認知症なのに要介護1?低く出る理由と、この枠でできること
「一日中、目が離せないのに要介護1。この大変さは、伝わらなかったのかな」
「この枠で、頼めることなんてあるんだろうか」
認定の通知を開いて、力が抜けてしまった。そんなご家族に、わたしはよく会います。
介護度は、介護の手間で決まります。手間がかかるほど重く出る仕組みです。
それなのに認知症だと、家族がとくに消耗している部分が、介護度に反映しづらい一面もあります。今日は、その理由と、要介護1の枠でできることを整理していきます。
認知症の一番大変な時期は、要介護1〜2
長く担当していて感じるのは、認知症で手のかかる時期は、要介護1から2のあたりに来ることが多いということです。
体はまだ元気に動きます。自分で立てるし、歩けるし、外にも出ていけます。 けれど、判断のほうは少しずつむずかしくなっている。
だから家族は、一日中気を張ることになります。
- 火を使っていないか、何度も見にいく
- 出ていかないように、玄関の音を気にしている
- 同じ話に、何度も答える
- 服は着られても、季節に合っていないので着替えてもらう
やがて体が動かなくなってくると、介護度は上がっていきます。 けれどそのころには、目を離せない不安のほうは落ち着いていることも多いのです。
数字がいちばん軽い時期に、家族がいちばん大変。 ここが、認知症の介護のつらいところだと思っています。
なぜ手がかかるのに、介護度は低く出るのか
介護度は、介護の手間で決まります。手間がかかるほど重くなります。
ただし、その測り方は、体を助ける介助が中心です。
着替えを手伝う、お風呂で体を支える、トイレに間に合うように連れていく。 こうした介助は、そのまま手間として積み上がっていきます。
認知症の様子も、調査ではきちんと聞かれます。物忘れや行動についての項目がありますし、主治医意見書にも認知症の程度を書く欄があります。
それでも、体が動く方は、体の介助が少ない分だけ軽く出やすい。 見ていなければいけない時間、何度も同じ話に答える時間は、そこまで積み上がらないのです。
使えるのは、月に16〜17万くらい
要介護1で1か月に使えるサービスの上限は、金額にするとだいたい16万から17万円分です。お住まいの地域や使うサービスによって、少し前後します。 自己負担はそのうちの1割から3割なので、1割の方なら月に1万7千円くらいまで、ということになります。
この枠の中でおさまっているうちは、いつもの自己負担で使えます。 問題は、枠を超えたときです。
超えた分は、全額が自己負担になります。1割にも2割にもなりません。
多いのが、ショートステイを長く使ったときです。 退院した直後で、すぐには家で見られない。そういうとき、1か月以上お泊まりを続けることがあります。
要介護3くらいなら枠の中におさまることが多いのですが、要介護1では、まず超えます。 超えた日数の分だけ、1日あたり15,000円ほどが自費で乗ってきます。10日超えれば15万円ほどです。
知らないまま日数が延びて、あとから請求を見て驚く方がいます。 長く泊まることになりそうなときは、何日目から自費になるのかを、担当のケアマネジャーに先に確認してください。
認定調査は、ケアマネに立ち会ってもらう
介護度が実態に合っていないと感じる方に、わたしがおすすめしているのは、認定調査に担当のケアマネジャーに立ち会ってもらうことです。
家族が立ち会うのも、もちろん大事です。ただ、家族には何を聞かれるかが分かりません。どこをどう見られて介護度が決まるのかを知っている家族は、まずいないと思います。
わたし自身、認定調査を引き受けることがあります。だから、何を聞かれて、どう答えるとどう記録されるのかを知っています。その場で、足りないところを補うことができます。
心配な方のときは、わたしは自分で立ち会うようにしています。適切な介護度が出るようにするためです。
担当のケアマネジャーがいるなら、認定調査の日が決まった時点で「立ち会ってほしい」と伝えてください。
立ち会いのときの段取りは、認定調査に立ち会うときの5つのポイントにもまとめています。
家族が伝えること
ケアマネジャーが入っても、普段の暮らしを知っているのは家族です。 ここは、家族にしか言えません。
伝えるときのこつが、3つあります。
1つめ。できない日のことを伝える。
認知症の方には、日によって波があります。 昨日は自分で着替えられたのに、今日はぼんやりして立ち上がれない。よくあることです。
