在宅介護

老健とは?特養との違いと使うタイミング

老健とは?特養との違いと使うタイミング

「老健って、特養と何が違うの?」

「入院の後、すぐ家に帰れるか不安で…その間ってどうすればいいんだろう」

こんな気持ちで検索してきた方は、多いと思います。「老健」「特養」という言葉は耳にするけれど、いざ調べようとすると似たような説明が並んでいて、余計に混乱してしまいますよね。

今日は、老健と特養の違いを整理しながら、どんな状況でどちらが向くのか、やさしくほぐしていきます。


とも
とも
今日は「老健」について話しますね。正式な名前は「介護老人保健施設」といいます。
こまり
こまり
老健って、特養とどう違うの?名前も似てるし、どっちも施設でしょ?
とも
とも
「帰るための施設」って考えると、分かりやすいですよ。老健は、自宅に戻ることを目標に、リハビリや医療のケアを続ける場所なんです。
こまり
こまり
えっ、ずっといる場所じゃないの?
とも
とも
そうなんです。原則として「一時的に使う」イメージです。特養とはそこが大きく違います。順番にお話しますね。

老健(介護老人保健施設)とは

リハビリに取り組む高齢女性と理学療法士

病院から「来週退院です」と言われた。でも、歩くのもトイレもまだ不安。家で介護できる自信がない。特養に申し込んでも、すぐには空かない——。

その”あいだ”を埋めるのが、老健です。

老健は、病院と自宅の間をつなぐ「中間施設」 です。

たとえば、骨折や脳梗塞などで入院して、急性期(病気や怪我が落ち着く治療の期間)が終わった後。「退院してOKだけど、すぐに家で一人ではきつい」という状態のときに、老健でリハビリを続けながら在宅復帰を目指す、という使い方がもっとも多いパターンです。

老健には医師や看護師が配置され、リハビリの専門職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のいずれか)も置かれます。医療とリハビリが一体になったケアを受けられるのが特徴で、他の介護施設と比べると手厚い体制です。

ただし、3つのリハビリ職すべてが揃っているとは限りません。たとえば言語聴覚士(飲み込みや言葉のリハビリを担当)がいない施設もあります。「飲み込みのリハビリをしっかりしてほしい」など希望がある場合は、どの専門職がいるかを事前に確認しておくと安心です。

入居の期間は、原則として3か月ごとに在宅復帰できるかどうかの見直しが行われます。「ここに住み続ける」という施設ではなく、あくまで「帰るための準備をする場所」という位置づけです。


特養との違いをやさしく整理する

こまり
こまり
特養は「生活の場」って聞いたことがある気がする。老健と何が違うの?
とも
とも
そのとおりです。一番大きな違いは「目的」ですね。特養は「ここが生活の場」、老健は「帰るための準備の場」、と分けて考えるといいですよ。

おおまかに比べると、こんなイメージです。

老健(介護老人保健施設)特養(特別養護老人ホーム)
目的在宅復帰を目指す生活の場・長期入所
入居期間原則3か月ごとに見直し(一時的)長期・原則退所なし
医療・リハビリ医師常駐・リハビリ充実嘱託医・日常的な医療中心
入居条件要介護1以上原則、要介護3以上(要介護1・2でも特例入所の場合あり)
入居しやすさ比較的早めに入れることが多い待機期間が長いことが多い

特養は「もう自宅での生活が難しくなった方が、長く生活する場所」として作られています。一方、老健は「いまは難しいけれど、リハビリを経れば自宅に戻れる可能性がある方」が対象です。

どちらが良い・悪いではなく、その方の状態や目標に合わせて選ぶものです

そして、意外に思われるかもしれませんが、実際には「老健か、特養か」の二択にならないこともよくあります。「まず老健でリハビリをしながら、並行して特養に申し込んでおく」——という流れをとる方は少なくありません。特養は待機期間が長いことが多いので、老健にいる間に順番を待つ、という考え方です。

「今すぐどちらかに決めなければ」と気負わなくて大丈夫。状況を見ながら、途中で方向を変えてもいいものです。


入居できる条件と、費用の目安

施設で家族と穏やかに話す高齢の男性

入居条件

老健の利用には、要介護1以上の認定を受けていることが必要です。要介護1から5まで対応しており、特養のような「要介護3以上」という縛りはありません。

ただし、入居時に感染症(活動性結核など)の方は入居が難しい場合があります。また、施設ごとに対応できる医療の範囲が違いますので、持病がある場合は事前に確認が必要です。

費用の目安

老健は介護保険が適用される施設なので、費用の自己負担は介護保険の利用者負担割合(1〜3割)に応じた料金になります。

一般的な目安として、月額の自己負担は7〜15万円前後が多いです(居室の種類・施設によって異なります)。

内訳は大きく以下のとおりです。

  • 施設サービス費(介護保険の適用分)
  • 居住費(部屋代)
  • 食費
  • 日常生活費(消耗品・理美容代など)

収入や資産に応じて「負担限度額認定」という制度が使え、食費・居住費が安くなる場合があります。担当のケアマネジャーや施設の相談員に聞いてみてください。


入所して驚く家族が多い、「薬」と「通院」のこと

ここは、ご家族が入所してから驚くことが多いところなので、先にお伝えしておきます。

老健では、入所中の医療費やお薬代が、施設に支払われる介護報酬の中に含まれています(施設が負担するしくみです)。そのため、次のようなことが起こります。

  • お薬が施設の医師の処方に切り替わる。それまで飲んでいた薬が、同じ効果のより一般的な薬に変わったり、内容を見直されたりすることがあります
  • これまでの主治医のところへ自由に通院する、という形は難しくなることがあります(施設の医師が診るのが基本になります)
  • 高額なお薬を使っている方は、入所を断られることがある。がんや難病の治療薬など、費用が大きい薬を使っている場合、施設側が負担しきれず受け入れが難しいことがあります

