親の食事が減り、眠ってばかり…最期が近いときの身体の変化
「最近、ずっと寝てばかりいる」 「ほとんど何も食べなくなってしまった」 「声をかけても返事が少なくなった気がする」
そんな変化に気づいて、胸がぎゅっとなっている方へ。 今日は、看取り期(人生の最期が近い時期)に見られやすい身体の変化について、 一つひとつやさしく解説していきます。
ひとつだけ、最初にお伝えしておきたいことがあります。 看取り期の経過には、個人差がとても大きいです。 この記事で紹介する変化が見られても、「すぐに最期が近い」という意味ではありません。 多くの方に見られる傾向として、参考にしていただければと思います。
「怖いことが書いてある記事かも…」と思わずに読んでいただけたら、うれしいです。 変化の意味を知ることで、少し不安が和らぐこともありますから。
看取り期によく見られる、5つの身体の変化
① 食事や水分を、あまりとらなくなる
食欲が落ちる、飲み物もほとんど飲まなくなる。 これは看取り期の最もよく見られる変化のひとつです。
わたしが現場でいちばん多く相談されるのも、この「食べてくれない」という悩みです。 「ひとくちでも食べさせようと、何種類も試した」 「好きだったものを持って行っても、口をつけてくれない」 そんなお話をよく聞きます。その気持ちは、ほんとうに愛情そのものだと思います。
ただ、この時期の身体は、食べ物や水分をうまく消化・吸収できなくなっていることが多く、 無理に食べさせることが、かえって苦しさにつながることもあります。 むくみや痰が増えたり、お腹が張って不快感が出たりすることもあるんです。
「食べなくなった=すぐに危ない」ではなく、 身体が自然に準備を進めているサインとして受け取っていただけると、 少し気持ちが楽になるかもしれません。
② 眠っている時間がどんどん長くなる
1日のほとんどを眠って過ごすようになる。 起こしても目を開けるのが難しそうになってくる。
これも、とてもよく見られる変化です。
家族の方からは「起こしたほうがいいのかな」「眠りっぱなしは良くないのでは」というご相談をよくいただきます。 お気持ちはすごくよくわかるのですが、この深い眠りは、身体がエネルギーを温存しようとしている状態です。 苦しそうでなければ、そっとそばにいてあげるだけでいい場合が多いです。
声をかけたり、手を握ったりすることはできますよ。 聴覚(耳)は最後まで残りやすいといわれているので、 声は届いているかもしれません。
③ 会話や反応が、少なくなってくる
目が合いにくくなる、返事が一言になる、 ぼんやりしていることが増える。
「わたしのことが分からなくなってしまった?」と悲しくなる方もいます。 でも、これも身体の自然な変化です。 意識がゆっくりと遠ざかっていく過程で起こることが多く、 本人が苦しんでいるわけではないことがほとんどです。
誤解されやすいのですが、反応が薄くなることは「拒絶している」とか「気持ちが離れた」ということではありません。 身体の側の変化であって、気持ちとは別の話なんです。
ふと目を開けたとき、表情がやわらかかった、手を握り返してくれた、 そういう一瞬を大切にしてください。
④ トイレの回数が減る
尿の量や回数が少なくなる、おむつを使っていても出る量が目に見えて減る。
水分をあまりとらなくなるので、それに伴って自然に起こります。 腎臓(じんぞう)の働きも、少しずつ落ちてきます。
尿の色が濃くなったり、においが強くなったりすることもあります。 これも身体の変化として知っておいていただければ、 「何かが壊れた」という恐怖感を少し和らげられると思います。
⑤ 手足が冷たくなる、色が変わる
手や足の先が冷たくなる、指先や膝の周りが紫がかった色になってくる。
これは、身体が大切な臓器(心臓や脳など)を守るために、 末端(手足の先)への血液を少なくしている状態です。 血液が中心に集まってきているサインと理解していただくとよいと思います。
温めてあげたい気持ちはよく分かるのですが、 この時期は温罨法(おんあんぽう=温めること)も慎重にしたほうがよい場合があります。 やり方が気になる場合は、訪問看護師さんに確認してみてください。
「無理に食べさせなくていい」ってどういうこと?
