親が食べなくなった…無理に食べさせなくていい理由
「最近、ほとんど食べてくれなくて…」 「無理やり食べさせた方がいいのかな」
こんなふうに悩んでいる方は、本当に多いんです。 食べてくれない親を前にすると、何か自分のせいのような気持ちになってしまうこともありますよね。
今日は、食事量が減ることの理由と、「食べさせなければ」という焦りや罪悪感を少しだけほぐすお話をしていきます。
「食べさせなければ」と焦ってしまう家族の気持ち
食べることって、生きることの基本ですよね。 だからこそ、親が食事を残すようになったり、「いらない」と言いはじめたりすると、家族はとても心配になります。
「もっとおいしいものを作れば食べてくれるかな」 「わたしの介護が足りないのかな」
そんなふうに、自分を責めてしまう方もいます。 でも、食事量が減る理由は、料理の腕でも介護の仕方でもない場合がほとんどです。
現場でよく聞くのが、こんなお声です。
- 「昨日は食べたのに、今日は一口も食べなかった」
- 「前まで大好きだったものも、急に食べなくなった」
- 「ゼリーなら口にするけど、ご飯は全然ダメで」
「昨日できたのに今日はダメ」という波があると、家族はとまどってしまいますよね。 でも、これは珍しいことではないんです。後ほどその理由もお伝えします。
高齢者が食べられなくなる理由
食欲が落ちる原因は、いくつか考えられます。
体そのものの変化
年を重ねると、基礎代謝(体が必要とするエネルギー量)が少なくなります。 動く量も減るので、そもそもお腹がすきにくくなるんです。
胃腸の働きも若いころよりゆっくりになるので、「まだ消化しきれていない」という状態が続くことも。
病気や薬の影響
慢性疾患(心不全・腎臓病・がんなど)は、食欲を下げることがあります。 また、複数の薬を飲んでいる場合、その副作用で吐き気や口の苦みが出ることも。
「最近急に食べなくなった」と感じるときは、薬の種類や量が変わったタイミングと重なっていないか、一度確認してみてください。
口の中の問題
義歯(入れ歯)が合わなくなっていたり、口の中が乾燥していたりすると、噛む・飲み込む動作がつらくなります。 食べたくない、というより食べにくいために食が進まないケースも少なくありません。口の中の状態が気になる方は、「口腔ケアって何をすればいい?義歯が合わない・嚥下の不安を整理」もあわせてご覧ください。
看取り期の自然な経過
体が衰えていく過程では、内臓が栄養を受け取る力自体が落ちていきます。 これは病気というよりも、体が自然にそういう段階に入っていることです。
「食べなくなったから弱っている」というより、「弱っているから食べられなくなっている」という順番のことが多い。この違いは、とても大事なポイントです。
無理に食べさせると、かえってつらくなることも
気持ちから食べてもらおうとするのは自然なことです。 でも、無理に食べさせようとすることで起きることも知っておいてほしいんです。
誤嚥(ごえん)のリスクがあります。 誤嚥とは、食べ物や飲み物が気管に入ってしまうこと。飲み込む力が弱くなっているときに無理に食べさせると、肺炎につながることがあります(誤嚥性肺炎といいます)。
また、体が受け付けていないときに無理に食べると、吐き気や腹痛など、かえって苦しい思いをさせてしまうことも。
食べることが「つらいこと」になってしまうのは、お互いにとって悲しいですよね。
食べられるものを、少しずつ。それでいい
食事量が減ったとき、「普通の食事」にこだわらなくていい、というのがわたしの正直な気持ちです。
ご飯・おかず・汁物、と三食そろっていなくても、体が受け付けられるものを口にできていることに意味があります。
たとえば、こんなものが食べやすいと感じる方は多いです。
- ゼリー・プリン・アイスクリーム・ヨーグルトなど、のど越しのよいもの
- 少量でも好きな味のもの(甘いもの、しょっぱいもの、好みに合わせて)
- 介護食コーナーなどで売っている高カロリーゼリーや栄養補助飲料
高カロリーゼリーや栄養補助食品は、少量でも栄養を摂れるように作られたもので、ドラッグストアや介護用品店でも購入できます。主治医や栄養士に相談しながら活用することもあります。
ただ、大切なのは本人が「食べたい」と思えるかどうかです。 体が必要としていないときに無理に摂取させるものではなく、あくまで「食べられそうなときの選択肢」として知っておく、くらいの感覚でいいと思います。
「食事というより、口の楽しみ」として捉えてみると、少し気持ちが軽くなることがあります。
水分だけはなるべく確保したい、という場合は、主治医や訪問看護師に相談してみてください。
主治医や訪問看護師に相談する目安
食事量の変化は、必ずしもすぐに医療的な対応が必要なわけではありません。 ただ、以下のようなことが重なるときは、早めに相談してみてください。
- 数日間ほとんど何も食べられていない・水も飲めていない
- 急に食べなくなった(それまでは食べていたのに)
- むせが増えた、飲み込むのをひどく苦しそうにしている
- 意識がぼんやりしている、呼びかけへの反応が薄くなってきた
在宅で訪問診療(自宅に来てくれるお医者さん)や訪問看護を利用している場合は、次の訪問を待たずに電話で相談できます。 「こんなことで電話していいのかな」と遠慮しなくて大丈夫です。それが訪問看護師の仕事のひとつです。
家族が自分を責めなくていい理由
最後に、これだけは伝えたいんです。
食べてもらえなくても、それはあなたのせいじゃない。
料理が下手だから、介護が足りないから、ではありません。 体がその段階に入っているということは、誰がどう頑張っても止められることではないんです。
「もっとできることがあったんじゃないか」と後悔しそうになったとき、どうかこう思い出してほしい。
毎日そばにいて、食べてほしいと思い続けたこと、それ自体がすでに十分な愛情です。
まとめ
- 高齢者が食べられなくなるのは、体の自然な変化によることが多い
- 食べられる日・食べられない日を繰り返すこともある。昨日と違っても落ち込まなくていい
- 無理に食べさせると誤嚥や体の負担につながることがある
- 「普通の食事」にこだわらず、ゼリー・アイス・栄養補助食品など食べやすいものを選択肢に
- 大切なのは量よりも、食べる楽しみ・安心できる時間・家族がそばにいること
- 急激な変化や水分が取れないときは、主治医・訪問看護師へ相談を
- 食べてもらえなくても、それは家族のせいではない
食事量の変化についての判断は、ご本人の状態によっても大きく異なります。 気になることは、担当のケアマネジャーや主治医、訪問看護師にぜひ相談してみてください。 「こんな小さなこと」と思わず、声をかけてもらえると、専門家側もとても助かります。
あなたが今日もそばにいてくれることが、きっと伝わっています。
現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。
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