在宅介護

床ずれ予防マットレスとエアマット。どう選んで、どう使うのか

床ずれ予防マットレスとエアマット。どう選んで、どう使うのか

「お尻が赤くなってきた。このまま床ずれになってしまうのかな」

「エアマットを借りたら、夜中に体の向きを変えなくてもいいのかな」

福祉用具の方にマットレスをすすめられたけれど、種類がよく分からないまま返事をした。 そんな方も少なくないと思います。 今日は、床ずれを防ぐマットレスとエアマットについて、どう選んで、入れたあとに何をすればいいのかを整理します。

とも
とも
こんにちは。今日は床ずれを防ぐマットレスの話をしますね。
こまり
こまり
とこずれ? それって、なあに?
とも
とも
同じところに体の重みがかかり続けて、皮膚と、その下の肉が傷んでしまうことです。横になっている時間が長くなると、起きやすくなります。
こまり
こまり
えっ、同じ向きで寝てるだけで? ……あ、でもわたし、寝てるあいだに横向いたり、上向いたり、ころころ変わってる気がする。
とも
とも
あはは、それでいいんですよ。こまりみたいに自分で向きを変えられるうちは、心配はほとんどありません。
こまり
こまり
じゃあ、変えられなくなったら、どうするの?
とも
とも
本当は、まわりの人が2時間おきに変えるのが基本です。でも、家で毎晩それをやるのは、なかなかできることじゃない。だから道具に頼ります。今日はその話をしますね。

床ずれは、どこに、どうしてできるのか

床ずれ(褥瘡・じょくそう)は、同じところに体の重みがかかり続けて、皮膚とその下の組織が傷んでしまう状態です。

できやすいのは、骨が出ているところです。 仰向けなら、お尻の尾てい骨のあたり、かかと、背中の肩甲骨、後頭部。 横向きなら、腰の骨の横、ひざの外側、くるぶし、耳。 座っている時間が長い方は、お尻の坐骨のあたりにできることもあります。

始まりのサインは、その場所の赤みです。

見分け方のひとつに、指押し法という方法があります。赤くなっているところを指で3秒ほど押して、離したときに白くならず赤いままなら、床ずれの始まりかもしれません。一度白くなってから赤みが戻るなら、その場の血の巡りによる反応で、床ずれとは区別されます。

ただ、これで決めつける必要はありません。この方法は「行ってもよい」という位置づけのもので、絶対の判定法ではないからです。気になったら、訪問看護師や主治医に見てもらってください。

痛みを訴えないこともあります。感覚が鈍くなっていたり、ご自分で伝えるのが難しかったりするからです。だからこそ、おむつ交換や着替えのときに、さっと目で見ておくことが早い発見につながります。


エアマットと、ふつうのマットレス。何が違うのか

床ずれを防ぐための寝具は、大きく2つに分かれます。

ウレタンのマットレスは、低反発や高反発といった素材の沈み込みで、体の重みを広い面で受け止めます。電気は要りません。音もしません。

エアマットは、空気の入った細い筒がいくつも並んでいて、小さなポンプが空気を送ります。体が沈み込むことで、重みを広い面に散らします。ポンプを動かすのでコンセントが要りますし、音も、静かではありますが常に鳴っています。寝室に置くものなので、ここは実際に確かめてから決めたほうがいいところです。

そのうえで、膨らむ筒としぼむ筒が時間で入れ替わるタイプがあります。同じところに重みがかかり続ける時間そのものが短くなるので、自分で動けない方ほど、この働きが効いてきます。エアマットなら全部がそうというわけではないので、借りるときにどちらのタイプかを聞いておくと、選び間違えません。

こまり
こまり
じゃあ、エアマットのほうがいいってこと?
とも
とも
そこなんです。良いほうを選ぶ、という話ではないんですよ。人によっては、エアマットが向かないこともあります。

うちの親は、どちらが合うのか

分かれ目は、ひとつだけです。自分で寝返りが打てるかどうか

まだご自分で寝返りが打てる段階なら、ウレタンのマットレスで足りることが多いです。 むしろ、やわらかすぎるものに変えると体が沈み込んで、自分で動くのが難しくなってしまうことがあります。動ける力を邪魔しない、というのも大事な視点です。

寝返りがほとんど打てない、一日の大半を横になって過ごしている。そういう状態になってきたら、エアマットを考えるタイミングです。

エアマットの中には、時間がくると自動で空気が切り替わるタイプがあります。決まった間隔で、体に重みがかかる場所が変わるので、動けない方ほど、この働きが効いてきます。

