在宅介護

起き上がれない親のベッド周り、整えると変わること

起き上がれない親のベッド周り、整えると変わること

「布団から起き上がれなくて、毎朝抱え起こしている。わたしの腰がもう限界かもしれない」

こう感じているご家族、本当に多いんです。 起き上がりの介助は、一瞬のことに見えて、腰への負担がじわじわと積み重なります。 しかも毎日、何度も。

今日はそのしんどさを少しでも和らげるために、 ベッド周りを整えると何が変わるかを、順を追ってお話しします。

とも
とも
こんにちは。今日はベッド周りのお話をしますね。「起き上がりが大変で、家族が毎朝抱え起こしている」という相談、ケアマネをしていると本当によく聞きます。
こまり
こまり
朝、起きるのがそんなに大変なの?ごろんって起き上がればいいんじゃないの?
とも
とも
筋力が落ちてくると、「ごろんと起き上がる」がとても難しくなるんです。腕の力、お腹の力、バランス、全部使う動作なんですよね。介助する家族も、腰を曲げたまま人の体を持ち上げるので、ぎっくり腰になる方が後を絶たなくて。
こまり
こまり
えっ、家族も怪我するの!?
とも
とも
するんです。だから今日は「本人のためだけじゃなく、家族の体を守るためにも、ベッド周りを整えましょう」という話をしていきますね。

こんなサインが出たら、介護ベッドを考えるタイミング

「まだ歩けるし、ベッドなんて早いかな」と思う方も少なくありません。でも、次のようなサインが出てきたら、一度考えてみるタイミングかもしれません。

  • 朝の起き上がりに、介助が必要になってきた
  • 布団から立ち上がるまでに、時間がかかる
  • 介助している家族が、腰痛になってきた
  • 夜中の寝返りが、難しくなってきた
  • ベッドや布団からの立ち上がりで、ふらつく

一つでも当てはまるなら、一度ケアマネジャーに相談してみるタイミングかもしれません。「早すぎるかな」と思うくらいの時期こそ、道具の力をいちばん実感しやすいことも多いんです。


布団よりも介護ベッドのほうがラクな理由

寝室のベッドで、高齢の親に寄り添う家族

在宅介護が始まると、「今の布団のままでいい?ベッドに替えたほうがいい?」と迷う場面があります。 結論からいうと、起き上がりがつらくなってきたなら、介護ベッドへの切り替えを検討する価値は大きいです。

理由は大きく2つ。

①背上げ機能で、自分で起き上がりやすくなる

介護用のベッドには、上半身を電動でゆっくり起こす「背上げ」機能がついています。 ボタン一つで上半身が持ち上がるので、本人の腕の力がなくても「半分まで起き上がった状態」を作ることができます。 そこから脚を下ろして座る、という動作がぐっとラクになります。

「自分では無理」と思っていた起き上がりが、「少し補助があれば自分でできる」に変わることもあります。 自立を少し取り戻せると、本人の気持ちも変わるんですよね。

②高さ調整で、家族の腰への負担が減る

床に近い布団での介助は、家族が中腰になり続けるため腰に大きな負荷がかかります。 介護ベッドは高さを自在に変えられるので、介助するときは高くして、本人が立ち上がるときは低く、という使い分けができます。 この「高さが変えられる」だけで、介助する人の体への負担はかなり変わります。

介護ベッドについてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事も読んでみてください。 → 介護ベッドは何が違う?レンタルで借りる前に知っておきたいこと


起き上がり・寝返りを助ける道具たち

ベッド本体に加えて、周りに置く道具も大切です。

柵(サイドレール)と手すり

ベッドの横に取り付ける柵や手すりは、起き上がるときの「つかまる場所」になります。 何かをつかめると、そこを支点にして体を起こしやすくなるんですね。

転落防止にもなりますし、夜中にトイレへ行くときの「最初の一歩」を支える役割も果たします。 介護ベッドには最初から取り付けられるものが多いですが、後付けできるタイプもあります。

起き上がりやすいマットレス

マットレスの硬さも、起き上がりやすさに影響します。 柔らかすぎると体が沈み込んで、立ち上がりのひと踏ん張りができにくくなります。 適度な反発力(やや硬め)のマットレスのほうが、起き上がりやすい方が多いです。

とはいえ、「硬ければいい」「柔らかければいい」というものではありません。起き上がりやすさと、後述する「床ずれ(褥瘡)予防」は、体の状態によってちょうどいいバランスが変わります。だからこそ、状態に合わせて選ぶことが大切です。

こまり
こまり
柵ってあると便利そうだね。でも「床ずれ」ってなに?聞いたことはあるけど……
とも
とも
大事なところなので、次にしっかりお話しします。

床ずれの備えも、ベッド周りの大事な一つ

体圧分散マットレスを整える手元

床ずれ(褥瘡・じょくそう)とは、同じ体勢でいる時間が長いと、皮膚が圧迫されてダメージを受ける状態です。 起き上がれない、寝返りが打ちにくい状態になってくると、床ずれのリスクが高まります。

「できてから治す」よりも、できる前に防ぐほうがずっと大切。

エアマット(体圧分散マットレス)

体の圧力をやさしく分散させるための専用マットレスです。 空気の流れで圧迫を繰り返し解放する「エアマット」や、特殊素材で体圧を広く受け止める「ウレタンマットレス」などがあります。

寝たきりに近い状態の方には、とくに有効です。

体位変換(たいいへんかん)

