という選択肢
「また知らない人だ」——お母さんが、来る人が変わるたびに、少し不安そうな顔をする。 その表情を見るたびに、「また一から説明しなきゃ」と、こちらも少し身構えてしまう。
デイの日、訪問の日、ショートの日。 どれも大切な時間なのに、毎回ちがう人に同じことをくり返し伝えるのは、地味に疲れるものです。
「なんだか、自分ばかりが疲れている気がする」 そう感じている方は、けっして少なくありません。
そんなとき、知っておいてほしい選択肢が一つあります。 今日は「小規模多機能型居宅介護」というサービスを、いっしょに見ていきます。
「いつもの人」が、続けて関わる安心
小規模多機能型居宅介護(以下、小規模多機能)は、一つの事業所が次の3つを提供します。
- 通い:施設に来て、日中を過ごす
- 泊まり:施設に宿泊する
- 訪問:職員が自宅に来る
ポイントは、この3つを同じ事業所・顔なじみの職員が、続けて関わってくれやすいこと。
たとえば、朝に施設で顔を合わせた職員が、その日の夕方に自宅へ訪問することもあります。 泊まりの夜も、知っている職員が対応してくれることが多いです。 そういう「いつもの顔ぶれが続く」安心感が、このサービスの一番の持ち味です。
そして、その日の体調や家族の都合に合わせて、通い・泊まり・訪問を柔軟に組み合わせられるのも特徴です。
なぜ、家族の疲れがやわらぐのか
たくさんの人に支えてもらえるのは、ほんとうにありがたいこと。 それぞれの現場で、みなさん一生懸命に関わってくれています。
ただ、関わる人が増えると、こちらも増えるものがあります。 それは——「説明する回数」です。
「母は左手が動きにくくて」「このお薬は食後で」「最近こういう物忘れが」。 来る人ごとに、毎回ゼロから伝える。 小さなことですが、これが続くと、じわじわ疲れていきます。
小規模多機能は、関わる職員が顔なじみになりやすいぶん、この「毎回の説明」がぐっと減ります。 こちらの事情を、もう分かってくれている。 それだけで、肩の力が少し抜けるんです。
認知症のある方には、とくに
認知症のある方は、「知らない人」が来るというだけで、不安になってしまうことがあります。
「今日は、誰?」 その緊張が、毎日くり返されるのは、本人にとっても、見ている家族にとっても、つらいもの。
顔なじみの人が続けて関わってくれると、その「今日は誰?」が減ります。 慣れた人の顔は、それだけで安心の材料になります。
今のサービス、全部やめることになるの?
ここは、よく心配されるところなので、はっきり書いておきますね。
小規模多機能を使うと、同じ役割の他のサービスは、原則として、いっしょには使えなくなります。
- いっしょに使えなくなるもの … 訪問介護(ヘルパー)・デイサービス・ショートステイ
通い・泊まり・訪問を「まとめて引き受ける」仕組みなので、ここは重なってしまうんですね。
一方で、役割のちがうサービスは、これまで通り続けられます。
- 続けて使えるもの … 訪問看護・福祉用具のレンタル・住宅改修・居宅療養管理指導(医師や薬剤師の訪問) など
「今お世話になっている訪問看護さんを手放さなきゃいけないの?」と心配される方が多いのですが、そこは続けられるので、安心してくださいね。
※ただし、サービスによっては、状況によって扱いが変わることもあります。詳しくは担当のケアマネジャーに確認してくださいね。
知っておいてほしいことも、あります
ここまで読むと魅力的に聞こえるかもしれませんが、合う・合わないがはっきりしているサービスでもあります。決める前に知っておいてほしい点を、正直にお話しします。
料金は「月額定額」。だからこその注意点
小規模多機能の料金は、要介護度ごとの月額定額(包括報酬)です。 通い・泊まり・訪問をどれだけ使っても、基本の料金は変わりません。たくさん使う時期には、これはとても心強い仕組みです。
ただ、裏を返すと、あまり使わなかった月も、同じ定額がかかります。 利用が少なめの方にとっては、回数ごとに払うより割高に感じることもある、ということです。
※なお、定額に含まれるのは介護サービス費です。食事代や泊まりの宿泊費、おむつ代などは別途実費。泊まりの回数が増えれば、その分の宿泊費・食費はかかります。
泊まりは「いつでも好きなだけ」ではない
「急なときに泊まれる」のは確かに強みですが、泊まりの定員は少なめです。 そのため、希望した日に満員で泊まれないこともあります。「泊まり放題」ではない、という点は知っておいてください。
担当のケアマネジャーが変わる
小規模多機能を使うと、ケアプランはその事業所のケアマネジャーが担当することになります。 つまり、今のケアマネジャーとは、いったん離れることになります。
「今の担当さんと相性がいいから、続けたい」という方にとっては、ここは大きな引っかかりになるかもしれません。
介護は、ひとつの「チーム」
ここで、ひとつ大事な考え方を。
デイサービス、ヘルパーさん、訪問看護、そしてご家族——介護は、いろんな立場の人が関わる「チーム」で支えるものです。そのチームの間に立って、連携を整える”調整役”が、担当のケアマネジャーです。
事業所がいくつかに分かれていても、間にケアマネジャーが入って調整することで、チームは一つにつながって動きます。関わる人が多いのは、それだけ多くの目と手で支えられているということ。実際、別々の事業所どうしが、見事に連携している在宅のチームは、たくさんあります。
そのうえで、小規模多機能の強みは——通い・泊まり・訪問が、もともと一つの事業所・同じ顔ぶれであること。情報の共有や連携が”はじめから一つ”なので、連携がとりやすい形でまとまっているんです。
だから小規模多機能は、今ある形を否定して置きかえるものではありません。今のチームを大切に続けることも、立派な選択です。小規模多機能は、その連携を別の形で実現する選択肢のひとつ、というだけです。
だからこそ、「どちらが正しい」ではなく、「今の暮らしに合っているか」が、いちばん大切なんです。
こんな方は、選択肢に入れてみて
小規模多機能が力を発揮しやすいのは、たとえばこんな方です。
- 慣れた人に、続けて関わってほしいと感じている方
- 認知症があり、知らない人が来ると不安になりやすい方
- その週の状況に合わせて、通い・泊まり・訪問を柔軟に組み合わせたい方
- 退院したばかりで、これからどれくらい介護が必要か読めない時期の方
どれも「できない人向け」ではなく、こういう暮らしを望む人向け。 当てはまるものがあれば、知っておいて損はない選択肢です。
まとめ:知っているだけで、相談がラクになる
もし、次のどれかに当てはまったら、一度ケアマネジャーに相談してみてください。
- 通い・訪問・泊まりが別々で、調整に疲れてきた
- 認知症があり、環境や人の変化が苦手
- 急な泊まりや訪問に、柔軟に対応してほしい
- 退院後で、これからの介護量がまだ読めない
小規模多機能型居宅介護が家族に合うかどうかは、ご本人の状態・地域の事業所の状況・今の人間関係などによって大きく変わります。 最終的なご判断は、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターの専門家にご相談ください。
あなたの家族に合う方法は、一つではありません。 「選択肢を知っていること」が、介護をちょっとラクにする入口になります。 今日も、ここまで読んでくれてありがとうございました。
現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。
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