こまりが教えてくれたこと
こまりと暮らしはじめて、気づいたら「ありがとう」って言いたくなる瞬間が増えていました。
特別なことは何もしていない。ただ、そこにいるだけ。 それなのに、なんだか少し、毎日が柔らかくなった気がしています。
今日は、そんな話を書かせてください。
こまりが来た日のこと
当時のわたしは、「来週のあの件はどうしよう」「来月のケアプランの見直し、間に合うかな」と、 頭の中がいつも少し先のことでいっぱいでした。
そんな部屋に、こまりはやってきた。 そしてごはんを食べ、くるんと丸くなって、あっというまに寝た。
なんだかその姿を見て、ちょっとだけ笑えたんですよね。 笑えたことで、少し息ができた気がしました。
急がなくていいって、こまりが教えてくれた
仕事をしていると、どうしても「早く」「もっと」「次は」という言葉が頭の中を走り続けます。
介護のことも、「今のうちに準備しておかないと」「将来どうなるだろう」と、 まだ来てもいない時間のことを心配してばかりいた気がして。
そんなある日、ふとリビングを見たら、こまりが窓のそばで昼寝をしていました。
陽が差し込んで、ほこりがゆっくり光の中を漂って。 こまりはお腹を少し上に向けて、手足をだらんと伸ばして、ただただ寝ていた。
「あ、こんなに堂々と昼寝していいんだ」
なんだかそれを見て、ふっと肩の力が抜けたんですよね。
急がないといけないことは、確かにある。でも、全部を一度に抱えなくてもいい。 こまりの寝顔が、なんとなくそう言っているように見えました。
しばらく経って、今度は窓の外をじっと眺めているこまりを見かけました。 何を見ているのか分からない。鳥かな、虫かな、ただの影かな。 でもとにかく、完全に「今ここ」にいる。
過去のことも、明日のことも、たぶん何も考えていない。
「今この瞬間を大事にする」って、言葉にすると当たり前に聞こえるんですが、 実際にやろうとすると、意外とむずかしい。
こまりを見ていると、それを全然力まずやっているように見えて、素直にうらやましいと思います。
甘えることを、恥ずかしいと思わなくなった
こまりは、甘えたいときに全力で甘えてきます。
「かまって」と思ったら膝に乗ってくるし、撫でてほしいときは顔をぐいっとすり寄せてくる。 遠慮とか空気を読むとか、そういうのが一切ない。
最初は「また来た」と笑っていたんですが、気づいたらわたしのほうがその時間を待つようになっていました。
頼ることって、弱いことじゃないよなあ、と。
仕事でも、「自分でなんとかしないと」とつい一人で抱え込んでしまいがちなんですが。 こまりを見ていると、「助けて」って言えるほうが、お互いに気持ちいいんじゃないかなと思えてきます。
甘えることが上手な人って、まわりも実は助かっていることが多い気がします。 「頼ってもらえた」という感覚は、頼った側だけじゃなくて、頼られた側にも何かを与えてくれる。
こまりが膝に乗ってきたとき、わたしも確かにほっとしているから。
幸せって、意外とそのへんにあった
こまりにはお気に入りのベッドを買ったことがあります。
ふかふかで、猫ちゃん用に設計された、なかなか良いやつ。 レビューを読んで、サイズを測って、「これにしよう」と選んだ自信作でした。
……こまりが気に入ったのは、その横に置いてあった紙袋でした。
袋の中にすっぽり入って、ご満悦。
あれだけ調べて選んだのに、と最初は笑えなかったけれど、しばらくしてじわじわおかしくなってきて。
「幸せって、こっちが用意したものとは限らないんだよなあ」
なんとなく、そんなことを思いました。
先のことを計画したり、準備したりするのは大事。 でも、気づいたら目の前にあったものが一番よかった、なんてことも人生にはあるかもしれない。
ちゃんとしたベッドよりも紙袋が好きな猫を見ていると、「正解」って案外自分で決めていいんだな、という気になってきます。
チュールを見せた瞬間の、あの目の輝き。 駆け寄ってくる足音。 一心不乱になめる姿。
その様子は、こちらでどうぞ。
「好きなものを前に、全力で喜ぶ」。
シンプルだけど、大人になるとだんだん忘れていく感覚かもしれません。
家族が増えるということ
こまりが来てから、家の中の笑いが増えました。
「こまりがまた紙袋で寝てる」 「こまりが水飲むふりしてぼーっとしてた」 「こまり、チュール見せたら瞬殺だった」
どうでもいい話なんですよ、正直なところ。 でも、そういう話ができる時間が、なんだかとても大切に思えてきて。
それまでのわたしは、帰宅してから仕事のことや介護のことが頭から離れなくて、 「今日もいろいろあったな」とどこかずっと引きずっていたような気がします。
でも、こまりがいると、玄関を開けた瞬間から空気が変わるんですよね。 「おかえり」を言葉では言わないけれど、のそのそ近づいてきて、しれっと足元に座る。
一人でいても、「帰ったらこまりがいる」というだけで、足が少し軽くなる。
家族が増えるって、こういうことなんだな、と思いました。
笑える話題が増えること。 帰る場所がもう少し温かくなること。 「あ、生き物がいる」と感じる、あの安心感。
こまりへ、ありがとう
こまりは何も「教えよう」と思っていないと思います。
ただ寝て、ごはんを食べて、窓の外を見て、たまにチュールをねだって、甘えたいときに甘えてくる。
それだけなんですよね。
でも、そのただそれだけの毎日が、わたしにはずいぶんといろんなことを気づかせてくれました。
急がなくていい。頼っていい。幸せは、今ここにある。 正解は、自分で決めていい。
特別なことは何もしていないのに、こまりは毎日、そんなことをこっそり教えてくれている気がします。
猫と暮らすことで、こんなに心が変わるものだとは思っていませんでした。 「動物を飼う」というより、「一緒に暮らしている」という感覚が近くて。 わたしがこまりの暮らしを支えているというより、互いに影響し合っているような。
そう感じるようになったのは、きっとこまりが「今ここ」にいつもいてくれるからだと思います。
まあ、そんなに急がなくてもいいか。
今日もこまりがそこにいる。それだけで、十分いい一日だなと思います。
現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。
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