介護で家事が回らない。洗濯・そうじの手抜きコツと頼れる先
「洗濯物が山になってる」 「そうじする気力なんて、もうどこにもない」 「こんなことも満足にできなくて、わたし最低だ…」
介護が始まってから、そう感じてしまっている方はいませんか。 でも、まわらなくて当然なんです。
今日は、「どこまで手を抜いていいか」「どこに頼っていいか」を、罪悪感をいったん横に置いて一緒に整理していきます。
介護が始まると家事が回らなくなるのは、自然なこと
介護が始まるまで、「家事」は日常の背景にあるものでした。 でも介護が加わった途端、その背景が一気に前景に出てきます。
通院の付き添い、食事の介助、薬の管理、声かけ、ケアマネジャーとのやりとり—— これだけで一日が終わる日があっても、まったく不思議ではありません。
しかも介護には、はっきりした「終わり」が見えにくい。 だからこそ「今日だけ頑張る」ではなく、「明日も続けられる形」を探すことが大事になります。
家事が後回しになるのは、あなたがだらしないからではありません。それだけ介護に真剣に向き合っているからです。
介護の疲れと自分への責めが重なると、じわじわと心が削れていきます。 介護で怒鳴ってしまった。自分を責めすぎないための話でも書いていますが、限界を超える前に「どこかで手を抜いていい」という許可を自分に出すことが、長く介護を続けるための大切な視点です。
「全部ちゃんとやらなきゃ」と思い詰めなくても大丈夫です。 少し肩の力を抜きながら、この先を読んでみてください。
「下げていい家事」と「キープしたいこと」の分け方
すべての家事を同じ重さで抱えると、全部が中途半端になります。 まず「優先順位を下げていいもの」と「最低限キープしたいもの」を分けてみましょう。
優先順位を下げてもいい家事
- 洗濯物をたたむ・しまう:乾いたらカゴに入れて、そこから取り出して着ればOK
- そうじの頻度:週1を2週に1回に。目に見える汚れだけ拭く「スポットそうじ」で十分
- 料理の手間とレパートリー:冷凍食品・レトルト・宅配弁当を活用していい。同じメニューが続いても大丈夫
- 窓ふき・換気扇・冷蔵庫の整理:緊急ではありません。シーズンに1回でも暮らせます
最低限キープしたいこと
ここには、家事とは呼びにくいものも入っています。でも、崩れると介護そのものが続かなくなるところです。
- 食事の確保:親も自分も、食べないと動けません。手をかける必要はありませんが、食事と水分が細くなっていないかだけは気にかけてください
- 薬・医療材料の管理:これは家事というより「ケア」の範疇。抜くと体調に直結します
- トイレ・浴室まわりの最低限の清潔:感染症や転倒のリスクに関わります
- 自分自身の睡眠と休息:家族が倒れると、介護そのものが立ち行かなくなります
「完璧にやる」から「生活が回るだけやる」に切り替えてみてください。 完璧な家より、疲弊していない家族のほうが、介護される本人にとっても安心です。
時短の工夫——少し楽になるヒント
手を抜くにも「コツ」があります。試しやすいものをいくつかご紹介します。
まとめ洗い&乾燥機に任せる
洗濯は「毎日少量」より「2〜3日まとめて」のほうが、体への負担が小さくなることがあります。 乾燥機能があれば、干す・取り込むの手間をまるごとカットできます。
洗濯機の買い替えは大きな買い物なので、まずはコインランドリーの大型乾燥機を週1回使ってみる、という試し方もあります。
使い捨てアイテムを遠慮なく使う
紙皿・紙コップ・使い捨て手袋・フローリング用の使い捨てシート——介護の場面では、衛生面からも役に立ちます。 「もったいない」より「自分の体力を使い切らない」を優先してください。ズボラではなく、賢い省エネです。
ロボット掃除機と自動調理家電
ロボット掃除機は、床の掃き・吸い取りを任せられます。
実は、わたしも自宅で使っています。 「高いし、そこまでのものかな」とずっと迷っていたのですが、思い切って買ってみたら、掃除機を出して・かけて・しまう時間がまるごと消えました。たった15分でも、それが毎日となると大きい。床のことを気にかける時間そのものが無くなったのが、いちばん助かっています。もっと早く買えばよかった、というのが正直なところです。
わたしが使っているものは、記事のいちばん下にリンクを載せておきますね。
電気調理鍋や炊飯器の「自動調理モード」も、材料を入れたらあとは放置できる味方です。 朝のうちにセットしておけば、介助をしている間に一品できあがっています。
宅配サービスの活用
食材の買い出しは、想像以上に体力を使います。 ネットスーパーや食材宅配を使えば、買い物そのものを減らせます。
調理の手間まで省きたい場合は、配食サービスって実際どう?栄養・安否確認まで対応できる理由でも紹介しているように、配食サービス(宅配弁当)が選択肢になります。食事の確保と安否確認を同時にカバーできるものもあります。
洗濯の「におい」がつらいときは
介護の家事の中で、意外と多いのが「におい」の相談です。 尿や便が付いた衣類・シーツは、ふつうに洗っただけではにおいが残ってしまうことがあります。
しんどさが増す前に、こんな方法を試してみてください。
