在宅介護

「これって認知症?」と思ったら。MCI(軽度認知障害)で今できること

「これって認知症?」と思ったら。MCI(軽度認知障害)で今できること

「最近、親のもの忘れが増えてきた。でも、日常生活はなんとか送れてる。これって認知症なの? まだ違うの?」

その宙ぶらりんな不安、ひとりで抱えている方、多いと思います。

実はこの「どっちでもない」状態には、ちゃんと名前があります。 MCI(軽度認知障害) というのですが、名前がついているということは、そこに「できることがある」ということでもあります。

今日は、MCIとは何か、そして気づいたときに家族が前向きにとれる行動を、やさしく整理していきます。


MCIってなに?「認知症の一歩手前」をほぐしてみる

母娘が穏やかにお茶を飲む朝の風景
とも
とも
今日はMCI、つまり「軽度認知障害(けいどにんちしょうがい)」の話をしようと思います。聞いたことありますか?
こまり
こまり
MCI…? 認知症とはちがうの?
とも
とも
そう、ちがいます。MCIは、認知機能(記憶や判断のはたらき)が年齢に見合う範囲よりは少し落ちてきているけれど、日常生活への支障はまだ出ていない、という状態のこと。「認知症」と「ごく普通の老化」のあいだ、という位置づけです。

MCIの主な特徴をざっと整理すると、こんな感じです。

  • もの忘れが増えた(本人も「あれ?」と気づいている)
  • でも、料理・買い物・お金の管理など、日常的なことはできている
  • 家族や周囲からは「なんか最近、前より少し変かな?」と感じる程度

認知症と決定的に違うのは、「生活に大きな支障が出ていない」という点です。 認知症の場合、日常生活の中で繰り返し困りごとが起きてきます。でもMCIの段階では、そこまではいっていない。

もうひとつ、MCIでは本人自身が「あれ、最近忘れっぽいな」と気づいていることが多いのも、ひとつの特徴です。(認知症が進んでいくと、そのもの忘れの自覚が、だんだん薄れていくことがあります。)

実際、わたしのところにも「最近、母が同じ話を何度もするんです」とご相談に来られる娘さんがいます。でも、いざ暮らしぶりを伺うと、買い物も料理もちゃんとできていて、「今は、認知症というより、その少し手前の段階かもしれませんね」とお話しすることも、少なくありません。

国内の調査では、65歳以上のおよそ15%前後(6〜7人に1人くらい)にMCIが見られるとされています。決して珍しい状態ではありません。「うちの親だけ…」と感じる必要はなく、多くの人が「あのあいだの時期」を通っていきます。


「必ず認知症になる」わけではない

こまり
こまり
MCIって、そのままにしたら全員認知症になっちゃうの? こわい…
とも
とも
ここ、すごく大事なところなんですが——MCIの人が全員、認知症に進むわけではありません

国内外の研究によると、MCIと診断された方が1年後に認知症に移行する割合は、年間10〜15%程度と言われています。逆に言うと、年単位で見ても多くの方はすぐに認知症になるわけではなく、認知機能が改善したり、安定したりするケースも多いことが分かっています。

「MCIだから終わり」ではなく、「今できることをしていく時間がある」という見方ができます。

わたしが家族の方に伝えたいのは、この「余地がある」という部分です。 不安をゼロにしようというわけではないけれど、過度に怖がらなくていい、ということをまず知っておいてほしいのです。


今からできること。家族もいっしょに

父と息子が近所を並んで散歩する様子
とも
とも
では、MCIの段階で「今できること」を見ていきましょう。これは本人だけでなく、家族もいっしょにできることが多いです。
こまり
こまり
ちゃんとできること、あるんだね。聞かせて!

体を動かす習慣をつくる

現時点でもっともエビデンス(根拠)が積み重なっているのが、有酸素運動(ウォーキングなど)です。 週3回・1回30分程度の早歩きが、認知機能の維持や改善に関係するという研究が複数あります。

「毎日きっちり」でなくて大丈夫です。 家族といっしょにスーパーまで歩く、近所への買い物を歩いていく——そんな「いつもの生活の中に歩く時間を作る」だけでも、十分立派な一歩です。続けることに、意味があります。

人と話す時間を意識的に作る

社会的なつながり(人と会話すること)も、認知機能の維持に関わるとされています。

実際、現場では「配偶者を亡くされたあと」や「長年の仕事を辞められたあと」から、もの忘れが目立ってきた、という話をよく聞きます。本人のせいではありません。人と話す機会や、出かける用事、毎日の「役割」が、一度にすっと減ってしまうことが背景にあると言われています。

だからこそ、つながりや「やること」を保つのは、思っている以上に大切なんです。

「何か特別なことをしなければ」と思わなくて大丈夫。 家族との食事で話す、近所の方と立ち話をする、電話で誰かと話す。そういった「日常の中の会話」を意識的に続けることが、脳へのよい刺激になります。

