在宅介護

認知症の親のお金が心配…どう守る?成年後見と日常生活自立支援

認知症の親のお金が心配…どう守る?成年後見と日常生活自立支援

「最近、お母さんが同じ請求書を何度も払ってしまっていて…」 「訪問販売でよくわからないものを契約してきて、どうしたらいいか」

こんな話、ケアマネの仕事をしていると、ほんとうによく聞きます。 お金や契約のことは、健康の話と同じくらい、家族をヒヤッとさせる場面のひとつです。

でも、心配だからといってすぐ手を出すわけにもいかない、難しさがありますよね。 今日は「お金まわりのこと、どうやって守ればいいの?」という問いに、やさしく答えていきます。

ざっくり言うと——

  • 少し心配になってきた段階 → 日常生活自立支援事業(社協のサポート)
  • 判断がだんだん難しくなってきた → 成年後見制度

まずはこの2つ。今日は、その違いと使い分けを、やさしく説明していきます。


とも
とも
こんにちは。今日は、親御さんのお金や契約まわりが心配になってきたときのための話をしますね。制度の名前は聞きなれないかもしれませんが、「こういう仕組みがあるんだ」と知っておくだけで、いざというときに落ち着けますよ。
こまり
こまり
お金のこと、家族がなんとかしてあげたくても、勝手に動けないもんね。何か頼れるものってあるの?
とも
とも
あります。「日常生活自立支援事業」と「成年後見制度」という、2つの仕組みです。名前だけ聞くと堅苦しいですが、どちらも「ご本人のお金や権利を守るための味方」なんですよ。

親のお金まわりで起きやすいこと

母と娘が書類を一緒に確認する温かな場面

年齢を重ねたり、認知症が進んできたりすると、こんな場面が増えてきます。

  • 同じ請求書を2回払ってしまう
  • 通帳や印鑑をどこに置いたか分からなくなる
  • 訪問販売や電話勧誘で、必要のない契約をしてしまう
  • ATMの操作が難しくなり、お金の出し入れが一人ではできなくなる

「おかしいな」と気づいたとき、家族が通帳を管理したり、お金を預かったりすることもあるかもしれません。 ただ、それが「良かれと思って」のことでも、あとで思わぬ行き違いを生むことがあります。たとえば、親御さんが亡くなったあとに、きょうだいから「勝手に使ったんじゃないの?」と疑われてしまう——ケアマネをしていると、こうしたお金をめぐる家族のもつれは、本当に珍しくありません。

だからこそ、公的な仕組みを上手に使うことが大切なんです。


①日常生活自立支援事業──「今のうちから」使える仕組み

日常生活自立支援事業(にちじょうせいかつじりつしえんじぎょう)とは、社会福祉協議会(通称:社協)が提供する、日々のお金まわりのサポートです。

主にできることは、こんなことです。

  • 福祉サービスの利用手続きを手伝ってもらう
  • 日常的な金銭管理(公共料金の支払い手続きなど)
  • 通帳や印鑑、権利証などの大切な書類を、安全に預かってもらう(預かる範囲は契約・地域によって異なります)

ポイントは、「判断力がある程度あるうちから使える」こと。 ご本人が「この契約をします」「このサービスを利用します」という意思をまだ示せる段階から、一緒にサポートしてもらえます。

費用は社協によって異なりますが、相談・計画作成は無料、支援は1回あたり数百〜千数百円程度のことが多く、公的なサービスとしてはかなり低額です(地域によって異なります)。

こまり
こまり
じゃあ、「まだそんなに悪くないけど、ちょっと心配」くらいの段階で使えるってこと?
とも
とも
そうなんです。むしろ、そのくらいの段階が使いどころです。「怪しい契約をしてしまう前に、サポートを入れる」という使い方ができるので、早めに動ける人ほど安心です。