これは施設が意地悪をしているのではなく、制度のしくみ上そうなっているということです。実際、国の会議でも「高額な薬のせいで入所できない」ことが課題として取り上げられています。

だから、老健を考えるときは、今飲んでいる薬(お薬手帳)を持って、早めに施設の相談員に見てもらうのが確実です。「この薬があるから難しい」「これなら大丈夫」が、その場でわかります。

なお、老健に入所すると、担当のケアマネジャーは施設の介護支援専門員に変わります。在宅で担当していたケアマネジャーの担当からは、いったん外れる形です。自宅に戻るときには、また在宅のケアマネジャーがつくので、退所の相談は早めに始めておきましょう。


こんなときに、老健が向きます

こまり
こまり
なるほど。じゃあ「入院の後、いきなり家に帰るのが不安」っていうときに使う、ってこと?
とも
とも
まさにそのとおりです。退院後の橋渡しに使うケースが、いちばん多いですね。

老健が向いているのは、たとえばこんな状況です。

退院後のリハビリを続けたいとき 病院での急性期治療が終わり、「あとはリハビリ次第」という状態のとき。自宅での生活に必要な動作(歩く・立ち上がる・トイレに行くなど)を、専門スタッフと一緒に練習できます。

実際によくあるのは、こんな場面です。

  • 転んで骨折し、入院。手術は終わったけれど、まだ歩くのがこわい
  • 脳梗塞のあと、体の片側に麻痺が残っている
  • 肺炎などで入院しているうちに、すっかり体力・筋力が落ちてしまった

どれも「治療は終わったけれど、入院前と同じようには動けない」という状態です。ここで自宅に直行すると、転倒や再入院につながることもあります。もうひと押しリハビリをして、帰る力を取り戻す——それが老健の役目です。

自宅の環境を整える時間が必要なとき 退院が決まっても、手すりをつけたり、介護ベッドを用意したり、在宅サービスの手続きをしたりと、準備に時間がかかることがあります。その間、老健で安心して過ごしながら、家族が準備を進めることができます。

家族の介護体制を整えたいとき 家族が介護に慣れていない・仕事の調整が必要、という場合にも、老健にいる間に少しずつ準備する時間が取れます。


老健から自宅に戻るときには、訪問介護やデイサービスなどの在宅サービスをうまく組み合わせることが多くなります。在宅での介護サービスの種類について知りたい方は、介護保険サービスにはどんな種類があるの?在宅・通い・泊まりのちがいも参考にしてみてください。


まとめ:「帰るための場所」として、老健を知っておく

こまり
こまり
整理すると…老健は「在宅復帰を目指してリハビリをする一時的な施設」で、特養は「長く生活する場所」ってこと。入院の後、家に帰れるか不安なときに使えるんだね。
とも
とも
上手にまとめてくれましたね。老健は「家に帰ることをあきらめない場所」ともいえます。入院中に「退院後どうしよう」と不安になったとき、選択肢のひとつとして思い出してもらえたら嬉しいです。

老健と特養は似た名前ですが、目的も使い方も全然違います。

  • 老健:在宅復帰を目標に、リハビリ・医療体制の中で一時的に過ごす場所
  • 特養:自宅での生活が難しくなった方が、長期的に生活する場所

入院が長引いて、退院後の生活が見えないとき。「すぐに家に帰るのは不安だけど、施設に入り続けるつもりもない」というとき。そんなときに、老健はひとつの選択肢になります。

最後にひとつ。ご家族の相談を受けていて感じるのは、「老健という選択肢があることを、そもそも知らなかった」という方が、思いのほか多いということです。「もっと早く知っていれば、退院のときにあんなに慌てなかったのに」という言葉も、よく聞きます。

だから、退院の話が出たら、「老健という選択肢はありますか?」と、病院の相談員やケアマネジャーに一度たずねてみてください。その一言だけで、選べる道がぐっと広がることがあります。

入居の可否・期間・費用は、施設や本人の状態によって変わります。担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに、まず相談してみてください。


家族からよく聞かれる質問

とも
とも
最後に、この話をするときにご家族からよく出る疑問を、いくつか紹介しますね。

老健に入居してから、どのくらいの期間で退所になるの?

老健は3か月ごとに在宅復帰の可能性を見直します。「3か月経ったら必ず出なければならない」というわけではありませんが、在宅復帰が目標の施設のため、長期の入所が前提ではありません。状態や家庭の状況によって異なりますので、入所前に施設の相談員に確認しておくと安心です。

老健を退所した後、特養に移ることはできますか?

できます。在宅復帰が難しいと判断された場合には、特養への移行を検討することになります。ただし特養は待機期間が長いことが多いため、早めに申し込みを検討しておくと選択肢が広がります。担当のケアマネジャーに相談しながら並行して動くことをおすすめします。

要介護1でも、老健に入れますか?

老健の入居条件は要介護1以上です。要介護3以上が原則の特養とは違い、比較的軽度の段階でも利用できます。ただし、施設によって受け入れ状況が異なります。ケアマネジャーを通じて複数の施設に問い合わせてみることが大切です。

老健を探すとき、どこに相談すればいいですか?

担当のケアマネジャー、または地域包括支援センターに相談するのがいちばん確実です。地域の施設情報を持っており、状態に合った施設を一緒に探してくれます。入院中の場合は、病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)に相談するのも良い方法です。

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とも 現役・主任介護支援専門員

現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。

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