認定が出る前にサービスを始めていいの?暫定ケアプランの落とし穴
「退院が来週で。まだ家では無理だから、しばらくショートを使うことになって」
「認定はまだ出てないけど、暫定のプランで先に始められますよ、と言われて」
こんな状況、退院前後にはよくあります。「え、決まってないのに使えるの?」と戸惑う方も多いです。使えます。でも、始める前に一言だけ確認しておくことがあります。それを知っているかどうかで、あとから請求書を見たときの驚き方が全然違う。今日はそこだけ、丁寧にお伝えしたいと思います。
申請さえ出していれば、認定日は申請日にさかのぼる
介護保険のサービスを使うには、まず「要介護認定の申請」が必要です。申請を出してから、調査員が自宅に来て、主治医の意見書を集めて、審査をして…という流れを経て、「要介護◯」という認定が出ます。
この流れ、30日以内に結果を出すことになっていますが、実際にはもう少しかかるイメージです。
でも、申請を出していさえすれば、認定の効力は申請した日にさかのぼります。つまり、認定が出るのを待たずにサービスを始めても、後日「申請日から使った分」として介護保険が適用されます。
だから「退院が来週なのに、認定まで待てない」という状況でも、始めることができる。この仕組みを使うのが暫定ケアプランです。
「暫定」というのは、介護度がまだ確定していないから、見込みで組んだプランだということ。「たぶんこのくらいの介護度が出るだろう」という予測で、使うサービスを決めます。
ズレが生まれる仕組み
ここが、知っておいてほしいことの本丸です。
認定調査(調査員が来る日)は、申請してから2〜3週間あとになる場合もあります。市区町村によって違いますが、すぐ翌日には来ません。
つまり、こういうことが起きます。
入院中に倒れた、退院が迫っている、申請した。でも調査員が来るのは、それから2〜3週間あとになることもある。そのころには、本人はショートステイや自宅で少し落ち着いている。急性期の状態ではない。
調査は「今の状態」を見て行われます。担当していると、これをよく実感します。
いちばん起きやすいのは、ショートステイの長期利用
相談を受けるなかで、一番多いのがショートステイのケースです。退院直後すぐに家は難しくて、1か月以上ショートステイを利用する場合があります。
介護保険には「区分支給限度基準額」という上限があります。介護度によって、1か月に使える金額の枠が決まっていて、そこを超えた分は全額自己負担になります。
目安として、ショートステイをひと月続けた場合のイメージです。
要介護3で見込んでいた場合:だいたい、ひと月使っても限度額の範囲に収まることが多いです。
実際の認定が要介護1だったとき:使える枠は要介護3より少なく、およそ19〜21日程度で上限に達することがあります。残りの日数分は全額自己負担です。
ここで、もうひとつ知っておいてほしいことがあります。食費や部屋代の負担を軽くする「負担限度額認定」を受けている方でも、枠から出た日には、それが適用されません。サービス費も、食事代も、部屋代も、まるごと自己負担になります。担当していると、ここがいちばん驚かれるところです。1日あたりおよそ15,000円くらいになることもあり、月の後半の10日ほどでおよそ15〜16万円、ということが起きえます。
なお、この金額と日数はあくまで目安です。地域・年度・ショートステイの部屋タイプ(多床室か個室か)などで変わります。実際の見込み額は、担当のケアマネジャーや利用する事業所に確認してください。
軽い結果が出ても困らない範囲なら、心配いりません
ここまで読んで、不安になった方もいるかもしれません。でも、暫定でサービスを始めること自体が危ないわけではありません。心配になるのは、ショートステイのように毎日積み上がるサービスを、たくさん使う場合です。
たとえば、デイサービスを週1回、あとは手すりや歩行器を借りる。この程度なら、要支援1が出たとしても対応できる範囲です。だから暫定で先に始めても、あとから困ることはあまりありません。
分かれ目は「いちばん軽い結果が出ても、この量で収まるか」。担当していると、暫定のプランはそこを見て組んでいます。
