高齢者がペットを飼うということ。心理に隠された思いと高齢者を支える仕組みづくりについて
高齢の親が猫を何匹も飼っていて、心配している。 亡くなった後のペットをどうしたらいいか分からない。 「もうペットは飼わないで」と言いたいけど、言えない。
そういう場面、介護の現場でも、家族の中でも、けっして珍しくありません。
これはわたし個人の考えをまじえながら書いた記事です。 正解を押しつけるつもりはないのですが、「高齢者とペット」というテーマを 少し違う角度から見てもらえたらうれしいです。
高齢者がペットを飼い続けるのはなぜか
年をとると、できないことがどんどん増えていきます。
足腰が弱る。遠くへ出かけられなくなる。友人や配偶者が先に亡くなる。 子どもたちは忙しい。近所付き合いも薄れていく。
そういう日々の中で、「わたしを頼ってくれる存在」というのは、想像以上に大きいのです。
ごはんの時間になれば寄ってくる。そばに来て丸くなる。目が合えば鳴く。 「あなたがいてくれてよかった」と感じさせてくれる存在。
ペットは言葉で気を遣ったり、忙しそうにしたりしません。 ただそこにいて、その人を必要としてくれる。
わたしがケアマネジャーとして関わってきた中でも、 一人暮らしの高齢者がペットの世話をすることで生活リズムを保ち、外出のきっかけになり、気持ちの支えにしている場面を何度も見てきました。
これは「気のせい」じゃないと思っています。
問題になのは「ペットがいること」ではなく「支える仕組みがないこと」
「高齢者はペットを飼うべきではない」という意見の背景には、こんな現実があります。
- 飼い主が入院・施設入所になったとき、ペットの行き先がない
- 亡くなった後、多頭飼育崩壊(たとえば猫が増えすぎてしまうこと)が起きる
- 適切な医療やケアができなくなる
これは確かにある話で、動物愛護の観点からも真剣に考えるべきことです。 ペット自身が苦しむ状況は、防がなければいけない。
ただ、問題の根っこは「ペットを飼う高齢者」ではなく、「その人が孤立していること」「困ったときに頼れる場所がないこと」ではないかとわたしは感じています。
周りに相談できる人がいれば、ペットの預け先を一緒に考えられます。 地域に見守りのネットワークがあれば、多頭飼育になる前に気づける人がいます。 家族や支援者がつながっていれば、入院の前に準備できます。
「ペットを飼わないように言いましょう」ではなく、 「その人が孤立しないような世の中にしていく」ことが、本当に必要なことだと思っています。
家族として、どう向き合うか
「親がまた猫を拾ってきた」「もう手が回らないのに…」
そういうときの家族の複雑な気持ちは、とてもよく分かります。 心配だし、後のことが不安だし、でも強く言えない。
いくつか、家族の方に考えてみてほしいことをお伝えします。
ペットの「もしも」を一緒に考えておく
元気なうちから、「もし入院することになったらペットはどうしよう?」を話し合っておくことができます。 地域の動物愛護団体や、NPOのペット一時預かりサービスを調べておくだけでも、準備になります。
ペットをきっかけに会話する
「猫が心配だから様子を見に行く」というのは、介護的な関わりの入り口になることもあります。 ペットの話題は、親との会話のきっかけとしてとても使いやすい。
担当のケアマネジャーや包括支援センターに相談する
ペットの問題を「介護の話とは別」と思われる方もいるのですが、 生活全体に関わる話として、ケアマネジャーや包括支援センターに相談してみてください。 一緒に考えたり、地域の資源(使える支援やサービスのこと)につないだりできることもあります。
まとめにかえて、わたしの個人的な意見
これはあくまでわたし個人の考えです。
高齢者がペットを飼うことを「無責任」と批判するのは、簡単です。 でも、その人がどれほど孤独な日々の中でそのペットに支えられてきたか、想像してほしいと思います。
年をとるほどに、「わたしを必要としてくれる存在」は減っていきます。 足腰が弱り、できないことが増え、社会との接点が細くなる中で、 自分を頼ってくれる小さな命がそこにいるということの意味は、外から見るより遥かに大きい。
だから、責めるより先に考えてほしいのは、「その人が孤立しない仕組み」です。 地域のつながり、支援のネットワーク、家族の関わり。 それが整っていれば、「ペットを飼うこと」はもっとずっと自然に、丁寧に続けられるはずです。
介護の現場でそういう場面に関わるたびに、わたしはそう感じています。
最終的なご判断や個別の対応については、担当のケアマネジャーや地域の支援者にご相談ください。 「ペットのことなんて介護に関係ない」と思わずに、ぜひ話してみてください。
この記事が役に立ったら、ぽちっと教えてください
ありがとうございます!
現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。
この人について →