- 洗う前に、ぬるま湯で20〜30分ほどつけ置きする:においのもとが落ちやすくなります
- 酸素系漂白剤を使う:色柄物にも使いやすく、消臭・除菌に向いています(塩素系との混ぜ使いは避けてください)
- においが強いものだけ、分けて洗う:全部をまとめて洗うと、においが移ってしまうことがあります
- 思い切って買い替える:タオルや肌着などは、何度洗ってもにおいが取れなくなることがあります。そうなったら、無理に使い続けず買い替えるのも一つの方法です
それでも追いつかないときは、寝具など大物だけをクリーニングや宅配洗濯サービスに出す手もあります。 「においを完全に消す」ではなく「気にならない程度まで下げる」で十分です。
外に頼る選択肢と、正しい線引き
介護保険の「生活援助」が使える条件
介護保険のヘルパーサービス(訪問介護)には、大きく2種類あります。
身体介護(入浴・排泄・食事の介助など、体に直接触れる介護)は、同居のご家族がいても利用できます。
一方、生活援助(掃除・洗濯・調理・買い物など)は、使える条件が決まっています。 ご本人が一人暮らしの場合、または同居のご家族が障害・疾病などで家事を行うことが困難な場合が対象です。障害や病気がなくても、家事を行うことが現実的に難しい事情があれば、対象になることがあります。
「家族が同居している=使えない」ではありません
ここが、いちばん誤解されやすいところです。
同居のご家族がいることだけを理由に、一律に「使えません」と決められるものではありません。 厚生労働省も、同居家族がいることのみを判断基準にして機械的に可否を決めないよう、自治体に通知を出しています。
実際に「やむを得ない事情」として考慮されるのは、たとえばこんな場合です。
- 同居のご家族が仕事などで長時間家を空けていて、日中は事実上ひとり暮らしの状態になっている
- ご家族との関係に深刻な事情があり、援助を期待するのが難しい
ただ、「同居していても誰でも使える」ということでもありません。 「頼みにくい」「気を遣う」というだけでは理由になりにくい、とも整理されています。 つまり使える・使えないを分けるのは”同居しているかどうか”ではなく、“その方の暮らしの実情”ということです。
判断には、市区町村への確認が入ることもあります
もうひとつ知っておいていただきたいのが、この可否は、ケアマネジャーだけで決められるものではないということです。
介護保険を運営しているのは、お住まいの市区町村です。 そのため「うちの場合はやむを得ない事情にあたるか」は、ケアマネジャーが状況を整理したうえで、市区町村(保険者)に確認をとってから判断されることがあります。
だから、その場ですぐ「使えます」と返事が来ないこともあります。 でもそれは断られているのではなく、確認に時間がかかっているだけ、ということも多いんです。
まずは「うちの場合はどうでしょうか」と、担当のケアマネジャーに具体的な状況を伝えてみてください。仕事で家を空ける時間、体調のこと、家族関係のこと——伝えた事実が多いほど、市区町村に説明できる材料が増えます。
介護保険で難しいときの、もう一つの道
生活援助が使えない場合でも、ひとりで抱えなければいけないわけではありません。 介護保険の外で頼める選択肢があります。
- 自費のヘルパー(保険外サービス):介護保険の条件を受けないため、同居のご家族がいても家事を依頼できます。費用は全額自己負担です
- 民間の家事代行サービス:掃除・洗濯・料理などを、単発から頼めるところもあります
- 宅配・ネットスーパー・配食サービス:買い物と料理の負担を、そのまま外に出せます
- 時短家電の導入:食洗機、乾燥機つき洗濯機、ロボット掃除機など
このあたりは介護保険のヘルパーに断られたら?自費ヘルパー・家事代行という手でくわしく整理していますので、あわせて読んでみてください。
自費サービスは、何にお金がかかるのか
「全額自己負担」と聞くと身構えてしまいますが、何にいくらかかるのかが分かると、意外と見通しが立ちます。 事業者によって違いますが、だいたい次のような組み立てになっていることが多いです。
- 基本料金:「1時間あたりいくら」で、頼んだ時間ぶんかかります。ここが費用の中心です
- 交通費:スタッフが自宅に来るための実費。1回ごとに数百円ほど加わることがあります
- 初回の登録料・入会金:最初だけかかる場合があります。単発利用なら不要なところも
- 指名料・時間帯の割増:「同じ人に来てほしい」「早朝や夜にお願いしたい」といった希望に対して加算されることがあります
- キャンセル料:前日・当日のキャンセルでかかることがあります。介護は急な予定変更が起きやすいので、申し込む前にここだけは必ず確認しておくと安心です
つまり、「時間」と「回数」を決めれば、費用はだいたい読めるということです。
「全部お願いする」でなくていい
ここで、記事の前半とちょうど逆の見方をしてみてください。
前半では「自分がやる家事の、優先順位を下げる」話をしました。 外に頼むときは、その逆です。頼む側も、全部お願いする必要はありません。