これは、家族の方にとってとても難しい話だと思います。
食べることはいのちの基本、という感覚はみんなが持っています。 食べてほしい、飲んでほしい、という気持ちは、愛情の表れです。 だから「食べさせなくていい」と言われると、罪悪感を覚える方も少なくありません。 「何もしてあげられない」「見捨てているみたい」という気持ちになるのは、 愛情がある証拠だからこそ、なんだと思います。
でも看取り期の身体は、栄養を受け取ることより、 静かに休むことを必要としている状態に変わっていることがあります。
無理に食べ物を口に入れると、むせてしまったり(誤嚥=ごえんのリスク)、 気持ち悪さを感じさせてしまうこともあります。
「食べる喜び」は、量じゃなくていい
食べる量が減っていても、「好きなものを少しだけ味わう」という時間は、 本人にとって穏やかなひとときになることがあります。
アイスを少しだけ、お茶をひとくち、好きなお菓子を舌の上で溶かす。 そういった「楽しむための食」は、無理に食べさせることとはまったく違います。 本人が嫌がっていないなら、そういう時間を大切にしてあげてください。
口の中を湿らせてあげるだけでも違う
食事がとれなくなってきたとき、口の中を湿らせてあげる「口腔ケア(こうくうけあ)」は、 ご本人の不快感を和らげることができます。
口の中が乾くと、のどの渇きや不快感が増すことがあります。 スポンジブラシや綿棒で少し湿らせてあげるだけでも、違います。 やり方は訪問看護師さんや歯科衛生士さんに教えてもらえますよ。
口腔ケアについてもう少し知りたい方は、「口腔ケアって何をすればいい?義歯が合わない・嚥下の不安を整理」の記事も参考にしてみてください。
こんなときは、医療職の方へ相談を
変化がゆっくりと進んでいる場合は、看取り期の自然な経過であることが多いです。 でも、以下のような場面では、主治医や訪問看護師さんへ連絡してください。
- 表情や声、身体の様子から、痛みや苦しさが強そうに見えるとき
- 息の仕方が急に変わった、顔色が急に変わったなど、急な変化があったとき
- 「これで合ってるの?」「どうしてあげれば…」と、判断に迷って不安なとき
「大げさかな」と遠慮しなくて大丈夫です。 訪問看護師さんや主治医は、こういうときのためにいる専門職です。 迷ったら電話してください。
もし、かかりつけ医との関係がまだ整っていないという方は、「親のかかりつけ医、どう選ぶ?介護がはじまる前に知っておきたいこと」も読んでみてください。
まとめ:変化は、身体が最期へ向かう自然な道のり
食べなくなること、眠り続けること、反応が薄くなること。 どれも、身体が自分のペースで最期へ向かっている過程です。
それを目の前にする家族の方は、怖くて当たり前です。 つらくて当たり前です。
「もっとできることがあったんじゃないか」と感じる方もいると思います。 でも、どうかひとつだけ聞いてください。
そばにいること。声をかけること。手を握ること。 これは、介護の中でいちばん大切なことのひとつです。 食事を作ったり、体を拭いたり、動かしたり、そういう「すること」だけが介護じゃない。 「いっしょにいる」こと、「あなたのそばにいるよ」と伝えること、 それだけで、もう十分に介護しているんだと、わたしは思っています。
「何かひどいことが起きている」ではなく、 「身体が、静かに旅立ちの準備をしている」というふうに、 少しだけ見方を変えてみてほしいんです。
あなたはずっと、よくやってきました。 自分を責めないでください。
不安なときは、「これって普通なのかな?」という相談だけでも大丈夫です。
家族だけで抱え込まず、ケアマネジャーや訪問看護師、主治医と一緒に考えていきましょう。
最終的なご判断や対応については、担当のケアマネジャー・主治医・訪問看護師にご相談ください。 ひとりで抱えないでくださいね。
介護の現場でよく使われるもの
- 口腔保湿ジェル
- スポンジブラシ
- 体位変換クッション
※商品選びに迷ったら担当の訪問看護師さんやケアマネジャーにも相談してみてください。
現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。
この人について →