どちらが合うかは、体の状態だけでなく、部屋の広さや、ベッドの形、ご本人の好みでも変わります。担当のケアマネジャーと、福祉用具専門相談員に一度見てもらってから決めるのが確実です。


借りるときのこと

床ずれ防止用具(マットレス類)も、体の向きを変えるのを助けるクッション(体位変換器)も、介護保険で借りられるものです。買い取りではありません。

対象は原則として要介護2以上です。要支援1・2と要介護1の方は、原則として対象から外れます。実際のところ、要介護1くらいの状態でエアマットが必要になる場面は、それほど多くありません。

それでも必要と判断されたときは、医師の所見などをもとに市町村が認めれば借りられる例外給付という仕組みがあります。まずは、担当のケアマネジャーに相談するところから始まります。

ここで、よく混ざるところを1つ。介護ベッドを借りると、マットレスも一緒に借りることになりますが、あれは「特殊寝台付属品」という種目で、ベッドとセットでないと借りられません。一方、エアマットのような床ずれを防ぐためのマットは「床ずれ防止用具」という別の種目です。ベッドを借りていなくても、これだけで借りられます。

料金は品物と地域で変わります。金額が気になるときは、契約の前に、福祉用具の事業所に「1割負担だと月いくらになりますか」と、はっきり数字で聞いておくと安心です。

ベッドまわりの整え方は、起き上がれない親のベッド周り、整えると変わることにもまとめてあります。


本当は2時間おき。でも、家ではそうもいきません

介護ベッドに用意された、すべるシートと体の向きを変えるための道具

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

床ずれを防ぐには、2時間を超えない間隔で体の向きを変えるのが基本とされています。施設では、夜間もこの間隔で行っています。

けれど、家庭で同じことを続けるのは簡単ではありません。夜中に2時間おきに起きて、また朝から仕事に行く。それを毎日となると、家族の体がもちません。

できないことを責める話ではありません。大事なのは、「うちでは夜は難しい」と、担当のケアマネジャーや訪問看護師に伝えておくことです。伝えてあれば、道具の選び方も、訪問の入れ方も、そこに合わせて組み立ててもらえます。

体の重みを分散させるマットレスを使っている場合には、4時間以内の間隔でもよいとされています。日本褥瘡学会のガイドラインに書かれている考え方です。空気が自動で切り替わるタイプがあるのも、この時間を道具に受け持ってもらうためです。

ただ、これは全員に当てはまる数字ではありません。皮膚の状態、体の傾き、栄養の状態でも変わります。ご家庭でどうするかは、主治医や訪問看護師に確認したうえで決めていただくのが安心です。

そのうえで、日中、起きているあいだに姿勢を変える。長く同じ向きのまま過ごさないようにする。そこは、人の手でできるところです。

こまり
こまり
むずかしいところは、道具に代わってもらうんだね。

沈むぶん、介助はしづらくなります

これは、あまり書かれていないことなので、先にお伝えしておきます。

エアマットは空気で支えているので、表面がやわらかく、いわばプカプカした状態です。 そこに膝をついて体を支えようとすると、沈んでしまいます。おむつを替える、体を起こす、服を着せる。そうした場面で、ふつうのマットレスよりも力が要ります。

対策があります。機種によっては、ボタンひとつで一時的に空気をパンパンにして、硬くできる機能が付いています。介助のあいだだけ固くして、終わったら戻す。これがあるだけで、体にかかる負担がまるで違います。

借りるときに、福祉用具の事業所に「介助のときに硬くできる機能は付いていますか」と聞いてみてください。同じような値段でも、付いているものと付いていないものがあります。


向きを変えるのを助ける道具は、どんなときに足すのか

体圧分散マットレスの上に、体の向きを保つクッションを置く手元

体の向きを変えるのを助ける道具を、体位変換器といいます。これも介護保険で借りられます。ひとくちに体位変換器といっても、形の違うものが2つあります。ここが混ざりやすいので、分けて書きます。

1つめは、姿勢を支えるもの。三角のクッションや、体の下に敷いて滑らせるシートです。人が向きを変えるときに使ったり、変えたあとの姿勢を保つために使ったりします。

2つめは、機械。エアマットと同じように、その上に寝るタイプです。時間がくると、機械のほうで体の傾きを変えてくれます。夜のあいだ人が動けないお宅では、この形が助けになることがあります。

その機械は、エアマットとどう違うのか。ここも分かりにくいところなので、はっきり書いておきます。エアマットは、体に重みがかかる場所が変わるだけで、体の向きそのものは変わりません。仰向けなら、仰向けのままです。体位変換器の機械は、体そのものの傾きを変えます。完全に横向きにするというより、少し傾けて、当たっている面を変えるイメージです。