いちばんしんどい家事を、ひとつだけ外に出す。 たとえば「掃除だけ月2回」「まとめ洗いの日だけ」「作り置きだけ」。 それだけでも、時間と気持ちの余白は確実に生まれますし、費用も抑えられます。
「頼むなら全部お願いしないと申し訳ない」と感じる方は多いのですが、そんなことはありません。 一部だけ頼る、は立派な使い方です。
「ヘルパーさんに頼めない」ではなく「介護保険以外の方法で、必要なところだけ頼む」。 その発想の転換だけで、ずいぶん息がしやすくなります。
時間は増やせない。でも、使い方は選べる
介護をしている人も、していない人も、一日は同じ24時間です。 時間そのものを増やすことは、誰にもできません。
でも、その24時間を何に使うかは、自分で選んでいいんです。
道具に任せる。人に頼む。そして「今日はやらない」と決める。 なかでも「やらない」と決めることは、いちばん勇気がいる選択だと思います。手を抜いているのではなく、限りある時間をどこに置くかを、自分で決めているだけ。
選んでいい、と自分に許可を出せた人から、介護は少しずつ続けやすくなっていきます。 あなたはもう、十分に頑張っています。
まとめ:完璧じゃなくていい。生活が回れば十分
家事は、誰かに「ちゃんとやれ」と採点されるものではありません。 介護をしている間の家事は、「生活を壊さない最低限」で十分です。
- 下げられる家事は優先順位を下げる、使える道具は遠慮なく使う
- 食事や買い物は、宅配サービスを使っていい
- 洗濯のにおいは「消す」より「気にならない程度まで下げる」
- 生活援助は、同居しているだけで一律に使えないわけではない。まずは相談してみる
- 介護保険で難しいときは、自費ヘルパーや家事代行という道がある
自分を責めなくて大丈夫です。家事ができていなくても、介護をしているあなたは十分に頑張っています。
頼ることは、逃げではありません。あなたが倒れてしまったら、介護は続けられません。 家事の手を抜くことは、長く介護を続けるための「選択」です。
ご家庭の状況に合った使い方については、担当のケアマネジャーや地域包括支援センター(高齢者の暮らしのことを無料で相談できる、地域の総合相談窓口)にご相談ください。「こういうサービスを考えているんですが、うちの場合はどこまで使えますか」という聞き方で大丈夫です。
最終的なご判断は、担当のケアマネジャーや専門家にご相談ください。
家族からよく聞かれる質問
同居していても、生活援助を使えるケースはありますか?
はい、あります。同居のご家族が仕事などで長時間不在で日中は事実上ひとり暮らしの状態、あるいは家族関係に深刻な事情があって援助が期待できない——といった「やむを得ない事情」があると認められた場合には、生活援助を使えることがあります。ただしどんな事情が該当するかは、地域やケアプランの内容によって判断が分かれます。「うちは使えるのかな?」と思ったら、担当のケアマネジャーに具体的な状況を伝えて確認してみてください。
介護保険のヘルパーに「うちは家族がいるから使えない」と言われました。自費なら頼めますか?
はい、自費(保険外)のヘルパーや家事代行サービスであれば、同居のご家族がいても利用できます。自費サービスには、介護保険のような同居の条件がありません。費用は全額自己負担になりますが、必要な家事に絞って単発で依頼できるサービスもありますので、使い勝手を比べながら検討してみてください。
民間の家事代行サービスは、高くないですか?
サービスによって幅がありますが、単発(1回だけ)の利用なら数千円〜1万円程度が目安になることが多いです。定期利用の月額プランを設けているところもあります。「まとまった掃除だけ」「料理だけ」と使い方を絞れば、費用は抑えやすくなります。全部をお願いしようとせず、まずはいちばんしんどい家事をひとつだけ外に出してみる、という始め方がおすすめです。
家事を外注することを、親がいやがりそうで心配です。
「他人に家に入られたくない」という気持ちは、多くの方が持っています。最初から「全部お任せ」ではなく、「試しに1回だけお願いしてみる」という形で始めると受け入れやすくなることが多いです。ご本人が「この人なら」と感じられれば、少しずつ慣れていくこともあります。ご本人の気持ちを確かめながら、無理のない範囲で進めてみてください。
介護疲れで、家事どころか自分のことも後回しになっています。
まず、それ自体がSOSのサインです。ご家族が倒れてしまうと、介護そのものが続けられなくなります。ショートステイ(短期間、施設に泊まって過ごせるサービス)など、一時的に介護を預けられる選択肢もあります。一人で抱え込まず、まずは担当のケアマネジャーに今の状況を伝えてみてください。
わたしが使っているロボット掃除機
ご家庭の間取りや床の状態によって、合う・合わないがあります。ご利用は自己責任でお願いします。
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現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。
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