起き上がれない親のベッド周り、整えると変わること
「布団から起き上がれなくて、毎朝抱え起こしている。わたしの腰がもう限界かもしれない」
こう感じているご家族、本当に多いんです。 起き上がりの介助は、一瞬のことに見えて、腰への負担がじわじわと積み重なります。 しかも毎日、何度も。
今日はそのしんどさを少しでも和らげるために、 ベッド周りを整えると何が変わるかを、順を追ってお話しします。
こんなサインが出たら、介護ベッドを考えるタイミング
「まだ歩けるし、ベッドなんて早いかな」と思う方も少なくありません。でも、次のようなサインが出てきたら、一度考えてみるタイミングかもしれません。
- 朝の起き上がりに、介助が必要になってきた
- 布団から立ち上がるまでに、時間がかかる
- 介助している家族が、腰痛になってきた
- 夜中の寝返りが、難しくなってきた
- ベッドや布団からの立ち上がりで、ふらつく
一つでも当てはまるなら、一度ケアマネジャーに相談してみるタイミングかもしれません。「早すぎるかな」と思うくらいの時期こそ、道具の力をいちばん実感しやすいことも多いんです。
布団よりも介護ベッドのほうがラクな理由
在宅介護が始まると、「今の布団のままでいい?ベッドに替えたほうがいい?」と迷う場面があります。 結論からいうと、起き上がりがつらくなってきたなら、介護ベッドへの切り替えを検討する価値は大きいです。
理由は大きく2つ。
①背上げ機能で、自分で起き上がりやすくなる
介護用のベッドには、上半身を電動でゆっくり起こす「背上げ」機能がついています。 ボタン一つで上半身が持ち上がるので、本人の腕の力がなくても「半分まで起き上がった状態」を作ることができます。 そこから脚を下ろして座る、という動作がぐっとラクになります。
「自分では無理」と思っていた起き上がりが、「少し補助があれば自分でできる」に変わることもあります。 自立を少し取り戻せると、本人の気持ちも変わるんですよね。
②高さ調整で、家族の腰への負担が減る
床に近い布団での介助は、家族が中腰になり続けるため腰に大きな負荷がかかります。 介護ベッドは高さを自在に変えられるので、介助するときは高くして、本人が立ち上がるときは低く、という使い分けができます。 この「高さが変えられる」だけで、介助する人の体への負担はかなり変わります。
介護ベッドについてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事も読んでみてください。 → 介護ベッドは何が違う?レンタルで借りる前に知っておきたいこと
起き上がり・寝返りを助ける道具たち
ベッド本体に加えて、周りに置く道具も大切です。
柵(サイドレール)と手すり
ベッドの横に取り付ける柵や手すりは、起き上がるときの「つかまる場所」になります。 何かをつかめると、そこを支点にして体を起こしやすくなるんですね。
転落防止にもなりますし、夜中にトイレへ行くときの「最初の一歩」を支える役割も果たします。 介護ベッドには最初から取り付けられるものが多いですが、後付けできるタイプもあります。
起き上がりやすいマットレス
マットレスの硬さも、起き上がりやすさに影響します。 柔らかすぎると体が沈み込んで、立ち上がりのひと踏ん張りができにくくなります。 適度な反発力(やや硬め)のマットレスのほうが、起き上がりやすい方が多いです。
とはいえ、「硬ければいい」「柔らかければいい」というものではありません。起き上がりやすさと、後述する「床ずれ(褥瘡)予防」は、体の状態によってちょうどいいバランスが変わります。だからこそ、状態に合わせて選ぶことが大切です。
床ずれの備えも、ベッド周りの大事な一つ
床ずれ(褥瘡・じょくそう)とは、同じ体勢でいる時間が長いと、皮膚が圧迫されてダメージを受ける状態です。 起き上がれない、寝返りが打ちにくい状態になってくると、床ずれのリスクが高まります。
「できてから治す」よりも、できる前に防ぐほうがずっと大切。
エアマット(体圧分散マットレス)
体の圧力をやさしく分散させるための専用マットレスです。 空気の流れで圧迫を繰り返し解放する「エアマット」や、特殊素材で体圧を広く受け止める「ウレタンマットレス」などがあります。
寝たきりに近い状態の方には、とくに有効です。
体位変換(たいいへんかん)
2時間ごとを目安に体の向きを変えることで、同じ場所への圧迫を和らげます。ただし、体圧分散マットレス(エアマットなど)を併用している場合は、4時間を超えない範囲でよいとされることもあります(間隔は主治医・訪問看護師に確認しましょう)。 それでも、毎晩くり返す夜間の介助は、家族にとってきついもの。状態が進んできたら、訪問介護(ホームヘルパー)や訪問看護との連携を考えるタイミングかもしれません。
