老健とは?特養との違いと使うタイミング
「老健って、特養と何が違うの?」
「入院の後、すぐ家に帰れるか不安で…その間ってどうすればいいんだろう」
こんな気持ちで検索してきた方は、多いと思います。「老健」「特養」という言葉は耳にするけれど、いざ調べようとすると似たような説明が並んでいて、余計に混乱してしまいますよね。
今日は、老健と特養の違いを整理しながら、どんな状況でどちらが向くのか、やさしくほぐしていきます。
老健(介護老人保健施設)とは
病院から「来週退院です」と言われた。でも、歩くのもトイレもまだ不安。家で介護できる自信がない。特養に申し込んでも、すぐには空かない——。
その”あいだ”を埋めるのが、老健です。
老健は、病院と自宅の間をつなぐ「中間施設」 です。
たとえば、骨折や脳梗塞などで入院して、急性期(病気や怪我が落ち着く治療の期間)が終わった後。「退院してOKだけど、すぐに家で一人ではきつい」という状態のときに、老健でリハビリを続けながら在宅復帰を目指す、という使い方がもっとも多いパターンです。
老健には医師や看護師が配置され、リハビリの専門職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のいずれか)も置かれます。医療とリハビリが一体になったケアを受けられるのが特徴で、他の介護施設と比べると手厚い体制です。
ただし、3つのリハビリ職すべてが揃っているとは限りません。たとえば言語聴覚士(飲み込みや言葉のリハビリを担当)がいない施設もあります。「飲み込みのリハビリをしっかりしてほしい」など希望がある場合は、どの専門職がいるかを事前に確認しておくと安心です。
入居の期間は、原則として3か月ごとに在宅復帰できるかどうかの見直しが行われます。「ここに住み続ける」という施設ではなく、あくまで「帰るための準備をする場所」という位置づけです。
特養との違いをやさしく整理する
おおまかに比べると、こんなイメージです。
| 老健(介護老人保健施設) | 特養(特別養護老人ホーム) | |
|---|---|---|
| 目的 | 在宅復帰を目指す | 生活の場・長期入所 |
| 入居期間 | 原則3か月ごとに見直し(一時的) | 長期・原則退所なし |
| 医療・リハビリ | 医師常駐・リハビリ充実 | 嘱託医・日常的な医療中心 |
| 入居条件 | 要介護1以上 | 原則、要介護3以上(要介護1・2でも特例入所の場合あり) |
| 入居しやすさ | 比較的早めに入れることが多い | 待機期間が長いことが多い |
特養は「もう自宅での生活が難しくなった方が、長く生活する場所」として作られています。一方、老健は「いまは難しいけれど、リハビリを経れば自宅に戻れる可能性がある方」が対象です。
どちらが良い・悪いではなく、その方の状態や目標に合わせて選ぶものです。
そして、意外に思われるかもしれませんが、実際には「老健か、特養か」の二択にならないこともよくあります。「まず老健でリハビリをしながら、並行して特養に申し込んでおく」——という流れをとる方は少なくありません。特養は待機期間が長いことが多いので、老健にいる間に順番を待つ、という考え方です。
「今すぐどちらかに決めなければ」と気負わなくて大丈夫。状況を見ながら、途中で方向を変えてもいいものです。
入居できる条件と、費用の目安
入居条件
老健の利用には、要介護1以上の認定を受けていることが必要です。要介護1から5まで対応しており、特養のような「要介護3以上」という縛りはありません。
ただし、入居時に感染症(活動性結核など)の方は入居が難しい場合があります。また、施設ごとに対応できる医療の範囲が違いますので、持病がある場合は事前に確認が必要です。
費用の目安
老健は介護保険が適用される施設なので、費用の自己負担は介護保険の利用者負担割合(1〜3割)に応じた料金になります。
一般的な目安として、月額の自己負担は7〜15万円前後が多いです(居室の種類・施設によって異なります)。
内訳は大きく以下のとおりです。
- 施設サービス費(介護保険の適用分)
- 居住費(部屋代)
- 食費
- 日常生活費(消耗品・理美容代など)
収入や資産に応じて「負担限度額認定」という制度が使え、食費・居住費が安くなる場合があります。担当のケアマネジャーや施設の相談員に聞いてみてください。
入所して驚く家族が多い、「薬」と「通院」のこと
ここは、ご家族が入所してから驚くことが多いところなので、先にお伝えしておきます。
老健では、入所中の医療費やお薬代が、施設に支払われる介護報酬の中に含まれています(施設が負担するしくみです)。そのため、次のようなことが起こります。
- お薬が施設の医師の処方に切り替わる。それまで飲んでいた薬が、同じ効果のより一般的な薬に変わったり、内容を見直されたりすることがあります
- これまでの主治医のところへ自由に通院する、という形は難しくなることがあります(施設の医師が診るのが基本になります)
- 高額なお薬を使っている方は、入所を断られることがある。がんや難病の治療薬など、費用が大きい薬を使っている場合、施設側が負担しきれず受け入れが難しいことがあります
