自宅で看取るという選択肢 在宅看取りって実際どうなの?
「家で死にたい」と言われたとき、家族はどんな顔をすればいいのか、わからなくなることがあります。
「そんなこと言わないで」と言いたい気持ちも、「でも、叶えてあげたい」という気持ちも、両方が本当だと思います。
在宅看取りは、決して特別な人や特別な家族だけの話ではありません。今日は、その「実際のところ」を一緒に考えてみましょう。
在宅看取りとは
在宅看取りとは、病院ではなく自宅で最期まで過ごし、自宅で亡くなることを選ぶことです。
「自宅で死ぬなんて、準備が大変そう」「何かあったらどうするの」と思う方も多いと思います。でも、適切なサポートがあれば、多くの方が自宅で穏やかに最期を迎えることができています。
大切なのは、本人の意思と、家族の気持ちと、支えてくれる専門家がそろうこと。その3つが揃うと、在宅看取りは「現実的な選択肢」になってきます。
支えてくれる人たち
在宅看取りは家族だけで抱えるものではありません。複数の専門職がチームで関わります。
訪問診療の医師
定期的に自宅に来てくれるお医者さんです(訪問診療)。状態を見ながら薬の調整をしたり、急変時に対応してくれたりします。看取りを見据えた在宅医と関係をつくることが、在宅看取りの大きな柱になります。
訪問看護師
看護師が自宅に来て、体の状態を確認したり、痛みのケアや家族へのアドバイスをしてくれます。「何かあったとき、まず相談できる人」として心強い存在です。
ケアマネジャー
介護保険のサービス全体をコーディネートする人です。訪問診療・訪問看護・ヘルパーなど、必要なサービスをつなぐ役割を担います。ケアマネジャーが在宅看取りに慣れているかどうかも、大切なポイントです。
ケアマネジャーの役割について詳しくは、ケアマネジャーって何をしてくれる人?はじめての相談の前に知っておきたいこともあわせてご覧ください。
訪問介護・その他のサービス
体を拭いたり、食事の介助をしたり、日常的な介護の部分はヘルパーさんにも頼めます。家族の負担を減らすために、使えるサービスは積極的に活用していきます。
在宅看取りのいいこと
住み慣れた場所で過ごせる
ご本人にとって、慣れ親しんだ家の匂い、部屋の景色、窓から見える庭……そういったものが、最期の日々の安心感につながることがあります。病院では制限されることも、自宅ならできることも多いです。
家族と自然に過ごせる
面会時間の制限もなく、ペットがそばにいることも、孫が来ることも、好きな食べ物を口にすることも。病院では叶えにくいことが、自宅ならしやすくなります。
「最後の時間をどう過ごしたか」は、家族にとっても大きな意味を持ちます。
大変なこと、正直に
在宅看取りに向き不向きはあります。良いことだけではなく、大変な部分もきちんとお伝えしたいと思います。
家族の身体的・精神的な負担
日常の介護を担う家族には、体の疲れと気持ちの重さが積み重なっていきます。「自分が介護しているから」という責任感が、休むことへの罪悪感になってしまうこともあります。
レスパイトケア(介護から一時的に離れて休む機会)や、ヘルパーさんへの依頼をうまく組み合わせることが大切です。
急変への不安
夜中に状態が変わったら、どうすればいいのか。そう不安になる気持ちは当然です。在宅看取りを支える医師や訪問看護師は、急変時の連絡先と対応手順を事前に共有してくれます。「救急車を呼ぶかどうか」「どのタイミングで連絡するか」も、あらかじめ話し合っておくことができます。
最初から「完璧に準備できる」わけではありませんが、チームと一緒に少しずつ整えていけます。
元気なうちに、聞いておく——人生会議のこと
在宅看取りで、いちばんの土台になるのは「本人が、どうしたいか」です。でも、いざ最期が近づいたときには、本人が言葉で伝えられなくなっていることも、少なくありません。
だからこそ、話せるうち・元気なうちに、「どこで、どんなふうに過ごしたいか」を聞いておくこと。それが、あとで家族をいちばん支えてくれます。
こうした話し合いを、「人生会議」(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)と呼びます。本人・家族・医療や介護の人たちで、これからのことをくり返し話し合っておく取り組みのことです。
一度で決めきらなくていいし、気持ちは変わってもいい。何度でも、話していいんです。
「本人が、こう言っていたから」。その一言が、いざというときの家族の迷いを、そして「これでよかったのかな」という後悔を、そっと軽くしてくれます。
「一度決めたら最後まで」じゃなくていい
在宅看取りを選んだら、もう後戻りできない——そう身構えてしまう方が、少なくありません。でも、そんなことはないんです。
途中で「やっぱり家では難しい」と感じたら、病院や施設、緩和ケア病棟に移ることもできます。それは「失敗」でも「あきらめ」でもありません。その時の本人と家族にとって、いちばん安心できる場所を、選び直しただけです。
本人の症状、家族の体力、そして気持ち——状況は、日々変わっていきます。だから、一度決めたことを途中で見直すのは、ちっともおかしいことじゃありません。
「もう限界かもしれない」と思ったら、ケアマネジャーや訪問診療の先生に、そのまま伝えてください。誰も責めたりしません。一緒に、その時いちばんいい形を、また考えていけます。
最初の決断に、ずっとしばられなくて、いいんです。
まとめ
在宅看取りは、決して特別な家族だけの話ではありません。一方で、全員に向いているわけでもない。大切なのは、選択肢として知っておくこと、そして家族で話し合えること。
もし「家で最期を迎えたい」と言われて戸惑っているなら、まずは担当のケアマネジャーや、かかりつけ医に相談してみてください。
また、看取りをめぐる家族の心の揺れについては、悩んで、迷って、みんなで話しあって決めたことだから… 【看取りのはなし】も、読んでみてください。同じように悩んだ方の言葉が、少し心を楽にしてくれるかもしれません。
最終的なご判断は、担当のケアマネジャーや訪問診療医などの専門家にご相談ください。 この記事は情報提供を目的としており、個別の医療判断や判断の代わりになるものではありません。
現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。
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