さっきまで歩けていたのに。パーキンソン病の親に、家族ができること
「さっきまで自分で歩いていたのに、急に足が出なくなる。わざとなの?」
「調子のいい日と悪い日の差が激しくて、こっちが振り回されてしまう」
「イライラしてしまう自分が、いやになる」
こう感じている家族の方は、きっと多いと思います。さっきできたことが、次の瞬間にはできなくなる。それを毎日そばで見ていると、どう受け止めればいいのか分からなくなります。強い言い方をしてしまったあとで、自分を責める方もいます。今日は、パーキンソン病で調子の波が起きる理由と、薬の時間、リハビリ、記録の取り方まで、家族が今日からできることを整理していきます。
「日内変動」——同じ日でも、時間によって別人のように変わる
パーキンソン病には、日内変動という特徴があります。「日によって調子が違う」というより、「一日の中で、調子の良い時間と悪い時間が繰り返される」というイメージに近いです。
その時間の目安は、多くの場合、飲んでいる薬の効き方と連動しています。
専門的な言い方をすると、薬が効いてよく動ける時間帯を「オン」、薬の効きが切れて体が動きにくくなる時間帯を「オフ」と呼びます。
この「オン・オフ」という言葉、ぜひ覚えておいてください。診察や相談の場で「今日はオフの時間が長かった」と伝えるだけで、医師やケアマネジャーに状態が伝わりやすくなります。
そして、もうひとつ大事なことがあります。担当していると強く感じるのですが、パーキンソン病は症状の個人差が非常に大きい病気です。「他の人はこうだった」「友人の親はこの段階で◯◯だった」——そういった情報が、必ずしも自分の家族に当てはまるとは限りません。この病気に関しては、特にそう思います。
「わざとじゃない」——これは、怠けではありません
オフの時間は、本人の意志とは関係なく訪れます。「気合いが足りない」でも「怠けている」でも「わざと動かない」でもありません。本人の意志とは関係なく、薬の効きが弱まって体が動きにくくなっているのです。
ただ、外から見た姿は「さっきまで動けていたのに、急に止まってしまった」に見えます。介護する家族が混乱するのは、当たり前のことです。
「なんで」と言ってしまったこと、感情的になってしまったこと。それを悔やんでいる方に、まずこれを伝えたいと思います。知らなければ、そう見えて当然だった。あなたは十分、向き合っています。
薬の時間が、いちばん大事
担当していて、これが最も影響が大きいと感じることがあります。それは、薬を適切な時間に、きちんと飲めているかどうかです。
パーキンソン病の治療薬は、飲む時間の間隔が一定であることに意味があります。時間がずれると、オンの時間帯もずれ、オフの時間帯も読みにくくなります。
薬の名前・量・具体的な飲み方は、必ず主治医の指示に従ってください。ここで大事なのは「時間を守ることに意味がある」という点だけお伝えします。
服薬管理の工夫については、薬の管理、どうしてる?親の飲み忘れ・飲み過ぎを防ぐ工夫 居宅療養管理指導というサービスも有効の記事も参考にしてみてください。
家でつけておく記録
記録の基本は、次の2点です。
- 薬を飲んだ時間
- オン・オフの様子(何時ごろよく動けたか/何時ごろ動きにくかったか)
手帳でも、スマートフォンのメモでも構いません。「完璧な記録」でなくてよいです。「だいたいこんな流れだった」が伝われば、医師もケアマネジャーも、その情報を生かせます。
よければ、この記録シートを使ってください。印刷して、その日ぶんを書きこむだけです。
紙でもスマートフォンでも、続けやすいほうで大丈夫です。診察のときに持っていくと、先生に伝わりやすくなります。
ショートステイは、薬を合わせるための記録が取れる場所
ここは、あまり知られていない視点なので、ていねいに書かせてください。
現場でよく見るのですが、ショートステイ(短期入所生活介護・短期入所療養介護)を「家族が休むためのサービス」として捉えている方がほとんどです。もちろんそれも正しいのですが、実はもう一つの意味があります。
「24時間の記録が取れる場所」として活用できるのです。
家族は、夜中の様子を直接見ることができません。同居していない場合はなおさらです。「朝は動けていた」「夜はぐったりしていた」は分かっても、その間の経過は分からない。
ケアマネとして、これをよく伝えています。薬の調整は、普段の状態が分からなければ、医師も調整のしようがない。だから、ショートステイでの24時間の記録が役に立つのです。食事の様子、夜間の体の動き、薬を飲んだ後の変化——そういった情報が蓄積されると、主治医が薬の用量や時間を検討する材料になります。
ショートステイを利用することに、罪悪感を持つ家族の方は少なくありません。でも、それは「親のために使える手段」のひとつでもあると、ぜひ知っていただきたいと思います。
リハビリで、動きが変わることがあります
パーキンソン病に対するリハビリには、自宅に来てもらう訪問リハビリと、施設に通うデイケア(通所リハビリテーション)があります。どちらも介護保険で利用できる場合があります。
では、なぜ効くのか。担当していていちばん実感するのは、こわばり(筋強剛といって、筋肉がかたくなり、体が動かしにくくなる症状です)がやわらぐことです。リハビリのあとは、体の動きがなめらかになる方がいます。
そのぶん歩行が安定したり、転倒が減ったりする場面を、何度も見てきました。「もう遅い」と思わずに、一度ケアマネジャーに相談してみてください。
そして、もしむせが出てきたら、早めにST(言語聴覚士)に入ってもらうことを検討してください。STとは、話すこと・飲み込むことの専門職です。現場でよく見るのですが、「ちょっとむせるようになった」段階から関わってもらうと、その後の対応がずいぶん変わります。パーキンソン病では飲み込みの機能が低下することがあり、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん=食べ物や唾液が気道に入ることによる肺炎)のリスクとつながってきます。
