介護費用が高くて不安な方へ。高額介護サービス費の仕組みを解説
「毎月の介護費用、こんなにかかるとは思わなかった…」 「いったいいつまで続くんだろう、と不安で夜も眠れない」
そう感じている方、少なくないと思います。 介護はある日突然はじまって、費用のことを落ち着いて調べる時間もないまま請求書が届いたりしますよね。
今日お話しする「高額介護サービス費」は、そんな家族の方にぜひ知っておいてほしい制度のひとつです。 知っているかどうかで、毎月の負担がずいぶん変わることもあります。一緒に確認していきましょう。
高額介護サービス費とは
介護保険サービスを利用すると、原則として費用の1〜3割が自己負担(所得に応じて変わります)となります。 サービスをたくさん使う月は、この自己負担がまとまった金額になることもあります。
高額介護サービス費は、1か月間の自己負担の合計が一定の上限額を超えた場合に、超えた分が払い戻される制度です。 市区町村が運営する介護保険の仕組みの中に組み込まれています。
対象になる人は?
介護保険サービスを利用している方であれば、所得や年齢に関係なく対象になりえます。 ただし、月の自己負担の上限額は、世帯の所得によって異なります。
上限を超えるケースが多いのは、以下のような場合です。
- 施設サービス(特別養護老人ホームや老健など)を利用している
- 在宅で複数のサービスをたくさん使っている
- 要介護度が高く、サービス利用量が多い
自己負担の上限額はいくら?
上限額は世帯の所得に応じて区分が分かれています。 おおまかな目安を表にまとめます(2024年8月以降の区分・金額)。
| 区分 | 対象のイメージ | 月の上限額(目安) |
|---|---|---|
| 現役並み所得者(Ⅲ) | 課税所得690万円以上 | 140,100円 |
| 現役並み所得者(Ⅱ) | 課税所得380万円以上690万円未満 | 93,000円 |
| 現役並み所得者(Ⅰ) | 課税所得145万円以上380万円未満 | 44,400円 |
| 一般 | 市区町村民税課税〜課税所得145万円未満 | 44,400円 |
| 世帯全員が住民税非課税(Ⅱ) | 非課税世帯(本人の合計所得+年金収入が80万円超など) | 24,600円 |
| 世帯全員が住民税非課税(Ⅰ) | 非課税世帯(本人の合計所得+年金収入が80万円以下など) | 15,000円 |
※ 上限額や区分の詳細は制度改正によって変わることがあります。正確な金額はお住まいの市区町村にご確認ください。
対象になる費用・ならない費用
対象になるもの
- 居宅サービス(訪問介護・デイサービス・訪問看護など)の自己負担分
- 施設サービス(特別養護老人ホーム・老健・介護医療院など)の介護費用の自己負担分
- 地域密着型サービス(小規模多機能型居宅介護など)の自己負担分
対象にならないもの(ここに注意!)
- 食費・居住費(部屋代):施設や短期入所サービスでの食事・滞在費は対象外
- 日常生活費:理美容代・洗濯代・個人的に使う消耗品など、日常生活に要する費用
- 福祉用具購入費・住宅改修費:福祉用具の購入費や住宅改修費は対象外。ただし福祉用具の貸与(レンタル)の利用料は対象になります
- 介護保険の対象外のサービス:保険外の上乗せサービス、自費サービスなど
世帯合算という便利な仕組みもあります
同じ世帯に介護保険サービスを利用している家族が複数いる場合、世帯内の自己負担額を合算して上限額と比較できます。
たとえば、夫と妻の両方が介護サービスを使っていて、それぞれの負担はそれほど多くなくても、2人分を合算したら上限を超えることがあります。 その場合は、超えた分が世帯全体に払い戻されます。
ひとつ補足しておくと、ここでいう「世帯」とは介護保険上の世帯のことです。住民票が同じ住所にある方が同一世帯として扱われます。別居している親の分と、離れて暮らす子の分を合算することはできませんので、ご注意ください。
「ひとり分では上限に届かなかったから関係ない」と思っている方も、同居の家族が複数人介護サービスを使っている場合は、一度確認してみる価値があります。
申請方法と支給のタイミング
はじめてのときは申請が必要
高額介護サービス費は、基本的に初回だけ申請書を提出すれば、その後は対象になる月に自動的に指定口座へ振り込まれる仕組みです。 ただし、自治体によって取り扱いが異なる場合もありますので、詳細はお住まいの市区町村の窓口でご確認ください。
市区町村(お住まいの介護保険担当窓口)から申請書類が郵送されてくる場合もありますが、届かない場合は窓口やホームページで入手できます。