これは施設が意地悪をしているのではなく、制度のしくみ上そうなっているということです。実際、国の会議でも「高額な薬のせいで入所できない」ことが課題として取り上げられています。
だから、老健を考えるときは、今飲んでいる薬(お薬手帳)を持って、早めに施設の相談員に見てもらうのが確実です。「この薬があるから難しい」「これなら大丈夫」が、その場でわかります。
なお、老健に入所すると、担当のケアマネジャーは施設の介護支援専門員に変わります。在宅で担当していたケアマネジャーの担当からは、いったん外れる形です。自宅に戻るときには、また在宅のケアマネジャーがつくので、退所の相談は早めに始めておきましょう。
こんなときに、老健が向きます
老健が向いているのは、たとえばこんな状況です。
退院後のリハビリを続けたいとき 病院での急性期治療が終わり、「あとはリハビリ次第」という状態のとき。自宅での生活に必要な動作(歩く・立ち上がる・トイレに行くなど)を、専門スタッフと一緒に練習できます。
実際によくあるのは、こんな場面です。
- 転んで骨折し、入院。手術は終わったけれど、まだ歩くのがこわい
- 脳梗塞のあと、体の片側に麻痺が残っている
- 肺炎などで入院しているうちに、すっかり体力・筋力が落ちてしまった
どれも「治療は終わったけれど、入院前と同じようには動けない」という状態です。ここで自宅に直行すると、転倒や再入院につながることもあります。もうひと押しリハビリをして、帰る力を取り戻す——それが老健の役目です。
自宅の環境を整える時間が必要なとき 退院が決まっても、手すりをつけたり、介護ベッドを用意したり、在宅サービスの手続きをしたりと、準備に時間がかかることがあります。その間、老健で安心して過ごしながら、家族が準備を進めることができます。
家族の介護体制を整えたいとき 家族が介護に慣れていない・仕事の調整が必要、という場合にも、老健にいる間に少しずつ準備する時間が取れます。
老健から自宅に戻るときには、訪問介護やデイサービスなどの在宅サービスをうまく組み合わせることが多くなります。在宅での介護サービスの種類について知りたい方は、介護保険サービスにはどんな種類があるの?在宅・通い・泊まりのちがいも参考にしてみてください。
まとめ:「帰るための場所」として、老健を知っておく
老健と特養は似た名前ですが、目的も使い方も全然違います。
- 老健:在宅復帰を目標に、リハビリ・医療体制の中で一時的に過ごす場所
- 特養:自宅での生活が難しくなった方が、長期的に生活する場所
入院が長引いて、退院後の生活が見えないとき。「すぐに家に帰るのは不安だけど、施設に入り続けるつもりもない」というとき。そんなときに、老健はひとつの選択肢になります。
最後にひとつ。ご家族の相談を受けていて感じるのは、「老健という選択肢があることを、そもそも知らなかった」という方が、思いのほか多いということです。「もっと早く知っていれば、退院のときにあんなに慌てなかったのに」という言葉も、よく聞きます。
だから、退院の話が出たら、「老健という選択肢はありますか?」と、病院の相談員やケアマネジャーに一度たずねてみてください。その一言だけで、選べる道がぐっと広がることがあります。
入居の可否・期間・費用は、施設や本人の状態によって変わります。担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに、まず相談してみてください。
家族からよく聞かれる質問
老健に入居してから、どのくらいの期間で退所になるの?
老健は3か月ごとに在宅復帰の可能性を見直します。「3か月経ったら必ず出なければならない」というわけではありませんが、在宅復帰が目標の施設のため、長期の入所が前提ではありません。状態や家庭の状況によって異なりますので、入所前に施設の相談員に確認しておくと安心です。
老健を退所した後、特養に移ることはできますか?
できます。在宅復帰が難しいと判断された場合には、特養への移行を検討することになります。ただし特養は待機期間が長いことが多いため、早めに申し込みを検討しておくと選択肢が広がります。担当のケアマネジャーに相談しながら並行して動くことをおすすめします。
要介護1でも、老健に入れますか?
老健の入居条件は要介護1以上です。要介護3以上が原則の特養とは違い、比較的軽度の段階でも利用できます。ただし、施設によって受け入れ状況が異なります。ケアマネジャーを通じて複数の施設に問い合わせてみることが大切です。
老健を探すとき、どこに相談すればいいですか?
担当のケアマネジャー、または地域包括支援センターに相談するのがいちばん確実です。地域の施設情報を持っており、状態に合った施設を一緒に探してくれます。入院中の場合は、病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)に相談するのも良い方法です。
現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。
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