始める前に、家族が聞いておく一言
多くのケアマネジャーは、暫定ケアプランを組む際にこのリスクを先に説明しています。「聞いた気がするけど、あまり頭に入ってなかった」という方もいますし、「そんな話、されなかった」という方もいます。
どちらにせよ、家族の側からこう聞いておくと確実です。
「もし見込みより軽い介護度が出たら、いくらくらい自己負担になりますか?」
これだけです。これを聞いておくと、ケアマネジャーも「では、要介護1が出た場合のシミュレーションをしてみますね」と一緒に準備できます。
逆に、思ったより重い介護度が出た場合は何も起きません。枠が余るだけで、追加の請求はありません。心配なのは「軽い側にズレたとき」だけです。
心配なときは、ケアマネジャーに立ち会ってもらう
暫定ケアプランのリスクを下げるために、もうひとつ方法があります。認定調査に、担当のケアマネジャーに立ち会ってもらうことです。
調査員は、その日の状態を見て記録します。本人が頑張って動いてしまうと「できる」と評価されてしまうことがあります。家族が立ち会って「普段はこういう場面で手伝っています」と伝えるのも大切です。
ただ、わたしは危ういと感じるときは、自分で調査に立ち会うようにしています。ケアマネジャーは認定調査そのものを担当することもあるので、何を聞かれて、何をどう答えるのかを知っています。だから、伝えるべきことを、伝わる形で伝えられる。適切な介護度が出るように、というのはそういうことです。
心配なときは、担当のケアマネジャーに「調査の日、立ち会ってもらえますか」と頼んでみてください。
立ち会い方のくわしいコツは、認定調査に立ち会うときの5つのポイントにまとめています。こちらも参考にしてみてください。
まとめ
・申請さえ出せば、認定前でもサービスを始めていい
・でも「暫定」だから、見込みと違う介護度が出ることがある
・軽く出た場合、はみ出した分は全額自己負担になる
・デイ週1回、手すりや歩行器くらいなら、軽く出ても心配いらない
・「軽く出たらいくらになる?」を先に聞いておけばいい
・心配なら、ケアマネジャーに調査へ立ち会ってもらう
待たずに始めて大丈夫です。ただ、始める前に担当のケアマネジャーに「軽く出たらどうなりますか」と聞いておくこと。それだけで、十数万円の驚きは避けられることがあります。
金額・日数の目安は地域や事業所によって変わりますので、実際の見込み額は担当ケアマネジャーや利用する事業所にご確認ください。最終的なご判断については、担当のケアマネジャーや専門家にご相談いただけると安心です。
よくある質問
暫定ケアプランって、ケアマネジャーに頼まないと作れないの?
はい、暫定ケアプランはケアマネジャーが作成します。まだ担当のケアマネジャーが決まっていない場合は、まず地域包括支援センターに相談してみてください。退院前であれば、病院のソーシャルワーカーさんが橋渡ししてくれることも多いです。
認定が出たあと、プランはどうなるの?
認定が確定したら、暫定プランをもとに正式なケアプランを作り直します。介護度が変わった場合は、使えるサービスの量や内容を改めて調整することになります。変更点については、ケアマネジャーから説明があるはずです。
要介護認定の申請は、誰がやるの?
ご本人か、ご家族が市区町村の窓口に申請します。担当のケアマネジャーが決まっていれば、代わりに申請を代行してもらうことも可能です。退院が迫っているときは、病院のソーシャルワーカーさんやケアマネジャーに「申請を急ぎでお願いできますか」と伝えてみてください。
調査のときに立ち会えない場合はどうすればいい?
まず、担当のケアマネジャーに「立ち会ってもらえますか」と頼んでみてください。そのうえで、事前に「普段の様子」を書いたメモを調査員に渡す方法もあります。「トイレは一人では難しい」「夜中に何度も起きる」など、日常の困りごとを具体的に書いておくと、調査員も参考にしやすくなります。「いつもできているかどうか」より「できないときの状況」を伝えることがポイントです。
現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。
この人について →