どちらも「その上に寝るもの」なので、エアマットと重ねて使うことはありません。どちらを入れるかは、ご本人の状態を見て選ぶことになります。一方、クッションのほうは、エアマットと一緒に使えます。

クッションのほうは、全員に必要なものではありません。足したほうがいいのは、こんなときです。

  • 横向きにしても、時間がたつと体がずれて仰向けに戻ってしまう
  • 背中や腰を支えて、横向きの姿勢を保ちたい
  • すでに床ずれができていて、そこに体の重みがかからないようにしたい

3つめは特に大事です。できてしまった場所を、いかに当てないか。そのために、クッションで体の傾きを作ります。

反対に、ご自分で寝返りが打てているうちは、マットレスだけで足りることが多いです。人によって、また時期によっても変わります。今のご本人に必要かどうかは、担当のケアマネジャーや福祉用具専門相談員に、その都度みてもらってください。


停電したら、どうなるのか

エアマットは電気で空気を送っています。だから、停電になったらどうなるのか。これは知っておいたほうがいい話です。

答えは、機種によってまるで違います

停電すると自動的に弁が閉じて、2週間ほど空気を保つものがあります。一方で、時間とともに少しずつ空気が抜けて、数時間を超えると対策が必要になるものもあります。

つまり、大事なのは「エアマットは停電に強いか」ではなく、今おうちにある物がどちらのタイプかです。

契約のときか、次に事業所の方が来たときに、この2つを聞いておいてください。

  • 停電したら、空気はどれくらい持ちますか
  • 停電のときに、こちらでやることはありますか

聞いておけば、いざというときに慌てずにすみます。


まとめ

こまり
こまり
えーっと、つまり。床ずれは骨の出たところにできて、押しても赤みが消えなかったら始まりのサイン。マットレスを選ぶ分かれ目は、自分で寝返りが打てるかどうか。本当は2時間おきに向きを変えるものだけど、夜までは無理だから、それはケアマネさんに伝えておく。エアマットは沈むぶん介助はしづらいから、硬くできる機能があるか聞く。あと停電で何時間もつかは、機種によって全然ちがう。……あってる?
とも
とも
そのとおりです。いちばんお伝えしたいのは、夜が難しいことを、一人で抱えないでほしいということです。伝えてもらえれば、道具の選び方も、訪問の入れ方も、そこに合わせて組み直せます。

床ずれができてしまうと、「自分の見守りが足りなかったのでは」と、ご自身を責めてしまう方がいます。 けれど、床ずれは栄養や病気や皮膚の状態も重なって起きるもので、家族の努力だけで防ぎきれるものではありません。

道具で減らせるところは道具に任せて、しんどいところは早めに人に言う。 それでいいのだと思います。

ここまでの話を、1枚にまとめました。印刷して手元に置いたり、ご家族で見ながら話すときに使ってください。

床ずれを防ぐマットレスの選び方と使い方をまとめた図

この図を保存する(印刷用)

この記事で触れた内容は一般的な目安です。ご本人の状態によって適切な方法は変わります。最終的なご判断は、担当のケアマネジャーや専門家にご相談ください。


よくある質問

とも
とも
最後に、よくいただく質問にいくつかお答えいたします。

エアマットを入れたら、夜中に体の向きを変えなくてもいいですか?

ゼロにはなりません。ただ、間隔を延ばせることはあります。実際に何時間おきにするかは、主治医や訪問看護師に決めてもらってください。夜が難しいことは、そのまま伝えて大丈夫です。責められることではありません。

停電したら、エアマットはどうなりますか?

機種によって、まるで違います。2週間ほど空気を保つものもあれば、数時間で対策が要るものもあります。いま借りているものがどちらか、事業所に先に聞いておくと安心です。合わせて、停電のときにこちらでやることがあるかも聞いておいてください。

低反発のマットレスを、自分で買ってもいいですか?

かまいません。まだご自分で寝返りが打てる段階なら、それで足りることも多いです。ただ、やわらかすぎると体が沈んで、かえって動きにくくなることがあります。買う前に、担当のケアマネジャーか福祉用具の方に、今の状態に合っているか見てもらうと安心です。

床ずれができてしまったら、どうすればいいですか?

家庭で判断せず、訪問看護師か主治医に早めに見てもらってください。市販の薬を貼るより先に、そこに体重がかからないようにすることが大事です。クッションで体の向きを作る方法も含めて、相談していただければと思います。

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とも 現役・主任介護支援専門員

現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。

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