体の中でも起きていること
パーキンソン病は、手足の動きだけでなく、自律神経(意識とは関係なく体を調整する神経)にも影響が出やすい病気です。
代表的なものとして、立ちくらみ(起立性低血圧)があります。立ち上がった瞬間にふらつく、というのがその典型です。また、便秘もこの病気と深くつながっています。「最近お腹の調子が悪い」という訴えも、見逃さないようにしてください。
転倒のリスクも高まります。オフの時間帯は特に動きが不安定になりやすいため、部屋の環境を見直すことも大切です。
入浴については注意が必要です。血圧が異常な値のときの入浴については、必ず主治医に意見を確認してください。また、オフの状態のときにどう対応すればよいかも、あらかじめ医師や訪問看護師に聞いておくと、いざというときに慌てずに動けます。
お金の話——指定難病の医療費助成と、ホーエン・ヤール分類
パーキンソン病は指定難病に指定されており、医療費の助成制度があります。
担当していると、診断を受けた病院で説明を受けて、すでに受給者証を持っているご家庭がほとんどです。もしまだ聞いていない、あるいは受け取っていないという場合は、主治医か、病院の医療相談員(ソーシャルワーカー)に確認してみてください。
また、パーキンソン病にはホーエン・ヤール重症度分類という段階の分け方があります。本人の体の状態を5段階で評価するもので、この分類の段階によって、使える制度や支援の内容が変わる場合があります。
※この記事では要件の詳細な数字は記載していません。制度の基準・対象要件は、難病情報センターまたは厚生労働省の公式情報をご確認ください。窓口での手続きの前に、担当のケアマネジャーや病院の相談員にも確認されることをおすすめします。
なお、40歳以上65歳未満の方でも、パーキンソン病は介護保険の特定疾病として認められており、介護サービスを利用できる場合があります。
困ったとき、誰に言えばいいか
困ったことが出てきたとき、伝えられる相手は複数います。
- 受診のとき、主治医へ——記録を持参すると、より具体的に伝えられます
- ケアマネジャーへ——定期的な訪問(モニタリング)のとき、オン・オフの様子を伝えてください。リハビリやショートステイの調整も、そこから動き出せます
- 訪問看護師へ——訪問看護が入っている場合は、体調の変化を気軽に伝えてください
「こんなこと言っていいのか」と遠慮しなくて大丈夫です。どれが小さなことで、どれが大事なことかを判断するのは専門職の仕事です。
まとめ
今日の話を、短くまとめます。
- 「オン(薬が効いて動ける時間)」と「オフ(効きが切れて動きにくい時間)」がある
- これは本人の意志とは関係ない。怠けでもわざとでもない
- 症状の個人差が非常に大きい病気なので、他の人の経過と比べすぎない
- 薬の時間を守ることが、体の動きを安定させる基本になる
- 記録(薬の時間・オン・オフの様子)を持って、診察に臨む
- リハビリ(訪問リハビリ・デイケア)は効果的。特に歩行に対して
- ショートステイは、家族の休息のためだけでなく、24時間の記録が取れる場としても役立つ
- むせが出てきたら、ST(言語聴覚士)への相談を検討する
- 指定難病の医療費助成について、まだ確認していなければ主治医か病院相談員へ
ここまでの話を、1枚にまとめました。印刷して手元に置いたり、ご家族で見ながら話すときに使ってください。
この記事は医療アドバイスではありません。薬の内容・リハビリの方針・入浴の可否については、必ず主治医の指示に従ってください。 最終的なご判断は、担当のケアマネジャーや専門家にご相談ください。
よくある質問
パーキンソン病でも、介護保険は使えますか?
はい、使えます。65歳以上の方は、一般の介護保険と同じ手続きで申請できます。40歳以上65歳未満の方でも、パーキンソン病は介護保険の「特定疾病」に該当するため、介護サービスを利用できる場合があります。ただし要件の詳細は制度により異なりますので、住んでいる市区町村の窓口か、ケアマネジャーにご確認ください。
薬の時間と食事の時間がずれてしまいます。どうすればいいですか?
食事との兼ね合いで薬の時間がずれてしまう場面は、伺っていると本当によく出てきます。薬によって食前・食後・食間の指定が異なりますので、まず主治医または薬剤師に「食事の時間と合わせにくい」と正直に伝えてみてください。「合わせにくい」という実情を伝えること自体が、調整のきっかけになります。
リハビリは、どこに頼めばいいですか?
担当のケアマネジャーに相談するのが、いちばん早い方法です。自宅に来てもらう訪問リハビリと、施設に通うデイケア(通所リハビリテーション)のどちらが合うかは、体の状態や生活環境によって変わります。ケアマネジャーが、リハビリの専門職(理学療法士・作業療法士など)を含む事業所と連絡を取りながら、つないでくれます。
医療費の助成は、誰でも受けられますか?
パーキンソン病は指定難病に指定されており、医療費の助成を受けられる制度があります。ただし、重症度の基準など対象の要件があります。担当していると、診断後に病院で説明を受けて、すでに手続きを済ませている方がほとんどです。まだ確認していない場合は、主治医か病院の医療相談員(ソーシャルワーカー)に聞いてみてください。
むせるようになってきました。何をすればいいですか?
まず、かかりつけ医または担当のケアマネジャーに伝えてください。むせは、飲み込みの機能(嚥下機能)が変化してきているサインになることがあります。パーキンソン病では、進行とともに飲み込みの力が低下することがあるため、早めにST(言語聴覚士=話すこと・飲み込むことの専門職)に関わってもらえるよう相談することをおすすめします。「少しむせる程度」の段階から動くほうが、その後の対応が変わってきます。
現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。
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