②成年後見制度──「法的に守る」仕組み

成年後見制度(せいねんこうけんせいど)は、認知症や知的障害などによって判断能力が低下した人の財産や権利を、法的に守る仕組みです。

大きく2種類あります。

法定後見(ほうていこうけん)

すでに判断能力が低下しているときに、家庭裁判所に申し立てて、後見人(こうけんにん)を選んでもらうもの。 本人の判断能力のレベルに応じて「後見・保佐・補助」の3段階があります。

後見人には、家族がなれることもありますが、弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職が選ばれるケースも多いです。

任意後見(にんいこうけん)

まだ判断能力がある元気なうちに、自分で「将来、誰に自分の財産を管理してもらうか」を決めておく仕組みです。 信頼できる人や専門家と、公証役場で「公正証書」という正式な契約を結んでおきます。そして実際に判断能力が落ちてきたら、家庭裁判所に申し立てて、見守り役の「任意後見監督人」を選んでもらったときから、契約の効力が始まります。

任意後見は「将来の備え」として自分で決められるのが最大のメリット。 「誰に任せるかを、自分が元気なうちに決めておきたい」という方には、特に勧めたい仕組みです。

ひとつ知っておきたいのは、成年後見でお金を管理するときは、そのお金は「ご本人のため」に使うのが原則だということ。相続税の対策や、家族のための生前贈与などは、基本的にはできなくなります。少し不便に感じるかもしれませんが、それはご本人の財産を守るための仕組みだから。自由に動かせるお金ではなくなるかわりに、ご本人の暮らしとお金が、しっかり守られます。


2つの仕組みの使い分け

専門家と高齢者が穏やかに書類を確認する様子

少し整理してみますね。

日常生活自立支援事業成年後見制度
いつ使う?判断力があるうちの、早めの段階判断が難しくなってきたとき(任意後見は元気なうちに準備)
対象判断力がある程度ある方判断力が低下している方(法定)または元気なうちに備える(任意)
運営社会福祉協議会家庭裁判所・専門職後見人
費用低額(地域差あり)後見人への報酬が発生する場合あり
できること日常的なお金管理・書類預かり法的な契約・財産管理全般

ひとことで言うなら、 「日常的にちょっとサポートが必要」→ 日常生活自立支援事業 「法的に守る必要がある・判断が難しくなってきた」→ 成年後見制度

という使い分けです。どちらか一方だけが正解ではなく、状況に応じて選んだり、組み合わせたりします。

こまり
こまり
え、2つって全然ちがうんだね。どっちかだけじゃなく、流れで変わることもあるの?
とも
とも
あります。「日常生活自立支援事業でサポートしてもらいながら過ごしていたけれど、認知症が進んで成年後見に移行した」というケースもよくあります。状態が変わっていくのが介護ですから、制度も組み合わせて使う、という発想が大事なんです。

「早め」が大事な理由

成年後見制度、特に任意後見は「元気なうちにしか決められない」ことを、ぜひ覚えておいてください。

制度は、困ってから使おうとすると、もう選べないことがあります。元気なうちだからこそ、本人が「誰に、どうしてほしいか」を自分で決められる。それが、何より大きな価値なんです。

判断能力がなくなってからでは、「誰に任せるかを自分で決める」ことができません。 そうなると、家族が家庭裁判所に申し立てをする法定後見の手続きになり、時間もかかります。

「まだ早い」「大げさかな」と思うタイミングが、実はちょうどいい相談の時期です。 親御さんが比較的元気で話し合えるうちに、「将来のこと、ちょっと考えておかない?」と切り出してみることが、結果として家族みんなを助けます。

なお、お金の管理や書類の保管についての備えは、制度を使う・使わないにかかわらず、家族で現状を把握しておくことも大切です。 介護費用が高くて不安な方へ。高額介護サービス費の仕組みを解説のような、お金まわりの制度についての記事もあわせてご参考にどうぞ。


相談窓口はどこ?