2時間ごとを目安に体の向きを変えることで、同じ場所への圧迫を和らげます。ただし、体圧分散マットレス(エアマットなど)を併用している場合は、4時間を超えない範囲でよいとされることもあります(間隔は主治医・訪問看護師に確認しましょう)。 それでも、毎晩くり返す夜間の介助は、家族にとってきついもの。状態が進んできたら、訪問介護(ホームヘルパー)や訪問看護との連携を考えるタイミングかもしれません。

「腰が痛い・起き上がれない」という状態が急に悪化したとき、または床ずれができてしまったときは、状態の変化サインのこともあります。主治医や訪問看護師にできるだけ早めに相談してみてください。


介護保険のレンタルが使えます

「でも介護ベッドってすごく高そう…」と思うかもしれません。

介護ベッド(特殊寝台)やサイドレール、エアマットなどは、介護保険のレンタルの対象品目になっています。 要介護認定を受けていれば、月々のレンタル料の1〜3割の自己負担で借りられます。ただし、介護ベッドやエアマットなど一部の品目は、原則として要介護2以上が対象です(軽度の方の例外については、記事末のQ&Aでふれています)。

対象になる方、手続きの流れ、費用のめやすについては、こちらの記事でまとめています。 → 福祉用具レンタル、何が借りられて月いくら?介護ベッドから車椅子まで

担当のケアマネジャーが一緒に選んで手続きをしてくれますので、まずは相談してみてください。 ケアマネジャーがまだいない場合は、市区町村の窓口や地域包括支援センターに問い合わせるところから始められます。

こまり
こまり
つまり、介護ベッドって買わなくても借りられるし、ケアマネさんに頼めばいいってこと?
とも
とも
そうです。自分でお店を探して買わなくていいんです。状態に合うものをケアマネジャーや福祉用具の専門家(福祉用具専門相談員)が一緒に選んでくれます。まずは「ベッドのことで困っている」と伝えるだけで大丈夫ですよ。

まとめ:ベッド周りを整えると、二人分がラクになる

ベッド周りを整えることで、変わることをまとめます。

  • 背上げ・高さ調整つきの介護ベッドで、本人が「ある程度自分で起き上がれる」が戻ることがある
  • 柵・手すりで、つかまりながら起き上がれる・転落リスクが減る
  • マットレス選びで、起き上がりやすさと床ずれ予防のバランスを取る
  • エアマットで、床ずれ(褥瘡)の予防ができる
  • これらのほとんどは介護保険でレンタルできる

家族が抱え起こし続けると、いつか介助する側が倒れてしまいます。 「道具に頼るのは申し訳ない」という気持ちを持つ方もいますが、 道具を上手に使うことは、本人の自立を守ることにもつながります。

どの道具が合うかは、状態によって違います。最終的なご判断は、担当のケアマネジャーや訪問看護師、主治医にご相談ください。 「抱え起こしがつらくなってきた」という一言から相談を始めてみてください。

とも
とも
無理に抱え起こして腰を傷めないでください。家族の体が倒れると、在宅介護は続けられなくなります。道具を使うことは、家族自身を守ることでもあります。
こまり
こまり
ベッド周りひとつで、本人も家族もラクになれるなら、早めに整えてみてほしいな。

家族からよく聞かれる質問

とも
とも
最後に、ご家族からよくいただく疑問をいくつか先に答えておきますね。

要支援でも介護ベッドはレンタルできますか?

要支援1・2の方は、介護予防給付の対象になります。 介護ベッド(特殊寝台)や床ずれ防止用具(エアマット)などは、要介護2以上が原則の対象となっており、要支援では原則として保険適用外です。 ただし、例外的に認められるケース(医師の意見書がある場合など)もありますので、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに確認してみてください。

また、保険の対象にならない場合でも、福祉用具の事業所が独自に、安い料金で貸し出す「自費レンタル」を用意していることも多いです。「保険が使えないから」とあきらめる前に、ケアマネジャーや福祉用具の事業所に「自費でも借りられますか?」と聞いてみてください。安く借りられることがあります。

今ある布団のまま、手すりだけ追加することはできますか?

できます。床置きタイプの手すり(床から立ち上がりを助ける据置式手すり)もあります。 ただし、起き上がりがかなりつらくなっている状態では、手すりだけでは対応しきれないことも多いです。 現状の困り具合をケアマネジャーに伝えて、どの道具が最も合っているか一緒に検討するのがおすすめです。

夜中に体位変換するのがつらいのですが、何か方法はありますか?

夜間の体位変換は、家族の睡眠を大きく削ります。 自動で空気圧を変えてくれる「自動体位変換機能つきのエアマット」や、夜間の訪問介護(夜間対応型訪問介護)を利用する方法もあります。 「夜中が限界」というSOSは、ケアマネジャーに遠慮なく伝えてください。それを聞いて一緒に解決策を考えるのが、ケアマネジャーの仕事です。

「急に起き上がれなくなった」のは、何かのサインですか?

急な変化は、状態が変化しているサインのことがあります。 転倒・骨折が隠れている場合、体の病気が進んでいる場合など、さまざまな理由が考えられます。 数日のうちに急に起き上がりにくくなった、または寝てばかりになってきたと感じたら、まず主治医や訪問看護師に連絡することをおすすめします。 「様子を見る」よりも、早めの確認が安心につながります。

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とも 現役・主任介護支援専門員

現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。

この人について →

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