歩けない親の避難、どうする? 逃げるより前にできること
「この人を連れて、階段を降りられるだろうか」
「避難所に行っても、迷惑をかけるだけかもしれない」
日本の各地で、災害のニュースが流れます。そのたびに、そう思っている方は少なくないと思います。
でも、普段の備えがあれば大丈夫です。 今日は、歩けない親と暮らすご家族に向けて、逃げるより前にできることを整理します。
テレビで聞く「高齢者等避難」って、何のこと?
台風や大雨のニュースで「◯◯市に高齢者等避難が出ました」と聞くことがあります。
これは警戒レベル3にあたる情報です。かんたんに言うと、避難に時間がかかる人は、ここで動き始めてくださいという合図です。
対象になるのは、高齢の方、障害のある方、小さなお子さんがいる家庭、そしてその方を手伝う人です。つまり、親を支えるご家族もここに入ります。
この次の段階が、警戒レベル4の「避難指示」です。ここでは危険な場所にいる人は全員避難します。
ですので、歩けない親と暮らしている場合は、レベル4を待たないのが基本になります。準備にも移動にも時間がかかるからです。「まだ大丈夫そう」と思える段階で動き出すくらいで、ちょうどいいと思います。
逃げないほうが安全なこともあります
大雨のときに、無理に外へ出るほうが危ないことがあります。道路がすでに水につかっていたり、暗くなっていたりする場合です。
そういうときは、家の中の、より安全な場所に移るという考え方があります。2階に上がる、がけや川から遠い側の部屋に移る、といった形です。避難所に行くことだけが避難ではありません。
ただし、これはどの家でも安全という話ではありません。土砂災害の危険がある場所では、建物ごと巻き込まれることがあります。
ですので、先に一度、市区町村のハザードマップを見ておいてください。自分の家が、水につかりやすい場所なのか、土砂の危険がある場所なのか。それによって「家にとどまる」が使えるかどうかが変わります。
役所の窓口でもらえますし、市のホームページでも見られます。晴れている日に、一度だけ見ておく。これだけで、いざというときの判断が変わります。
今日からできる、3つのこと
市に、名前を伝えておく
多くの市区町村には、避難行動要支援者名簿という仕組みがあります。自力で逃げるのがむずかしい方をあらかじめ登録しておいて、いざというときに地域の人が気づけるようにするものです。
登録すると、本人の同意のうえで、消防や民生委員、自治会などに情報が渡ります。
わたしの市では、この登録をするとペットボトルのような筒が支給されます。中に本人の基本情報を書いた紙を入れて、冷蔵庫にしまっておきます。救急車を呼んだときに、そこを見てもらえます。
ただし、この形は市区町村によってちがいます。筒が配られない市もあります。まずは、担当のケアマネジャーか、市の高齢者の窓口に「うちの市はどうなっていますか」と聞いてみてください。
薬を、切らさないために
災害のあとで困ることのひとつが、薬です。数日でも切らすと困る薬を飲んでいる方は、少なくありません。
次の受診のときに、「災害で薬が切れないように、どう備えておけばいいですか」と主治医や薬剤師に相談してみてください。薬の種類によって、できることは変わります。
あわせて、お薬手帳のコピーを1枚、持ち出す袋に入れておくと安心です。手帳そのものは普段使いますので、コピーのほうが確実です。避難先で薬をもらうときに、これがあると話が早くなります。
薬の管理そのものについては、薬の管理、どうしてる?親の飲み忘れ・飲み過ぎを防ぐ工夫 居宅療養管理指導というサービスも有効でも整理しています。
おむつと、口に入るものを少し
意外と抜けやすいのが、おむつやパッドです。数日分を、いつもの置き場所とは別に、まとめておいてください。
食べ物は、いつも食べているものに近いものを選びます。かたいもの、飲み込みにくいものは、こういうときこそ危ないです。飲み込みに不安のある方なら、とろみをつけるものも一緒にしておくと安心です。
台風なら、前もって泊まるという手もあります
台風は、地震とちがって来ることが前もって分かります。ここが大きな違いです。
ですので、日にちが読めるなら、その前後だけショートステイに泊まるという組み方ができることがあります。