「腰が痛い・起き上がれない」という状態が急に悪化したとき、または床ずれができてしまったときは、状態の変化サインのこともあります。主治医や訪問看護師にできるだけ早めに相談してみてください。
介護保険のレンタルが使えます
「でも介護ベッドってすごく高そう…」と思うかもしれません。
介護ベッド(特殊寝台)やサイドレール、エアマットなどは、介護保険のレンタルの対象品目になっています。 要介護認定を受けていれば、月々のレンタル料の1〜3割の自己負担で借りられます。ただし、介護ベッドやエアマットなど一部の品目は、原則として要介護2以上が対象です(軽度の方の例外については、記事末のQ&Aでふれています)。
対象になる方、手続きの流れ、費用のめやすについては、こちらの記事でまとめています。 → 福祉用具レンタル、何が借りられて月いくら?介護ベッドから車椅子まで
担当のケアマネジャーが一緒に選んで手続きをしてくれますので、まずは相談してみてください。 ケアマネジャーがまだいない場合は、市区町村の窓口や地域包括支援センターに問い合わせるところから始められます。
まとめ:ベッド周りを整えると、二人分がラクになる
ベッド周りを整えることで、変わることをまとめます。
- 背上げ・高さ調整つきの介護ベッドで、本人が「ある程度自分で起き上がれる」が戻ることがある
- 柵・手すりで、つかまりながら起き上がれる・転落リスクが減る
- マットレス選びで、起き上がりやすさと床ずれ予防のバランスを取る
- エアマットで、床ずれ(褥瘡)の予防ができる
- これらのほとんどは介護保険でレンタルできる
家族が抱え起こし続けると、いつか介助する側が倒れてしまいます。 「道具に頼るのは申し訳ない」という気持ちを持つ方もいますが、 道具を上手に使うことは、本人の自立を守ることにもつながります。
どの道具が合うかは、状態によって違います。最終的なご判断は、担当のケアマネジャーや訪問看護師、主治医にご相談ください。 「抱え起こしがつらくなってきた」という一言から相談を始めてみてください。
家族からよく聞かれる質問
要支援でも介護ベッドはレンタルできますか?
要支援1・2の方は、介護予防給付の対象になります。 介護ベッド(特殊寝台)や床ずれ防止用具(エアマット)などは、要介護2以上が原則の対象となっており、要支援では原則として保険適用外です。 ただし、例外的に認められるケース(医師の意見書がある場合など)もありますので、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに確認してみてください。
また、保険の対象にならない場合でも、福祉用具の事業所が独自に、安い料金で貸し出す「自費レンタル」を用意していることも多いです。「保険が使えないから」とあきらめる前に、ケアマネジャーや福祉用具の事業所に「自費でも借りられますか?」と聞いてみてください。安く借りられることがあります。
今ある布団のまま、手すりだけ追加することはできますか?
できます。床置きタイプの手すり(床から立ち上がりを助ける据置式手すり)もあります。 ただし、起き上がりがかなりつらくなっている状態では、手すりだけでは対応しきれないことも多いです。 現状の困り具合をケアマネジャーに伝えて、どの道具が最も合っているか一緒に検討するのがおすすめです。
夜中に体位変換するのがつらいのですが、何か方法はありますか?
夜間の体位変換は、家族の睡眠を大きく削ります。 自動で空気圧を変えてくれる「自動体位変換機能つきのエアマット」や、夜間の訪問介護(夜間対応型訪問介護)を利用する方法もあります。 「夜中が限界」というSOSは、ケアマネジャーに遠慮なく伝えてください。それを聞いて一緒に解決策を考えるのが、ケアマネジャーの仕事です。
「急に起き上がれなくなった」のは、何かのサインですか?
急な変化は、状態が変化しているサインのことがあります。 転倒・骨折が隠れている場合、体の病気が進んでいる場合など、さまざまな理由が考えられます。 数日のうちに急に起き上がりにくくなった、または寝てばかりになってきたと感じたら、まず主治医や訪問看護師に連絡することをおすすめします。 「様子を見る」よりも、早めの確認が安心につながります。
現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。
この人について →