「自分でできた」を増やす小道具。届かない・つかめない・留められないを助ける
「なんでもやってあげるのが、親孝行じゃないの?」
そう思っていたのに、気づいたら親が何もしなくなっていた——そんな経験、介護をしている家族から、よく聞きます。
手伝う気持ちはやさしさから来ている。でも、「自分でできる」を残すことも、大切な支えのひとつです。
今日は、ちょっとした小道具(自助具)を使って「自分でできた」を増やすヒントをお届けします。
「やってあげる」より「自分でできる」を残す意味
介護の基本的な考え方に、「自立支援」 という言葉があります。
「自立」というと「ひとりでなんでもやる」というイメージかもしれません。でも、ここでの自立は少し違います。本人が持っている力をできるだけ活かして、その人らしい生活を続けること——それが自立支援の考え方です。
必要以上に手伝う状態が続くと、本人が持っている力を使う機会が少なくなることがあります。また、「自分ではできない」と感じる場面が増えることで、自信や意欲が低下してしまう場合もあります。
一方で、「自分でできた」という小さな成功体験は、本人の自信を保ち、生活のハリにつながります。
「ここは自分で。ここは手伝ってもらう」 という線引きが、本人にとっても、介護する家族にとっても、長続きしやすいバランスなのです。
困りごと別:こんな道具があります
自助具とは、体の動かしにくさを補い、食事や着替えなどの日常動作を自分で行いやすくする道具です。
困りごと別に、代表的なものをご紹介します。
届かない・拾えない → リーチャー
腰をかがめるのがつらい、手が上まで上がりにくい、そんなときに活躍するのが「リーチャー」です。マジックハンドのような形で、床のものを拾ったり、棚の上のものを取ったりできます。
杖を使っている方や、片手しか動かしにくい方にも使いやすいタイプが揃っています。
ただし、重い物や割れ物を高い場所から取る使い方は、落下や転倒につながることがあります。軽い物を取る用途を中心にし、無理な使い方は避けましょう。
ボタンが留められない → ボタンエイド・前あきの服
細かいボタンの掛け外しは、指先の力が落ちてくると一気にむずかしくなります。「ボタンエイド」は、ボタンを穴に通すのを助けるワイヤー状の小道具です。
あわせて、マジックテープや大きめのスナップで留められる「前あきの服」 を選ぶのも、着替えをぐっとラクにするコツです。洋服の工夫は道具と組み合わせると効果的です。
靴下が履けない → ソックスエイド
靴下を履くとき、足元まで腰をかがめる動作は、腰の手術後や股関節が硬い方にはとくに負担が大きいです。
「ソックスエイド」は、靴下をあらかじめ筒状のガイドにかぶせ、足を差し込んでひもを引っ張ると靴下が上がってくる道具です。一度コツをつかむと、意外とスムーズに使えます。
すくえない・こぼす → 滑り止め食器・自助スプーン
食事のとき、お茶碗が滑って片手で持てない、スプーンがうまく使えずこぼしてしまう——こうした悩みには、食器と道具の工夫が役立ちます。
底に滑り止めがついた食器、縁が高くてすくいやすい皿、手首の角度に合わせて曲げられる「自助スプーン」などがあります。食事がうまくできると、食欲や食の楽しみも保たれやすくなります。
食器やスプーンの選び方について、もう少し詳しく知りたい方は「自分で食べる」を支える食器・スプーンの選び方もあわせてご覧ください。
瓶やペットボトルが開かない → オープナー
握力が落ちてくると、ペットボトルのキャップや瓶の蓋を開けることがとても難しくなります。「これくらい自分でできる」と思っていたことができなくなると、じわっと気力も削がれてしまうものです。
リング状・シリコン製・電動タイプなど、さまざまな形の「オープナー」があります。使う場面や手の状態に合わせて選べます。
選ぶときの3つのコツ
自助具は種類が多く、どれを選べばいいか迷うこともあります。選ぶときに意識するといいポイントをまとめます。
本人がどの動きならできるかを起点に選ぶ
自助具は「できない動作を補う」ためのものです。なので、「何がどうできないのか」を観察してから探すのが基本です。
「全体的に動かしにくい」ではなく、「右手の力は入るけど左手がむずかしい」「腰を曲げるのがつらい」など、具体的な困りごとを出発点にすると、合うものが見つかりやすくなります。
まず1つから試してみる
いくつも一気に揃えるより、まず困りごとの大きいものを1つだけ試すのがおすすめです。実際に使ってみると、「これは使いやすい」「こっちの形の方がいい」という感覚がつかめてきます。
今回紹介したリーチャーやボタンエイド、ソックスエイドなどは、基本的に介護保険の対象外で、自費で購入します。価格は商品によって異なりますが、比較的試しやすいものもあります。
合う物の選定はプロに相談する
なお、自助具の選定については、担当のケアマネジャーや作業療法士(OT)に相談するのが、いちばん確実な近道です。
作業療法士(OT)は、食事や着替えなどの日常生活動作を専門的に見ながら、本人に合う道具や使い方を一緒に考えるリハビリの専門職です。
担当のケアマネジャーに相談すると、本人の状態や希望に応じて、作業療法士がいる訪問リハビリや通所リハビリなどを検討してもらえることがあります。
まとめ:「やってあげる」と「自分でできる」を両方持つ
自助具は、調べてみると思っていたより種類豊富で、価格も手頃なものが多くあります。まずは、日常のどんな場面で困っているかをひとつ書き出してみるところから始めてみてください。
また、どの道具が本人に合うかは、使う方の身体の状態によって変わります。合う物の選定は、担当のケアマネジャーや作業療法士(OT)に相談すると、より確実に見つかりやすいです。
ひとつの道具で「自分でできた」が増えると、介護をする家族の気持ちも、少し軽くなることがあります。完璧にやり切ることより、お互いにちょっとラクになる工夫を、一緒に探していきましょう。
家族からよく聞かれること
自助具は介護保険で買えますか?
リーチャーやボタンエイド、ソックスエイドなど、今回紹介した自助具は、原則として介護保険の対象外で、自費で購入します。ただし、入浴補助用具など、介護保険の購入対象になる福祉用具もあります。迷ったときは担当のケアマネジャーに確認してください。
自助具はどこで売っていますか?
通販サイト、ドラッグストア、介護用品店、ホームセンターなどで手に入ります。実際に手に取って選びたいときは、福祉用具を展示している介護用品店だと、試させてもらえることもあります。作業療法士(OT)に相談すると、本人に合う商品を具体的に教えてもらえることもあります。
種類が多くて、どれを選べばいいか分かりません。
まずは「何がどう困っているか」をひとつだけ書き出すところから始めると、選びやすくなります。「腰を曲げるのがつらい」「左手が使いにくい」など、具体的な困りごとが出発点です。それでも迷うときは、担当のケアマネジャーや作業療法士(OT)に相談するのがいちばん確実です。
なお、福祉用具を幅広く調べたい方には、福祉用具レンタル、何が借りられて月いくら?介護ベッドから車椅子までの記事も参考にしてみてください。レンタルできる品目と費用感がまとめてあります。
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現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。
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