在宅介護

認知症の親に言ってはいけない言葉と、やさしい言い換え

認知症の親に言ってはいけない言葉と、やさしい言い換え

「さっき言ったでしょ」「何度同じことを聞くの」——

つい口からこぼれてしまう、そのひと言。 悪気はないし、疲れているとなおさら出てしまいます。

でも、その言葉が認知症の人にとって深く傷つく体験になっていることは、あまり知られていないかもしれません。

今日は「やってしまいがちなNG対応」と「ちょっとだけ変えられる言い換え」を、一緒に見ていきます。


とも
とも
今日は認知症の方への声かけについて話しますね。「ついNG対応をしてしまった」「どう言えばよかったんだろう」と悩んでいる家族の方、多いんです。
こまり
こまり
NG対応って、たとえばどんなこと?わたし、ついカッとなったりしそうだけど……。
とも
とも
「さっき言ったでしょ」「もう忘れたの?」「何回聞くの」——こういう言葉です。気持ちはわかるんですよ、本当に。でも認知症の方には、こう言われると何倍もしんどく感じることがあるんです。

同じことを何度も聞く、その理由

穏やかに話しかける家族と高齢者のシーン

認知症になると、直前のことを覚えておく力(短期記憶)が低下します。 5分前に話したことが、きれいに抜けてしまう。これは意地悪でも怠けているわけでもなく、脳の病気によるものです。

大切なのは、「質問したこと自体を覚えていない」という点です。 本人の感覚では、その質問は「初めて聞く」んです。何度も繰り返しているという自覚はありません。

また、繰り返し質問する背景には、不安の強まりもあります。

  • 「今日は何曜日?」→ 時間の感覚が分からなくて怖い
  • 「ご飯はまだ?」→ 食べたことを忘れてしまって空腹感が続く
  • 「病院はいつ?」→ 予定が頭に留まらないから心配が消えない
  • 「帰る時間は?」→ 今いる場所や状況が把握できなくて落ち着かない

「うちも同じことを何十回も聞かれる」と感じている方、多いと思います。 それは、確認することで安心したいというサインでもあるんです。

こまり
こまり
えっ、聞いたこと自体を覚えていないの?じゃあ「また同じことを聞いてる」って気づいてもいないんだ……。
とも
とも
そうなんです。だから「わざとやっている」「試されている」ではなくて、本当に毎回が「はじめての質問」なんです。そこを理解できると、ちょっと気持ちが楽になることがあります。

家族がイライラするのは、当然のことです

ここで少し、家族の方の話をさせてください。

「何十回も同じことを聞かれてうんざりする」 「話が通じていない気がして、途方に暮れる」 「仕事や家事でへとへとなのに、また同じ質問……」

こういう気持ちになるのは、決しておかしくありません。 むしろ当然の反応です。

認知症の方への対応は、毎日・毎時間・何十回と続きます。 どんなに愛情があっても、消耗します。イライラします。限界もきます。

「怒ってしまった自分はひどい家族だ」と思わなくていいです。 それだけ一生懸命に向き合っているから、しんどくなるんです。

こまり
こまり
イライラしたり怒ったりしても、ダメな家族じゃないんだね……。ちょっとほっとした。
とも
とも
ダメじゃないです。ただ、「イライラしたまま、ずっと一人で続ける」のは危ないサインでもあります。後半でそのお話もしますね。

感情の記憶は残りやすい

認知症の方は、「言われたこと」は忘れても、感情の記憶は残りやすいと言われています。

何を言われたかは忘れても、「嫌な思いをした」「怖かった」「悲しかった」という感覚は、じわっと残るんです。

それが続くと、家族に会うと怯えるようになったり、介護拒否が強くなったりすることもあります。

だからこそ、「どうせ忘れるから何を言ってもいい」は大きな誤解。 声のトーンや雰囲気は、言葉の内容より長く残ることがあります。


よくあるNG対応と、言い換えのヒント

NG①「さっき言ったでしょ」「何度言えばわかるの」

これが一番多いパターンです。 同じ質問を何十回もされると、さすがに疲れてしまいますよね。気持ちはよくわかります。

でも本人は「言われた記憶がない」ため、責められた感覚だけが残ります。 自分が何を間違えたのかも分からないまま、ただ傷つくんです。

言い換えのヒント:

  • 「そうなんですよ、◯◯ですよ」と、初めて聞いたように答える
  • 答えるのがしんどい日は「う〜ん、どうだったかなあ」とやんわりかわす

「初めて聞いたふり」は演技ではなく、相手の安心を守るためのケアです。


NG②「違う!そんなこと言ってない」と真っ向否定

「財布がない、盗られた」「ご飯をまだ食べていない」——事実と違うことを言われると、つい「違います」と訂正したくなります。

でも否定されると、本人は「自分がおかしい」と思わされる体験になります。 事実を正しても、記憶が改まるわけではないので、傷つくだけになることが多いんです。

言い換えのヒント:

  • 「それは心配ですね、一緒に探してみましょうか」
  • 「お腹すきましたよね、何か食べましょうか」

事実より、気持ちに寄り添うのが先です。


NG③「なんでそんなことするの!」と感情的に怒る

失禁してしまった、食べ物を変なところにしまった、同じものを何個も買ってきた—— 驚いたり困ったりするのは当然です。

でも怒鳴られると、認知症の方は何をしたのか理解できないまま、ただ叱られた体験だけが残ります。 その恐怖感が、次の介護拒否につながることもあります。

言い換えのヒント:

  • ひと呼吸おいてから、穏やかに「ここに置いておきますね」と対処する
  • その場で怒るより、後で対策を考える(鍵をかける、物の置き場を変えるなど)

