高齢者の熱中症、気づいたときには手遅れ?家族が知っておきたいこと
「最近暑いのに、親がぜんぜんエアコンをつけなくて…」 「水を飲んでって言っても、“いらない”って言い張るんです」
夏になると、こうした相談が増えてきます。
熱中症は誰にでも起こるものですが、高齢になると、若い人とは少し違った注意が必要になります。本人は「大丈夫」と思っていても、周りから見ると心配なことも少なくありません。
特に、離れて暮らしているご家族にとっては、「ちゃんとエアコンを使っているかな」「水分はとれているかな」と気になることも多いと思います。
では、なぜ高齢者は熱中症に注意が必要なのでしょうか。そして、家族はどんなところを見て、どう声をかければいいのでしょうか。
今日は、熱中症そのものの基本から、家族として知っておきたい対策まで、一緒に整理していきましょう。
熱中症とは
熱中症は、高温多湿な環境の中で、体温を調節するしくみがうまく働かなくなり、体の中に熱がこもってしまう状態のことです。
「熱中症」というと、真夏の炎天下で長時間過ごしたときになるイメージがあるかもしれません。でも、実際には気温だけでなく、湿度や風の有無、その日の体調など、いくつもの条件が重なって起こります。
そして、気をつけたいのが家の中にいるときでも熱中症になることがあるということです。外に出ていなくても、室温や湿度が高い状態が続けば、体に負担がかかります。
特に高齢の方の場合は、「外に出ていないから大丈夫」「家でじっとしているから大丈夫」とは限りません。
では、実際に熱中症になると、体にはどんな変化が起こるのでしょうか。次に見ていきましょう。
熱中症になると起こること
熱中症になると、めまいやふらつき、筋肉のこむら返り、頭痛、吐き気、体のだるさといった症状が出ます。
最初は「なんとなく調子が悪い」「少し疲れているだけ」と感じる程度のこともあります。暑い日にいつもより元気がない、食欲がない、動きたがらないといった様子があれば、熱中症の可能性も考えてみてください。
さらに症状が重くなると、大量の汗をかいたり、逆に汗が出なくなって体が異常に熱くなったり、意識がぼんやりしたりすることもあります。
特に注意したいのは、呼びかけへの反応がおかしい、自分で水分をとれない、まっすぐ歩けないといった状態です。こうした様子がある場合は、「少し休めば大丈夫」と様子を見続けず、早めの対応が必要になります。
高齢の方の場合、本人から「具合が悪い」と訴えるとは限りません。いつもと様子が違うことに、周りの人が先に気づくこともあります。
こんな人・場所は要注意
高齢の方は、もともと体温調節の力が弱くなっているうえに、暑さやのどの渇きにも気づきにくくなっています。特に注意したいのは、次のような場面です。
- 室内にいて動いていないとき……外に出ていなくても、風通しの悪い部屋や、日中の日差しで温まった部屋にいると熱中症になります
- 持病があるとき……心臓や腎臓の病気で水分を控えている方、糖尿病がある方は、体の調節がさらに難しくなります
- 一人で過ごす時間が長いとき……異変に気づいてくれる人がそばにいないため、発見が遅れやすくなります
「外に出ていないから大丈夫」ではなく、「家の中でも起こりうる」という前提で見ていくことが大切です。
なぜ高齢者は熱中症に気づきにくいの?
熱中症の予防で大事なのは「早めに気づく」ことなのですが、高齢者はこれが難しい場合があります。理由はいくつかあります。
- 体温調節の機能が下がっている……若い人は暑くなると汗をかいて体温を下げますが、加齢とともにこの機能が衰えていきます。暑いのに汗がうまく出ない、体の中に熱がこもりやすくなる、というイメージです
- 暑さやのどの渇きを感じにくくなる……「暑い」「のどが渇いた」という感覚そのものが、年齢とともに鈍くなっていきます。本人が「大丈夫」と言っていても、体の中ではすでに水分が足りていない、ということが起きやすいんです
- 夏でも「寒い」と感じることがある……暑さを感じにくくなる一方で、「寒い」と訴える方もいます。手足の先の血のめぐりが弱くなっていると、涼しい部屋で手足が冷たく感じられることがあり、それでエアコンを嫌がる方もいます。「もったいないから」だけでなく、こうした体の感覚のずれが理由になっていることも知っておくと、声のかけ方が変わってきます
- 夜間の温度差も見落としがち……昼間はエアコンをつけていても、夜は「もったいない」「寒い」とすぐ切ってしまう方が多いです。夜中から明け方にかけて気温が上がったとき、室温がじわじわ上がっていても眠っているから気づかない——こうした状況が実は危険です
「水を飲まない」問題、なぜ起きるの?