「相談してみようかな」と思ったら、以下の場所が入口になります。

  • 社会福祉協議会(社協):日常生活自立支援事業の窓口。まず電話で相談できます
  • 地域包括支援センター:介護のことも含めて相談できる、地域の総合相談窓口
  • 家庭裁判所:法定後見の申し立て窓口。ただし複雑な手続きのため、専門家への相談を先にすることが多いです
  • 専門職:司法書士・弁護士・社会福祉士などが、任意後見契約や後見申立のサポートをしています

「何から聞けばいいか分からない」という場合は、地域包括支援センターか社協への相談が、いちばんハードルが低い入口です。担当のケアマネジャーがいれば、まずそちらに「お金まわりのことで相談したい」と話してみても大丈夫です。


まとめ

こまり
こまり
つまり、「日々の支払いやお金が心配」なら社協の日常生活自立支援事業、「判断力が落ちてきた・法的に守りたい」なら成年後見制度。で、任意後見は元気なうちにやっておく、ってこと?
とも
とも
まさにそのとおりです。親のお金を守ることは、お金だけを守ることではありません。その人らしい暮らしや、家族との信頼を守ることでもあります。困ってからでは選べない制度もあるからこそ、「まだ早いかな」と思う今が、いちばん相談しやすいタイミングなんです。

よくある質問(FAQ)

Q. 親のキャッシュカードを預かって、代わりにお金をおろすのは違法ですか?

はっきり「違法」とも「合法」とも言い切れない、グレーな部分です。ご本人に頼まれて生活費をおろすくらいなら問題になりにくいですが、金額が大きかったり、使いみちがはっきりしないと、あとで「勝手に使ったのでは」と親族間のトラブルの種になりがちです。心配なときは、日常生活自立支援事業や成年後見制度といった公的な仕組みを使っておくほうが、ご本人も家族も安心です。

Q. 後見人は、家族がなれますか?希望した人を選べますか?

申し立てのときに「この人にお願いしたい」と候補者を挙げることはできます。ただ、最終的に誰を選ぶかを決めるのは家庭裁判所です。ご本人にいちばん合う人として、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれることもあります。「必ず希望どおりになるわけではない」と知っておくと、あとで戸惑いません(選ばれた後見人について、不服の申し立てはできない決まりです)。

Q. 一度始めたら、途中でやめられますか?

成年後見は、ご本人の判断能力が回復したと認められる場合をのぞいて、原則として途中でやめることはできません。「困ったときだけ一時的に」ではなく、続いていく仕組みだと理解しておくことが大切です。だからこそ、始める前にじっくり相談して、納得してから決めるのがおすすめです。

Q. 費用はどのくらいかかりますか?

申し立てのときは、収入印紙や登記の手数料などで数千円ほどです。ご本人の状態を医師が詳しく判断する「鑑定」が必要な場合は、別に費用がかかります(多くは10万円以内のことが多いです)。また、専門職が後見人になった場合は、その働きに対する報酬が家庭裁判所の決定で発生します。目安は月2万円ほどからで、管理する財産が多いほど高くなります。ご家族が後見人になり、報酬を受け取らないケースもあります。

Q. 後見人がつけば、入院や手術に同意してもらえますか?

いいえ。手術や治療を受けるかどうかといった医療の同意は、ご本人にしかできない大切な判断とされていて、後見人(や身元保証人)に同意する権限はありません。後見人が支えるのは、契約やお金の管理、必要な手続きなどの面です。ここはよく誤解されるところなので、覚えておいてもらえたらと思います。


この記事は、情報提供を目的として作成しています。 制度の詳細・費用・手続きは地域やケースによって異なります。具体的な手続きや判断については、必ず担当のケアマネジャー・社会福祉協議会・地域包括支援センター・弁護士・司法書士などの専門家にご相談ください。この記事の内容は、法的判断の代わりになるものではありません。

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とも 現役・主任介護支援専門員

現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。

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