自分が怒ってしまったあとで落ち込まなくていいです。誰でもそうなります。ただ、続けないための工夫ができればいい。

こまり
こまり
つまり……「正しいことを言う」より「安心してもらう」のが大事ってこと?
とも
とも
まさにそれです!認知症ケアの基本は「正しさの押しつけより、安心感」なんです。こまり、ナイスまとめ。

声かけの3つの原則

NG対応の言い換えを見てきましたが、もう少し整理しておきましょう。 認知症の方への声かけには、大きく3つの原則があります。

① 否定しない 「違う」「そんなことない」「また言ってる」——こうした言葉は、本人の世界を否定することになります。まず「そうですね」「そうなんですね」と受け止めることから始めましょう。

② 急がせない 「早く」「さっさと」「何してるの」は、認知症の方にとって大きなプレッシャーです。 動作がゆっくりになるのは自然なことで、急かされると混乱が増すこともあります。

③ 安心感を先に伝える 「大丈夫ですよ」「一緒にいますよ」「心配しなくていいですよ」という言葉が、何より力になります。 内容より、トーンや表情が伝わることを忘れずに。

とも
とも
難しく考えなくていいんです。「否定しない・急かさない・まず安心を」この3つを頭の片隅に置いておくだけで、ずいぶん変わりますよ。
こまり
こまり
3つだけなら覚えられそう。「否定しない・急かさない・安心を先に」ね!

「正しい答え」より「安心できる関わり」

寄り添いながらゆったり過ごす親子の様子

ここで、この記事で一番伝えたいことをお話しします。

認知症の方は、正しい情報より、安心できる関わりを求めていることが多いのです。

「今日は何曜日?」と聞かれたとき、正確に「水曜日です」と答えることより、 「水曜日ですよ。今日はお天気もいいですね」と穏やかに返すことのほうが、 本人の心には届きやすい。

「ご飯はまだ?」に「さっき食べたでしょ」と答えるより、 「おなかすきましたね、少し何かつまみますか」と返すほうが、 安心感につながることが多いんです。

これは「ごまかす」のではなく、相手の感情に応えるということです。

認知症ケアの現場で大切にされているのは、「事実の正確さ」より「その人が今どんな気持ちでいるか」です。 相手が安心できる関わりを積み重ねることが、長い目で見たときに信頼関係を育てます。


「言い換え」より大事なこと・限界を感じたときは

言い換えのコツをお伝えしましたが、正直に言うと、毎回うまくできなくていいです。

家族介護は毎日のことで、疲れている日だってあります。 つい「さっき言ったでしょ」と言ってしまう日があっても、それで家族失格になるわけじゃない。

大事なのは、「怒ってしまった日の翌日、少しやさしくしてみる」くらいのサイクルです。 完璧なケアより、長く続けられるケアのほうがずっと大切です。

それでも、「もう限界かもしれない」と感じたときは、こんな方法を試してみてください。

  • その場を少し離れる:「ちょっとお水を取ってきますね」でも十分。数分その場を外すだけで、気持ちがリセットされることがあります。
  • 他の家族に交代する:一人で抱え込まずに、きょうだいや配偶者と交代する仕組みを作りましょう。
  • 外部サービスを活用する:デイサービスや訪問介護を使うことは、手を抜くことではありません。家族が休む時間を作ることは、ケアを長続きさせるために必要なことです。

「自分が全部やらなければ」と思わなくていいです。 介護は、チームでやるものです。


今日からできる声かけ3選

難しく考えず、今日から試せることを3つだけ。

① まず共感する 「そうですね」「そうなんですね」と、まず受け止める一言を置く。 正しいかどうかより、「話を聞いてもらえた」と感じてもらうことが先です。

② 否定より確認 「違う」ではなく「一緒に確認しましょうか」。 手帳やカレンダーを一緒に見るだけで、安心してもらえることがあります。

③ 怒ってしまったら、後でやさしく声をかける 「さっきは大きな声を出してしまってごめんね」と、後から穏やかに声をかけるだけでも関係は修復されます。 怒ったことより、その後の関わりのほうが大切です。


まとめ:今日からできる「小さな一歩」

とも
とも
今日のポイントをまとめると——認知症の方は「言われたこと」は忘れても「嫌な感情」は残りやすい。だから声かけのトーンや雰囲気はとても大切なんです。全部完璧にやろうとしなくていいので、「今日は一回だけ言い換えてみよう」くらいで試してみてください。
こまり
こまり
まとめると、こんな感じ!

・同じことを何度も聞くのは「わざと」じゃない、不安で聞いている
・イライラするのは当然。でも「感情の傷」は残りやすいから声のトーンに気をつける
・「さっき言ったでしょ」は責められた感覚だけが残るからNG
・否定しない・急かさない・安心を先に、の3原則
・正しい答えより、安心できる関わりが大事
・限界を感じたら、外部サービスや家族と分担しよう

……わたし、わりとうまくまとめられた気がする。えへへ。
とも
とも
完璧なまとめです!ありがとう、こまり。読んでくださった家族の方、少しでも参考になれば嬉しいです。しんどいなと感じたら、ひとりで抱え込まずに相談してみてくださいね。

声かけの工夫だけでは対応が難しいと感じるときや、認知症の進行について心配なことがあれば、担当のケアマネジャーや専門の医療機関にご相談ください。地域の包括支援センター(地域の相談窓口)でも、認知症に関する相談を無料で受け付けています。

― ✨ 最後まで読んでくれてありがとう ✨ ―
こまり
こまりより
🐾
とも 現役・主任介護支援専門員

現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。

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