このとき、調査は多いほうの状況で記録されます。 だから、当日の様子だけでなく、できない日のことも伝える必要があります。 「週に4日くらいは、声をかけないと着替えられません」というように、頻度をつけて言うと伝わりやすいです。
2つめ。本人は、できるように振る舞います。
調査の日、多くの方は人前でしっかりしようとされます。 できないことも、できると言う。これは取りつくろっているというより、人として自然な反応だと思います。
だから、そこで家族が黙ってしまうと、その日の姿だけが残ります。
3つめ。本人のいないところで伝える。
目の前で「できていません」と言われるのは、誰でもつらいものです。 別の部屋で話す、事前にメモを渡す、玄関先で見送るときに伝える。やり方はいくつもあります。
普段ご家族が抱えている大変さを、遠慮せずに正直に伝えてください。 それが、実態に合った介護度につながります。
この枠で、まず何を入れるか
認知症の方のプランを組むとき、わたしが最初に考えるのは、本人がいない時間を作れるサービスです。
現実的なのは、デイサービスです。 本人が出かけている数時間、家族は自分のことができます。 買い物に行く、病院に行く、何もせずに横になる。この時間があるかないかで、介護を続けられるかどうかが変わってきます。
本人のためのサービスであると同時に、家族が息をつくための時間でもあります。
これは、わたし自身の家族でも同じでした。 父がいない間に、母が自分のことをできるようになりました。 リフレッシュできる、と母は喜んでいます。
要介護1で使えるものは、ほかにもあります。
- 認知症対応型通所介護 … 認知症の方のための、少人数のデイサービスです。人数の多い場所が苦手な方に向くことがあります
- ショートステイ … 数日から泊まれます。ただし長くなると、先ほどの自費の話が出てきます
- 訪問介護 … 掃除や調理などの生活援助、入浴や排せつの身体介護をお願いできます
「まだ早いかな」と思ううちに始めるほうがいいです。認知症が進んでからだと、新しい場所や知らない顔に慣れること自体が、本人にとってむずかしくなっていきます。
まとめ
介護度は体を助ける介助が中心に見られるから、そこが軽く出ちゃう。使えるのは月に16〜17万くらいで、超えた分は全額自分で払う。
だから認定調査はケアマネに立ち会ってもらって、家族は、できない日を頻度をつけて、本人のいないところで伝える。
そのうえで、まずはデイみたいに、本人がいない時間を作れるサービスから。
あってる?
数字が思っていたより軽く出ると、自分たちの苦労が認められなかったように感じます。 その気持ちは、とても自然なものだと思います。
けれど、伝え方でも、使い方でも、まだできることは残っています。 一人で判断せずに、担当のケアマネジャーを巻き込んでください。
ここまでの話を、1枚にまとめました。印刷して手元に置いたり、ご家族で見ながら話すときに使ってください。
この記事で触れた内容は、制度の概要です。市町村によって運用が異なることがあります。最終的なご判断は、担当のケアマネジャーや専門家にご相談ください。
よくある質問
認知症対応型通所介護は、普通のデイサービスと何が違いますか?
認知症の方だけが通うデイサービスです。少人数なので、人の多い場所では落ち着かない方や、大きなデイでは疲れてしまう方に向くことがあります。地域密着型といって、原則その市町村にお住まいの方が対象です。費用は事業所によって違うので、担当のケアマネジャーに確認してみてください。
ケアマネがまだいません。認定調査は誰に立ち会ってもらえばいいですか?
お住まいの地域の地域包括支援センターに連絡してみてください。申請の相談にのってもらえますし、認定調査についても相談できます。担当のケアマネジャーが決まっていない段階でも、頼っていい窓口です。
結果に納得できないときは、どうすればいいですか?
区分変更という申請ができます。有効期間の途中でも出せます。ただ、いきなり出す前に、今回の認定の内容を開示してもらって確認するほうが近道です。手続きは親の介護度って変えられるの?要介護認定の「更新」と「区分変更」にまとめています。
現役のケアマネジャー(主任介護支援専門員)。在宅介護の家族に「ちょっと隣にいる人」がいたらいいなと思ってこのブログを始めました。猫のこまりとお届け中。
この人について →