わたしも、ショートステイを調整することはあります。ただ、正直に書きますと、そこまでの大きな災害が、これまで担当してきた中では起きていません。ですので「毎回こうしています」と言えるほどの数はありません。
それでも、頭に入れておいていただきたいと思っています。ショートステイは、空きがあるかどうかで決まります。台風が近づいてから探すと、間に合わないことがあります。
「台風が来そうなときは、早めに相談させてください」と、普段のうちにケアマネジャーへ一言伝えておく。これだけで動きが変わります。
ショートステイそのものについては、ショートステイって何?家族が休むために使っていい介護サービスですにまとめてあります。
避難所へ行くと決めたときに
行くと決めた場合、持っていくものは、ふだんの入院の準備に近いです。
- 薬とお薬手帳のコピー
- おむつ・パッド(数日分)
- 介護保険証、負担割合証、健康保険証(コピーでもかまいません)
- ふだん使っている道具(杖、めがね、入れ歯、補聴器の電池)
- 連絡先のメモ(ケアマネジャー、かかりつけ医、家族の携帯番号)
とくに入れ歯と補聴器は、あとから取りに戻れません。慌てると忘れやすいので、持ち出す袋に入れるものの中でも、先に確かめておきたいところです。
避難所には、高齢の方や体の不自由な方のために用意されている場所があります(福祉避難所と呼ばれます)。
福祉避難所への避難の仕方は、市区町村によってちがいます。一般の避難所からあとで移る地域もあれば、あらかじめ対象になる方を決めておいて、福祉避難所へ直接向かう地域もあります。
災害が起きる前に、お住まいの市区町村へ確認しておいてください。当日は、それどころではなくなります。
まとめ
災害の話は、考えるだけで気が重くなります。だから後回しになりがちです。
でも、今日できるのはハザードマップを1回見ることくらいです。それで十分だと思います。
ひとつ済ませておくと、次にニュースが流れたときに、少し落ち着いていられます。
ここまでの話を、1枚にまとめました。印刷して冷蔵庫に貼ったり、ご家族で見ながら話すときに使ってください。
備えの中身は、ご家族の状態によって変わります。 最終的なご判断は、担当のケアマネジャーや専門家にご相談ください。
よくある質問
名簿に登録すれば、誰かが助けに来てくれますか?
助けに来ることを約束する仕組みではありません。登録しておくと、消防や民生委員、自治会などが「ここに支援が必要な方がいる」と分かる形になります。 災害のときは地域の人も被災していますので、必ず誰かが来る、とは考えないでください。それでも、知られていない状態よりは、気づいてもらえる可能性が上がります。
高齢者等避難が出たら、すぐ避難所へ行くべきですか?
行き先は避難所だけではありません。ハザードマップで家が安全な場所なら、2階に移るという選び方もあります。親戚の家に前もって移る方もいます。 大事なのは、レベル4の避難指示を待たずに動き始めることです。準備にも移動にも時間がかかるためです。
台風の前日でも、ショートステイは頼めますか?
空きがあれば相談できますが、直前は難しいことが多いです。台風は近づくのが分かりますので、日にちが読めた時点でケアマネジャーに連絡してください。 ふだんのうちに「台風のときは早めに相談したい」と伝えておくと、動きが早くなります。
日頃の備えは、どうしたらいいですか?
わたし自身は、中身の入った防災セットを買って、そのほかに衣装ケースをひとつ用意して、毛布とカイロ、新聞紙、水を入れて置いてあります。 すぐ持ち出すものと、家にとどまるときに使うものを分けておくと、どちらも用意しやすくなります。背負うのがつらい方には、キャリー付きのものもあります。
※本文でふれた防災リュックは、このあとのリンクからご覧いただけます。中身も重さも商品によってちがいますので、ご利用は自己責任でお願いします。
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現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。
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