水分補給が大事なのはみなさんご存知だと思います。でも、親御さんに「もっと水を飲んで」と声をかけてもなかなか飲んでもらえない…というお悩みはよく聞きます。水筒を持たせても、結局中身が減っていない、ということも珍しくありません。
その背景には、こんな理由があることが多いです。
トイレが近くなるのがいや
水を飲むとトイレが増える。夜中に何度も起きるのがつらい。足腰が弱ってからは、トイレまで歩くのが大変。こういった理由から「意識的に水を控えている」方が少なくありません。
でも、これが脱水→熱中症のリスクを高めてしまうんですよね。
「飲み方」を変えると飲みやすくなる
一度にたくさん飲もうとするのではなく、少量をこまめに、1日を通して分散させることが大切です。「朝起きたらまずコップ1杯」「食事のたびに1杯」「おやつの時間に1杯」など、タイミングを決めると習慣になりやすいです。
また、水が苦手な方は麦茶・薄めたスポーツドリンク・みそ汁なども水分補給になります。「水じゃないといけない」というわけではないので、好みに合わせて工夫してみてください。
ただ、こうした工夫をしても、なかなか飲んでくれないこともあります。「水筒を持たせているのに全然減っていない」というのはよくある話で、工夫だけですっきり解決するとは限りません。そういうときは、無理に飲ませようとするより、次に挙げる「一緒に飲む」など、声のかけ方のほうを見直してみるのも一つです。
かかりつけ医については、親のかかりつけ医、どう選ぶ?介護がはじまる前に知っておきたいことでも詳しく取り上げています。
家族が今日からできる3つのこと
難しいことでなくていいです。続けられることを選びましょう。
1. 室温を「見える化」する
温度計・湿度計を居間や寝室に置いて、数字で確認できるようにしましょう。「暑いかどうか」を感覚ではなく、数字で判断できると安心です。室温28℃以上・湿度70%以上になったらエアコンをつける目安として伝えてみてください。
2. 声かけより「一緒に飲む」
「水飲んだ?」という声かけより、「一緒に飲もう」と隣に座って飲む方がうまくいくことがあります。離れて暮らしている場合は、電話のついでに「いま何か飲んだ?」と話題にするだけでも、意識づけになります。
3. 夜のエアコン設定を見直す
就寝中は「切タイマー」ではなく、28℃設定でつけっぱなしのほうが安全なことが多いです。「つけっぱなしはもったいない」と感じる方には、「熱中症で救急になるよりずっと安い」と伝えてみるのも一つの手です。「寒い」と言われる場合の工夫は、親がエアコンを嫌がる理由は?ケンカせず夏の室温を守る工夫でも詳しく取り上げています。
熱中症になってしまったら
顔が赤い、大量に汗をかいている、様子がおかしいと感じたら、まず涼しい場所(エアコンの効いた部屋や、風通しのよい日陰)へ移動させます。
そのうえで、衣服をゆるめて、首の周り・脇の下・足の付け根など、太い血管が通っている場所を冷やします。氷や冷たいタオルがあれば使ってください。
自分で水が飲める状態であれば、水分と塩分を補給します。経口補水液があれば理想的です。
自分で水が飲めない、呼びかけに反応がおかしい、意識がはっきりしないというときは、迷わず救急車を呼んでください。「大げさかな」とためらう必要はありません。救急車を呼ぶかどうか迷ったときの目安は、高齢の親に救急車を呼ぶタイミング。迷ったときに相談できる窓口がありますにまとめています。
まとめ:本人が「大丈夫」と言っても、周りが気にかける
高齢者の熱中症対策は、特別なことをするというより、普段の生活の中で小さな変化に気づくことが大切です。
エアコンを使えているか、水分をとれているか、いつもと変わった様子はないか。離れて暮らしている場合でも、暑い日には電話をしたときに少し確認するだけで、気づけることがあります。
そして、本人が嫌がることを無理に押しつけるのではなく、「どうしたらエアコンを使いやすいか」「どうしたら水分をとりやすいか」を一緒に考えてみてください。毎日のちょっとした工夫が、熱中症を防ぐことにつながります。
ここまでの話を、1枚にまとめました。
よくある質問
「熱中症警戒アラート」が出たら、何をすればいいですか?
環境省が発表する熱中症警戒アラートは、その地域の暑さ指数(WBGT)がかなり高くなると予想されるときに出されます。アラートが出た日は、不要不急の外出をできるだけ控え、エアコンを使って涼しい環境で過ごすことが呼びかけられています。高齢のご家族がいる場合は、その日だけでも様子をこまめに見に行く・電話をするなど、見守りを一段強めるタイミングと考えてみてください。
水分をとりすぎると、逆に体に良くないことはありますか?
心臓や腎臓に持病がある方は、水分の摂りすぎがむくみや体への負担につながることがあります。本文でご紹介した「こまめな水分補給」は、あくまで持病のない方を念頭にした一般的な目安です。持病があって水分量を制限されている方は、自己判断で増やさず、必ずかかりつけ医に確認してから調整してください。
経口補水液は、どれくらいの量を飲めばいいですか?
必要な量は、そのときの体調や持病の有無によって変わります。まずは商品パッケージに書かれている目安量を参考にし、量に迷うときや持病がある場合は、医師や薬剤師に確認してから飲むようにしてください。
体調の変化が気になるときや、水分補給の方法・エアコンの使い方について不安がある場合は、担当のケアマネジャーや、かかりつけの医師・看護師にぜひ相談してみてください。一人で抱え込まずに、周りを頼っていいんですよ。
この夏も、どうか無理せず乗り越えていきましょう。
※本文でふれた経口補水液・温湿度計は、このあとのリンクからご覧いただけます。合う・合わないには個人差もありますので、ご利用は自己責任でお願いします。
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現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。
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