認知症カフェ(地域の集いの場)に足を運んでみるのも、一つの方法です。まだMCIの段階から、気軽に顔を出せる場所として活用できます。 → 認知症カフェってどんな場所?家族が行くメリットと探し方

生活習慣を整える

睡眠・食事・血圧・血糖値などの管理が、脳の健康を支えると言われています。 「認知症だから」ではなく、体全体を整えるというイメージで取り組めると、プレッシャーが少なくなります。

高血圧・糖尿病・睡眠不足などは、認知機能に影響することがあるとされています。たとえば、血圧の薬をきちんと飲み続けることも、めぐりめぐって脳を守ることにつながります。かかりつけ医でこうした管理をしていくことも、MCIの段階では大切な一歩です。


本人は、自分からは言いにくい。だから家族の”気づき”が大切

とも
とも
ここで、ひとつ大事なことを。「なんだか最近、自分はおかしいかも」という不安は、実は本人がいちばん、人に言い出せないものなんです。
こまり
こまり
どうして言えないの? 不安なら、誰かに話せばいいのに…
とも
とも
だれにでも、自尊心がありますよね。「自分が変になってきた」なんて、家族にこそ知られたくない。だからこそ、ついとりつくろったり、ごまかしたりしてしまうんです。本人なりに、必死なんですよね。

だから、そばにいる家族が「あれ?」と気づいてあげることが、とても大切になります。 ただ、本人がごまかすぶん、いっしょに暮らしていても案外気づきにくいもの。そこで、さりげなく確かめられる方法を、ひとつ紹介します。

とも
とも
たとえば、新聞を読んだあとに「どの記事がおもしろかった?」と聞いてみる。ふつうの会話のようでいて、読んだ内容を覚えているか、関心がちゃんと動くかを、そっと確かめられます。テストっぽくないので、本人を傷つけずにすみますよ。
こまり
こまり
なるほど! 「ちゃんと覚えてる?」って問いつめるんじゃなくて、いつもの会話の中で、そっと見るんだね。

そうして「やっぱり気になるな」と感じたら、できるだけ早めに受診につなげてあげてください。 このとき大切なのが、本人の自尊心を傷つけない、声のかけ方です。

「しっかりしてよ」と責めたり、不安をあおったりするのは逆効果。 そうではなく、「これも”病気”のひとつなんだよ。早めに気づいて手を打てば、進みをゆるやかにできたり、元に戻っていく人もいるんだって」——そんなふうに、前向きな”事実”として伝えてあげると、本人も受け止めやすくなります。

「あなたがダメなわけじゃない。体の不調と同じだから、一緒にお医者さんに診てもらおう」。 そんなスタンスが、本人の重くなった腰を、そっと押してくれます。


「受診したほうがいいかな」と思ったら

こまり
こまり
でも、「MCIかどうか」ってどうやってわかるの? 病院に行かないとわからない?
とも
とも
そうなんです。「MCIかどうか」は、医療の場でしっかり評価してもらうことが大切です。自分で判断するのは難しいですし、他の病気が隠れていることもあるので。

こんなことが気になり始めたら、「物忘れ外来」や「認知症専門外来」への受診を検討してみてください。

  • 同じことを何度も聞く・言う回数が増えた
  • 日付や曜日の感覚がつかみにくくなってきた
  • 以前は普通にできていたことに時間がかかるようになった
  • 本人が「最近もの忘れが増えた」と気にしている

ただ、親が「病院には行きたくない」と言うこともよくあります。 受診を促すときの声かけについては、こちらの記事も参考にしてみてください。 → 認知症かもしれない親が病院を嫌がる…受診の声かけと物忘れ外来のこと


まとめ:今できることが、ちゃんとある

とも
とも
今日の話を、こまりにまとめてもらえますか?
こまり
こまり
うん。MCIって、「認知症とふつうのあいだ」にある状態で、日常生活はまだ送れてる、ってことなんだよね。全員が認知症になるわけじゃないし、改善したり安定したりする人もいる。だから「終わりだ」じゃなくて、「今できることをやっていく」時間がある、ってこと。運動、会話、生活習慣の見直し、気になれば物忘れ外来へ。そういう選択肢が、ちゃんとあるんだね。
とも
とも
完璧です。「こわい」と止まってしまわず、「今できることから」と動いていけるといいなと思っています。家族の方も、無理しすぎずに。

「うちの親、もしかして…」と気になったとき、一人で抱え込まないでください。 受診の判断や今後のサポートについては、主治医や担当のケアマネジャー(介護支援専門員)にご相談ください。専門家といっしょに考えることで、方向が見えやすくなります。

また、MCIや認知症と診断されても、失われないものはたくさんあります。 → 認知症になっても失われないもの8選 家族に知ってほしいこと

「宙ぶらりん」な不安を感じているときこそ、ひとりで答えを出そうとしなくていいんです。 このブログも、ふと立ち寄れる場所でありたいと思っています。

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とも 現役・主任介護支援専門員

現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。

この人について →

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