支給までの流れ
- サービス利用(その月)
- 利用者が自己負担分を支払う
- 市区町村が自己負担額を確認・計算
- 振込通知が届き、指定口座に払い戻される
支給のタイミングは市区町村によって異なりますが、サービスを利用した月から3か月前後が目安です。 「いつ入金があるのかな?」と気になる場合は、担当窓口に確認するのが確実です。
さかのぼって申請できる期間は2年間
「申請し忘れていた」「そんな制度があるとは知らなかった」という場合でも、サービスを利用した月の翌月1日から2年間はさかのぼって申請できます。 もし心当たりがある方は、早めに窓口へ相談してみてください。
よくある勘違いと確認ポイント
「施設費用をまるごと計算してしまう」
施設に入居すると「施設代」がひとまとめに請求されますが、そのうち食費・部屋代は高額介護サービス費の対象外です。 「全額戻ってくる」と思っていると、実際の払い戻し額との差に戸惑うことがあります。請求書の内訳を確認してみてください。
「申請しなくても自動で入ってくる」と思っている
多くの自治体では初回の申請が必要です。申請書が届いたまま放置されている、というケースもときどきあります。 もし「申請したかどうか分からない」という場合は、担当のケアマネジャーか市区町村の窓口に確認してみましょう。
「医療費との合算はできない?」
医療費と介護費用を合算して軽減できる「高額医療・高額介護合算療養費制度」という別の制度もあります。 医療費も多くかかっている方は、こちらもあわせて確認してみてください(1年間の合算が対象で、申請窓口は医療保険者になります)。
困ったときの相談先
- お住まいの市区町村の介護保険担当窓口:申請書の入手・支給状況の確認
- 地域包括支援センター(地域の高齢者相談窓口):制度の説明・申請のサポート
- 担当のケアマネジャー:「うちは対象になるか」「申請はどうすればいい?」という相談にも乗ってもらえます
「こんな細かいことを聞いていいのかな」と遠慮しなくて大丈夫です。 制度の活用をサポートするのも、ケアマネジャーの仕事のひとつですから、気軽に声をかけてみてください。
まとめ
高額介護サービス費のポイントをまとめます。
- 月の自己負担が上限額を超えたら、超えた分が払い戻される
- 上限額は世帯の所得区分によって異なる(15,000円〜140,100円)
- 食費・居住費・日常生活費は対象外
- 初回の申請が必要(以降は多くの自治体で自動振込)
- 過去2年分はさかのぼり申請できる
- 同一世帯の家族分は合算できる(別居家族との合算は不可)
- 医療費との合算制度(高額医療・高額介護合算)も別途あり
「そういえば申請したっけ?」と少しでも気になったら、早めに確認することをおすすめします。 手続きが少し面倒に感じても、毎月の負担が軽くなる可能性があるので、ぜひ一歩踏み出してみてください。
こんな方はぜひ一度確認を
「うちは関係ないかな…」と思っていても、意外と対象になるケースがあります。 以下に当てはまる方は、一度確認してみる価値があります。
特別養護老人ホームや老健などの施設サービスを利用している方。 施設入居中は毎月まとまった介護費用の自己負担が発生することが多く、上限額を超えやすい状況になります。食費・居住費は対象外ですが、介護サービス費の自己負担分だけでも上限を超えるケースは少なくありません。
デイサービスや訪問介護など、在宅で複数のサービスを多く利用している方。 複数のサービスを組み合わせて使っている場合、月の自己負担が積み重なって上限を超えることがあります。「ひと月にこれだけかかっているな」と感じているなら、一度計算してみることをおすすめします。
同居の家族に、介護サービスを利用している方が複数いる場合。 おひとりの負担では上限に届かなくても、同一世帯の家族分を合算すると対象になることがあります。夫婦ふたりともサービスを使っている、といったケースは特に確認の価値があります。
最終的なご判断や手続きの詳細については、担当のケアマネジャーや、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口にご相談ください。制度の内容は改正されることがありますので、最新情報は各窓口でご確認いただくようお願いします。
現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。
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